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ゼロカーボン・エネルギーの星:再生可能エネルギー<1>再エネはどこにでもある?

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POINT
■脱炭素社会の実現に向けて太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギー(再エネ)が注目されているが、再エネだけでは電力需要に応じた発電を行うことはできない。

■発電パターンの異なる多様な再エネの組み合わせや広域的な利用によって、出力の変動による供給への影響を平滑化することが大切だ。

■再エネは世の中に広く賦存(潜在的に存在)しているが、存在場所には偏りがあり、偏在の克服が課題となる。

■日本では電力を多く消費する地域と、再エネが高く賦存する地域が一致していない。再エネの導入拡大は電力の需要規模とバランスをとりつつ進めることが必要で、それには広域的な送電網の拡充が不可欠だ。

 再生可能エネルギー(再エネ)は脱炭素社会の構築に向けて重要な技術で、導入拡大が期待されているが、一方で課題も多い。今回からは太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの今後の展望や課題について紹介していく。1回目は再エネの地域偏在性について取り上げる。

日本エネルギー経済研究所 研究主幹 柴田善朗  

日本の再エネの現状

経済産業省資源エネルギー庁資料から日本エネルギー経済研究所推計
経済産業省資源エネルギー庁資料から日本エネルギー経済研究所推計

 2020年9月末の時点で、日本の再エネ発電電力量は160テラ・ワット・アワー(TWh)に達している。10年前の66TWhの2倍以上に増え、総発電電力量に占める割合も15%(大規模水力を含めると18%)を占めるまでになった。発電設備容量で見ると、太陽光発電が59ギガ・ワット(GW、1ギガ・ワットは10億ワット)で、風力、バイオマス、地熱発電などより突出しているのが特徴だ。

 普及を後押ししたのは、2012年に始まった固定価格による発電電力の買い取り制度(FIT=Feed-in Tariff)だった。一方で、FITには高額な賦課金による国民負担の増大(図1)を招く問題があったため、この抑制に向け、17年度からは入札制度が導入された。

 さらに22年度からは、電力卸売市場での販売価格をベースに特別割増を上乗せして売電価格を決める「フィップ(FIP=Feed-in Premium)」制度が導入される見通しだ。再エネ発電事業者は市場価格の変動を前提にした経営を求められ、これまで以上に自立を促されることになる。

出所:再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第25回)資料
出所:再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第25回)資料

 化石燃料を燃やさない再エネ発電は、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量が極めて小さく(図2)、2050年のカーボンニュートラルを実現するには、再エネのさらなる積み増しが不可欠だ。国民の負担を最小限に抑えつつ、再エネの特性を生かした導入拡大を図るには、どんな手法が考えられるのか。

出所:「原子力・エネルギー図面集」、エネ百科
出所:「原子力・エネルギー図面集」、エネ百科

「安定的な発電ができない」意味

 さらなる再エネの積み増しを考える際には、まず、個々の再エネの特徴と潜在的な可能性(ポテンシャル)を把握する必要がある。特に再エネの発電出力の不安定性については、再確認しておかなければならない。太陽光発電や風力発電など「自然変動再エネ」は、「変動性(Variable)」や「間歇(かんけつ)性(Intermittent)」という言葉で形容される不安定性がつきものだ。

 ある地域の1週間の電力需要、太陽光発電と風力発電の発電出力の時間変動パターンを図3に示した。重要なのは各々(おのおの)の絶対値ではなく、電力の需要と太陽光発電や風力発電の供給のカーブの動きの相対比較だ。電力需要は深夜に落ち込み、朝から昼にかけて増加し、その後、夜にかけて減少するというほぼ規則的な動きを毎日繰り返し、毎時の振れ幅が小さいことがわかる。産業、業務、家庭部門ごとの電力需要パターンは多種多様で変動の振れ幅も大きいが、地域全体で見ると、各需要家のパターンが合成され、平均化されることで、カーブはなだらかな動きになっている。

各種資料から日本エネルギー経済研究所推計。1週間の毎時値。電力需要、太陽光発電、風力発電各々の毎時値の最大値を1として規格化し表示している
各種資料から日本エネルギー経済研究所推計。1週間の毎時値。電力需要、太陽光発電、風力発電各々の毎時値の最大値を1として規格化し表示している

 一方で、太陽光発電は、当然ながら昼間のみの発電になり、天候にも左右されるため、ピーク発電量も日によって異なる。風力発電の発電出力は上下に大きく振れていることがわかる。毎時変動量(1時間前との差)を示した図4を見ると、明らかに太陽光発電や風力発電の振れ幅は電力需要の振れ幅より大きい。

各種資料から日本エネルギー経済研究所推計
各種資料から日本エネルギー経済研究所推計

 発電設備は、電力需要のパターンに応じた発電が求められるが、自然変動再エネにはそれができない。つまり、自然変動再エネだけでは電力需要に対応することは不可能なのだ。電力需要と再エネ発電の差を埋め合わせるには、発電出力を柔軟に変えることができる火力発電、さらには揚水発電や蓄電池などのエネルギー貯蔵技術が必要になる。

ただし、自然変動再エネをカバーするエリアをより広域にすると、晴れている場所と曇っている場所、風が吹いている場所と吹いていない場所といった再エネの発電出力パターンをある程度合成、平均化できる。需要家ごとの電力需要が合成・平均化されるのと同様に、地域全体の再エネの出力変動もなだらかにできるわけだ。これを「平滑化効果」という。この効果を得る方策としては、単機でなく複数台で構成する風力発電「ウインドファーム」の開発や、多くの地域の風力発電を広い地域で受け入れるための送電網の拡充などが重要になる。

 種類の異なる自然変動再エネを組み合わせて平滑化する考え方もある。太陽光発電と風力発電の導入規模が釣り合っていれば、互いの出力変動を埋め合わせることで、自然変動再エネ全体では平滑化できるかもしれない。ただ、日本では風力発電の出力は、太陽光発電と同じく日中にピークになる傾向にあり、太陽光発電と風力発電の合成による平滑化効果は限定的との見方もある。前述したように日本では太陽光発電の導入規模が他の再エネに比べて大きいため、平滑化効果を得るためには、今後は太陽光発電と風力発電のバランスの取れた導入も必要となるだろう。

再エネだけで電力は供給はできない

 電力需要の大きさと比べて自然変動再エネの導入量がかなり小さい規模で、自然変動再エネのみでは賄いきれない電力需要に対応するために多くの火力発電が稼働している場合は、火力発電が自然変動再エネの出力変動に迅速に対応できる。しかし、自然変動再エネの導入規模が拡大すると、稼働している火力発電が少なくなり、しかも自然変動再エネの出力変動の幅が大きくなる。出力変動に対応した安定供給ができなくなれば、大規模停電を引き起こしかねない。

 また、自然変動再エネの導入規模が拡大すると、時間帯によっては供給される電力量が電力需要を上回り、余剰電力が発生する。余剰電力の発生がまれで、その電力量も小さければ、出力を抑制して捨ててしまう「捨電」が経済的だが、頻繁に余剰電力が発生し、電力量も大きい場合は、捨電すると売電による再エネ設備の投資回収ができなくなり、再エネの導入が進まなくなる。この場合は余剰電力をエネルギー貯蔵技術に充電し、他の時間帯に放電する対策が不可欠となる。太陽光発電の導入量が大きい九州電力では、すでに揚水発電による太陽光発電の余剰電力の充・放電が行われている。

「ドルドラムズ」への備えも必要

 バイオマス、地熱、水力発電は安定的な発電ができるため、ベースロード電源としての役割を担うことも不可能ではない。乾季に水力発電の発電電力量が大幅に減少する東南アジアなどでは火力発電によるバックアップ体制をとっているが、こうした季節的な変動はある程度予測でき、火力発電を待機させるなどの対応を事前にとることができる。

 しかし、太陽光、風力発電に必要な日照と風について、長期間の日照不足や無風状況を予測するのは非常に難しい。気象予報による短期の発電予測技術の精度は高まっているが、長期の予測技術はまだ確立されていない。実際、長期間にわたった昨冬の寒波については、2020年夏にラニーニャ現象が確認されたことで、ある程度は予測されていたものの、具体的な時期を事前に予見することはできなかった。

 このように、気象条件によって長期間にわたって自然変動再エネが発電できなくなる状況を、赤道付近海上の「熱帯無風帯」を意味する「ドルドラムズ(Doldrums)」、無風に日射不足も重なる場合は「ダークドルドラムズ(Dark doldrums)」と呼ぶ。いつ、どこで、どの程度発生するか、予測が困難なダークドルドラムズ時の電力安定供給確保のためには、燃料を貯蔵できる火力発電などが欠かせないし、ある程度のエネルギー貯蔵技術も必要となる。

国内外のポテンシャル分布を見ると…

 では、再エネのポテンシャルの地域分布はどうなっているのだろうか。図5が世界の風力発電ポテンシャル、図6が太陽光発電ポテンシャルの分布だ。風力発電は、日本の沿岸部である程度のポテンシャルが存在するが、欧州に比べると小さい。太陽光発電のポテンシャルも、南米、オーストラリア、中東、アフリカなどと比べると、日本は小さいことがわかる。世界的に見て日本の風力発電と太陽光発電のポテンシャルは、決して恵まれているとはいえない。

出所:Global Wind Atlas
出所:Global Wind Atlas

出所:Global Solar Atlas
出所:Global Solar Atlas

 次に、国内の偏在を見てみよう。これまで説明した通り、自然変動再エネを大量に導入するには、その出力変動を地域全体で最大限に抑えること(平滑化)、そして地域の電力需要を踏まえた適切な導入規模とすることが重要になる。日本では、電力需要規模の大きい関東、関西地方に大量の太陽光発電と風力発電を導入するのが理想的だが、現実はそう簡単ではない。

出所:環境省「令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務 報告書」
出所:環境省「令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務 報告書」

 上の表に示したのは、環境省の調査に基づく日本全体の再エネポテンシャルだ。導入ポテンシャルは、現在の技術水準で利用可能なエネルギーのうち、種々の制約要因(法規制、土地利用など)を除外して推計している。導入可能量を意味する「経済性を考慮した導入ポテンシャル(以下、経済性ポテンシャルと表記する)」は、送電線敷設や取り付け道路の整備などのコストや売電による収益データを加味し、経済的観点から導入可能性が低いエリアを除いて推計している。経済性ポテンシャルの推計結果に幅があるのは、売電価格が低位(=FIT価格を下回る)のケースと高位(=FIT価格程度)のケースの2通りについて分析・推計しているためだ。

 経済性ポテンシャルの発電量は、現在の総発電量を上回ってはいるが、問題はポテンシャルの地域分布にある。図7に示すように、経済性ポテンシャルは、北海道、東北、九州地域等では電力需要量を大幅に上回っているが、逆に関東や関西では同等、もしくは下回っている。

出所:環境省「令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務 報告書」、経済産業省電力調査統計等から推計
出所:環境省「令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務 報告書」、経済産業省電力調査統計等から推計

 前述したように、地域を超えて再エネ発電の電力を送るには、送電線の増強・拡充が必要となる。電力各社などでつくる電力広域的運営推進機関(OCCTO)では、「広域連系系統のマスタープラン及び系統利用ルールの在り方等に関する検討委員会」を設けて、費用便益分析に基づいた望ましい系統増強の在り方を協議している。経済産業省の審議会(「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」や「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」)もこの動きと連携し、検討を進めている。

 日本の再エネポテンシャルは全国的に見ればそれなりに大きいものの、地域別の電力需要の規模を踏まえると、地域偏在の障壁を克服する必要がある。そのためには、現在の電力系統システムを大幅に変更しなければならない。

 一方で、個々の再エネについても技術的な課題がある。今後の展望も含めて、次回以降、取り上げていく。

プロフィル
柴田 善朗氏( しばた よしあき
 1969年生まれ。株式会社東芝、株式会社住環境計画研究所を経て2010年より日本エネルギー経済研究所勤務。

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2114970 0 経済・雇用 2021/06/10 13:18:00 2021/06/10 17:27:18 2021/06/10 17:27:18 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210608-OYT8I50014-T.jpg?type=thumbnail

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