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【インタビュー】スーパーシティ構想 世界に先駆け「まるごと未来都市」/片山さつき元地方創生・規制改革担当相

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 昨年9月に施行された「改正国家戦略特区法(スーパーシティ法)」の発案者である片山さつき元地方創生・規制改革担当相(参議院議員)にスーパーシティ構想の狙いと改正のポイントなどを聞いた。

(聞き手 調査研究本部主任研究員 高橋 徹) 

――スーパーシティとはどんな都市なのか。

 スーパーシティは、それぞれの地域が抱える課題を解決するため、最先端の技術を暮らしや生活に実装することを目的にした都市のことを指す。スーパーシティは、<1>移動<2>物流<3>金融<4>行政手続き<5>医療・介護<6>教育<7>エネルギー・水<8>環境・ゴミ<9>防犯<10>防災―などの領域の中から少なくても五つ以上をカバーすることが求められており、省エネルギーなど個別の分野に特化したスマートシティに比べて、対象も概念もより幅広い。

――法改正のポイントは何か。

 スーパーシティの実現には大胆な規制改革が必要だが、どういう規制緩和をすべきかを国が地方に押し付ける時代ではない。そこで、スーパーシティを目指す地方自治体に「こういう街を作って便利にしたい」という絵を描いて応募してもらう方式にした。その中から政府が選定し、必要な特例措置を各省庁一体で検討する。内閣府がサポート役として加わり、首相がトップダウンで各省庁に指示するので、自動運転や遠隔診療など複数の分野にまたがる規制緩和の手続きが迅速に進むことが期待される。

 また、住民の合意を前提に、規制緩和を含めたまちづくり全体の事業計画を一つの法律でカバーする点や、様々なデータやサービスを自治体間で共有できるよう、データ連携基盤の整備とAPI(システム間の接続仕様)の公開を義務づけたことも特徴だ。

――スーパーシティ法構想を発案したきっかけは。

 日本は少子高齢化や人口減少に直面しており、これまで当たり前だった公的なサービスを今後、維持できるかどうか危惧していた。そこで、日本が強みを持つ情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)、ビッグデータなどを活用し、高齢化に対応した自動運転や遠隔診療など様々な社会問題を克服する「まるごと未来都市」の構想をあたためてきた。

スーパーシティに応募した北九州市が構想する未来都市のイメージ図(北九州市提供)
スーパーシティに応募した北九州市が構想する未来都市のイメージ図(北九州市提供)

 第4次安倍改造内閣で2018年10月に閣僚として地方創生と規制改革、国家戦略特区を担当することになり、構想を実装段階に移したいと考えた。

――これまで規制改革が進まなかった要因は。

 規制改革が全く進んでいなかったわけではないが、国民にとって(成果が)見えにくかったと思う。例えば、規制緩和で通常より高いビルが建つのは分かりやすいが、薬局が近くにないから遠隔服薬指導を認めるといった緩和だと、恩恵を受けられる対象者が限られ、成果が見えにくかった。

 日本の場合、規制の7割は(各省庁が定める)政令、省令によるものだ。各省庁の協力もこれまで十分とは言えなかった。

 生活全般にわたって実装していくスーパーシティのような「まるごと未来都市」は、世界中のどこもまだ実現していない。日本には必要な技術がそろっており、実践する場があれば、世界に先行して実現できる可能性がある。データを駆使したスーパーシティは、日本が抱える地方創生や人口減少など様々な社会課題を解決する切り札になると期待している。

――新型コロナウイルスの感染予防対策でもスーパーシティは有効活用できるのか。

 新型コロナ感染症から住民を守るため、新しい生活様式を確立しつつ、様々な先端技術を使って、誰にも感染させない、誰からも感染させない「コロナテック・スーパーシティ」作りを急ぐことが必要だ。

 例えば、クラスター対策についても陽性者と接触した人のスマホの過去の位置情報を分析すれば、保健所の負担が大幅に減る。また、年間数千万人が受診する特定健診の血液検査にコロナの抗体検査を入れれば、それがビッグデータとなって感染情報を把握することができる。また、血中酸素濃度を測定するパルスオキシメーターを住民に付けてもらい、その電子データを重点病院などで管理し、(呼吸不全の状態となる)90%を切ったらすぐ自動運転車が来て入院できるようにする。こういう体制をつくれば、コロナによる不慮の死は防げるだろう。

――トヨタ自動車が静岡県裾野市で計画している「ウーブン・シティ」構想をどうみるか。

 多様なモビリティー(移動体)を一つのサービスとして統合し、利用者が自由に選択できるようにする「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」が主流になっても、 トヨタが自動車界で築いた地位を維持する狙いがあるようだ。同社の工場の敷地内で進める計画なので、政府の規制緩和は関係ない。

 まず、どういったモビリティーが新しい街に合うのか実証研究を進めてビジネスモデルとして商品化し、これから出てくるスマートシティに売り込んでいくのだと思う。とにかく実装してどんどん前に進めてほしい。

プロフィル
片山さつき氏( かたやま・さつき
1959年埼玉県生まれ。82年東大法卒後、大蔵省(現・財務省)入省。女性初の主計官などを経て、2005年9月に衆院選初当選。10年7月に参議院にくら替えし、第4次安倍改造内閣で内閣府特命担当相(地方創生、規制改革担当)として初入閣。著書に『社会課題を克服する未来のまちづくり スーパーシティ』(事業構想大学院大学出版部)ほか。

※この論考は調査研究本部が発行する「読売クオータリー」掲載されたものです。読売クオータリーにはほかにも関連記事や注目の論考を多数収載しています。最新号の内容やこれまでに掲載された記事・論考の一覧は こちら にまとめています。
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2021571 0 経済・雇用 2021/04/30 10:00:00 2021/05/07 10:56:28 2021/05/07 10:56:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210426-OYT8I50094-T.jpg?type=thumbnail

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