安全保障上不可欠なゼロカーボン・エネルギー:原子力<4>次世代原子力技術とは何か

POINT
■これまでに開発・利用されてきた軽水炉とは異なる設計の原子炉として、第四世代炉やSMRといった「新型炉」が近年、注目を集めている。

■米、英、加や中、露など、世界中で多くの国々が新型炉の開発を進めており、実用化に向けた動きや支援体制が整えられている。

■新型炉に対する期待が近年高まっていることは確かだが、これまで数十年にわたって実用化に至らなかったことも事実である。その原因を 真摯(しんし) に分析・反省したうえで、導入への動きを促進していく必要がある。

日本エネルギー経済研究所 主任研究員 木村謙仁 

新型炉とは何か

〈1〉~〈6〉図はGIFウェブサイト掲載画像から(https://www.gen-4.org/gif/jcms/c_59461/generation-iv-systems)

 近年の原子力産業では厳しい状況を打開するため、さまざまな取り組みが始まっている。これまで使用されてきた軽水炉の建設や運転をより安全かつ効率的に行うだけでなく、高性能の新型炉を開発する動きが世界中で見られるようになってきた。

 原子炉はその開発段階に応じていくつかの世代に分類される。現在、世界で最も多く使用されている軽水炉は第三世代に分類され、一部の国ではその改良型として「第三世代+(プラス)」の軽水炉が建設されている。これらの炉型はどれも普通の水(軽水)を冷却材として使用しているが、その先の技術として、軽水以外のものを使用する「第四世代炉」の開発が進められている。第四世代炉国際フォーラム(GIF)は、第四世代炉として以下の六つの炉型をあげている。

<1>ナトリウム冷却高速炉(SFR)

 冷却剤に液体ナトリウムを用いることで、低圧で熱効率の高い運転を可能にした。使用済み燃料から取り出したプルトニウムをウランと混合したMOX燃料を使うため、ウラン資源の有効活用と廃棄物の最少化(減容化)を図ることができる。

<2>ガス冷却高速炉(GFR)

 液体ナトリウムの代わりにヘリウムガスを冷却材として用いる。化学反応が起きやすいナトリウムより安全で、SFRの特徴に加えて、熱供給や水素製造にも活用できる。

<3>鉛冷却高速炉(LFR)

 ナトリウムの代わりに液体化した鉛を冷却材とした、冷却性能に優れた原子炉である。

<4>超臨界圧水冷却炉(SCWR)

 熱力学的な臨界点(220気圧、374度)を超えた水を使用する。これだけの高温・高圧下では液体と気体の区別がなくなり、水は沸騰しない。そのため、液体の水と水蒸気を分離する装置が不要となり、設備を小型化できる。

<5>超高温ガス炉(VHTR)

 GFRと同じくヘリウムガスを冷却剤に使うが、原子炉の出口では温度が900度以上となるため、高温の熱供給や高効率の水素製造が可能となっている。温度帯が低いものは高温ガス炉(HTGR)と呼ばれる。

<6>溶融塩炉(MSR)

 溶融した状態のフッ化物塩を燃料兼冷却材として循環させる原子炉である。炉心の燃料の量が少ないため、臨界事故は原理的に発生しないとされている。

 なお、これら第四世代炉とは別に、核融合によって生じるエネルギーを利用する原子炉についても、フランスの国際熱核融合実験炉(ITER)をはじめ、各国の学術機関で研究が進められている。実現までに解決すべき課題が多いことから、第四世代炉よりも先の技術と位置付けられているが、核融合炉もまた、エネルギー量や安全性の観点から大いに期待されている新技術である。

 これまで説明した六つの炉型とは別に、近年では小型モジュール炉(SMR)と呼ばれる原子炉も注目されている。SMRはその名の通り、小型の原子炉で、原子炉の中心となる小型のリアクターモジュールを工場で製造し、完成した状態で発電所建設地まで運び、現地で据え付ける。1基あたりの発電能力が5万~7万キロ・ワット(KW)程度という小型のモジュールを大量生産することで、船やトラックなどでの輸送が可能になる。

Reyes,Jose N.and Hopkins,John,“A Promising Innovation in Nuclear Energy,”第7回エネルギー情勢懇談会,2018.

安全性は向上しているのか

 近年の大型軽水炉では建設が計画から大幅に遅れる例が相次いでいるが、シンプルな工程のモジュール工法なら遅れを防ぎ、建設コストも抑えることができると期待されている。また、規模が小さいゆえに、大型炉の建設を検討していない新興国でも採用しやすいという利点もある。

 安全性に関しても、SMRは既存の大型軽水炉より高くなると見込まれている。例えば、上の図で例示した米国ニュースケール・パワー社製SMRの場合、水の自然循環を利用して原子炉を冷却するため、非常事態用の電源や追加の冷却水を必要としない。また、リアクターモジュールを地中に埋没させる設計のため、地震や航空機の衝突にも強いとされる。加えて、一般的にSMRは大型炉に比べて出力規模が小さく、施設内で取り扱う放射性物質の量も少なくなる。そのため、万が一、炉内からの漏出が発生した場合でも、その影響は比較的小さなものにとどまると考えられる。

 上の図では例としてニュースケール社のSMRを取り上げたが、世界では現在、多数の事業者がSMRの開発を進めており、様々な設計が検討されている。従来と同じく軽水炉を採用するSMRもあれば、第四世代炉の技術を採用するものもある。本稿では、第四世代炉やSMRを総称して「新型炉」と呼ぶ。

 これらの新型炉は、一般的に従来の軽水炉より高い経済性、安全性を持つとされてきた。また、負荷に応じて柔軟に出力を調整できるので、太陽光、風力といった変動型の再生可能エネルギーが大量に導入された際には、電力系統の安定化にも役立つ。前述した通り、設計によっては熱や水素の供給にも使えるため、電気以外のエネルギーの提供も期待されている。

各国の新型炉開発はどこまで進んだか

 世界各国の新型炉開発はどこまで進んでいるのか、主要国の状況を紹介する。

アメリカ

 世界最大の原子力発電導入国であるアメリカは、新型炉の開発にも力を入れている。エネルギー省(DOE)は2015年から「原子力技術革新加速ゲートウェイ(GAIN)」プログラムを実施し、新型炉導入を支援している。研究開発プロジェクトに資金を投入するだけでなく、国立研究機関の充実した設備や情報、実証炉建設のための敷地を提供するほか、開発を手掛けるベンダーと規制機関との議論の場を設けるなど、規制面での対応も支援している。

日立製作所と米GEが開発中のSMR(小型モジュール炉)のイメージ図。ナトリウム型とは異なる(日立製作所提供)

 DOEは20年5月から、新たに「新型炉実証プログラム(ARDP)」を開始し、完全な機能を有する実証炉を7年以内に建設するなどの目標を掲げた。20年10月には日立・GE(ゼネラル・エレクトリック)と協力してナトリウム冷却高速炉を開発するテラパワー社と、小型の高温ガス炉「Xe―100」を開発するエックス・エナジー社をARDPプログラムの支援対象に選び、DOEがそれぞれ8000万ドル(約80億円)を拠出することが発表された(注1)。

 SMR導入までのイメージ図を示した新興企業のニュースケール社が進める軽水炉SMR開発計画も注目を集めている。アイダホ国立研究所が建設場所(サイト)を提供し、29年の運転開始を目指す。完成したSMRが発電する電力は、隣接するユタ州の公営共同電力事業体(UAMPS)に供給される。20年9月にはニュースケール社のSMR(5万KW)に対して原子力規制委員会(NRC)から標準設計承認(SDA)が発行され、計画の実現に大きな一歩を踏み出した(注2)。

イギリス

 第四世代炉などの技術を使用したSMRを先進型モジュール炉(AMR)と呼び、既存の原子炉と明確に区別している。ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)はAMR実証プロジェクトの実施企業を選定するため、2018年から2段階に分けてコンペティション(競争による審査)を始めた。20年7月には審査の第2段階(フェイズ2)に進む企業が発表され、選出されたプロジェクトにはBEISから合計最大4000万ポンド(約60億円)が出資されることも周知された。第2段階に選出されたのは、ウェスチングハウス社の鉛冷却高速炉、ユレンコ社を中心とするグループが開発する高温ガス炉のU-バッテリー、そしてトカマク・エナジー社によるモジュール式核融合炉だった(注3)。

 AMRコンペティションとは別に、ロールス・ロイス社を中心としたコンソーシアムも軽水炉型のSMRを開発している。政府傘下の研究機関である英国研究・イノベーション機構(UKRI)から1800万ポンド(約27億円)の出資を受けている(注4)。

 21年5月にはSMRとAMRが、規制機関である原子力安全局(ONR)と環境庁(EA)が実施する包括的設計審査(GDA)の対象に加えられた。包括的設計審査に合格し、原子力安全局の設計認証確認(DAC)と環境庁の設計承認声明(SoDA)を得て、建設サイトでの現地審査に合格すれば、新型炉を用いた原子力発電所が建設できる。

カナダ

 国立原子力研究所(CNL)が敷地内でのSMR建設を計画しており、建設する事業者を募集している。これまでにU―バッテリー、スターコア・ニュークリア、グローバル・ファースト・パワー(GFP)の3社が高温ガス炉を用いたプロジェクトで、テレストリアル・エナジー社が溶融塩炉に高温熱供給や負荷追従性能を持たせた統合型溶融塩炉(IMSR)を採用するプロジェクトで応募している(注5)。

 カナダでは製品の製造元(ベンダー)だけでなく、州政府や電力会社などのユーザー側もSMRに高い関心を示し、オンタリオ州など四つの州がSMR導入に向けた協力体制を築いている。また、市民団体など多様なメンバーで構成される協議体も2018年にSMR導入に向けたロードマップをつくり、20年にはロードマップの内容をさらに発展させたアクションプランを発表した。アクションプランでは、協議体のメンバーがSMR導入に向けてそれぞれ取るべき行動を明確にしている。

 規制機関であるカナダ原子力安全委員会(CNSC)も、新型炉導入を目指す企業に対して魅力的な審査体制を提供している。その一つが「事前ベンダー設計審査」と呼ばれる仕組みだ。建設に取りかかる前からCNSCとベンダーの間で対話を行い、将来の審査で安全上の課題となりそうな点を事前にはっきりさせていく。ベンダー側は規制審査のポイントを予見でき、CNSC側もベンダーと対話することで、新技術の内容を早くから蓄積でき、審査が効率化できる。

ロシア

 ロシア政府は「閉じた核燃料サイクル」確立のために高速炉の開発を重視している。ナトリウムを冷却材とする実証炉としては、すでにベロヤルスク3、4号機が完成しており、3号機は1981年、4号機は2016年から営業運転を行っている。21年2月には規制当局が鉛冷却高速炉の実証炉「BREST―300」の建設を許可し、6月から建設が始まった(注6)。日本やフランスで高速炉の実証炉や原型炉が閉鎖されるなか、ロシアは高速炉開発を着々と進めているといえる。

洋上原子力発電所 アカデミック・ロモノソフ(Rosatom,Press Release,May 22,2020.)

 これらに加え、ロシアは洋上を航行する原子力発電所も開発している。18年4月に浮体式洋上原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ」(3万5000KW×2基)がサンクトペテルブルクを出航し、19年9月に導入先である極東のペベクに到着し、現地の電力系統に接続されて、20年5月に営業運転が始まっている(注7)。この洋上原子力発電所に用いられている原子炉は従来型の軽水炉で、本稿で説明している新型炉の定義からは外れている。だが、小型で航行可能な原子炉を、電気が必要な地点に運んでエネルギーを供給するという新たな利用の可能性が示されたといえる。

中国

 近年、原子力開発を急速に進めている中国は新型炉開発にも力を入れ、中国核工業集団(CNNC)が軽水炉を採用したSMRである「玲龍一号(ACP100)」の開発を手掛けてきた。2021年7月には南方の海南省で実証炉が着工され(注8)、玲龍一号は世界で初めて陸上に建設されるSMRの実機となった。玲龍一号は多目的SMRとして開発されており、将来は産業部門への熱供給や、海洋開発基地へのエネルギー供給なども行うことが見込まれている。

 中国は第四世代炉の開発でも大きな進展を見せている。20年12月からは福建省でナトリウム冷却高速炉の建設を進め、超高温ガス炉の開発にも重点を置く。12年12月に建設を始めた小型実証炉「HTR―PM」はすでに必要な試験を終えており、21年9月には初臨界に達した(注9)。この経験をもとに、より大型の「HTR―PM600」の建設も計画している。

商用化へ道筋をつける施策

 技術開発を進めるだけでは新型炉は導入できず、商用炉の建設には、十分な投資が集まらなければならない。しかし、アメリカの一部の州やイギリスのように電力市場の自由化が進んでいる国々では、安価な天然ガスや、限界発電費用(注10)がほぼゼロである再生可能エネルギーとの競争に (さら) され、原子力発電を取り巻く事業環境が悪化している。将来にわたって原子力を重要な技術と位置付け、新型炉の導入も検討するのであれば、こうした事業環境の整備も不可欠となろう。

 アメリカのイリノイ州やニューヨーク州などでは、経営危機に陥った原子力発電所が閉鎖されて温室効果ガスの排出削減が後退することを避けるため、ゼロエミッションクレジット(ZEC)と呼ばれる制度が実施されている。この制度では、原子力発電事業者に対して発電量に応じた証書(クレジット)を付与し、事業者は売電収入に加えてクレジットの販売でも収入を得られるようになる。イギリスでは、洋上風力発電事業などに用いられている差額決済方式(CfD)による固定価格買い取り制度が、現在建設中の軽水炉「ヒンクリーポイントC」にも適用されることになっている。CfDはあらかじめ決められた基準価格(ストライク・プライス)と市場における平均的な電力価格の差額を発電事業者に支払い、一定の収益を保証するものだ。

 ZECやCfDといった制度は、原子力が持つ低炭素という価値に対価を与える制度といえる。しかし、これらの制度は売電した電力量(kWh)に応じて補助金を得ることができる仕組みのため、発電設備が完成して売電を始めるまでのリスクには対応できない。CfDに関しては、ヒンクリーポイントCのプロジェクトに適用された基準価格は、「消費者負担とそれによって得られる価値の関係が十分に考慮されていない」(注11)との批判もある。

 こうした批判を受けて、イギリス政府は現在、「規制資産ベース(RAB)モデル」と呼ばれる新たな枠組みづくりを検討している。設備に対する投資コストに見合った適切な収益を規制機関が評価し、使用料を通じて消費者から回収することを認める仕組みだ。事業者は設備の建設段階から投資を回収でき、事業者は発電するまでは利益が得られないというCfDの問題点をある程度、解決できる。この問題点はCfDの基準価格を押し上げる要因の一つとされているため、RABモデルによって解決できれば、政策で保証すべき収益水準を低く設定でき、最終的な消費者負担を軽減することにもつながる。

 上記のような制度は従来型の軽水炉を対象としたものだが、原子力事業全体の環境改善を考えるうえで非常に重要な施策といえる。特に初期段階における新設の投資リスクが高くなる新型炉に関しては、こういった施策をベースとした仕組みを新たに検討し、リスクを軽減することが一層、重要となる。

技術と施策、官民一体で開発を進める

 各国の新型炉技術や開発動向、関連する施策を見てきた。アメリカ、イギリス、カナダでは、民間企業が新型炉開発の主体となっており、政府は企業が積極的に新技術の開発に乗り出せる環境を整える施策をとっている。その一環として、事業者の予見可能性を高めるなどの目的で、規制面からの対応も進んでいる。日本がエネルギー基本計画に従って新型炉の技術開発を進めるなら、こうした事業環境の整備や規制面での対応は大いに参考になるだろう。

 なお、本稿で取り上げた国以外にも、エストニア、ポーランド、ルーマニア、ヨルダンなど多くの国がSMRをはじめとした新型炉の導入を検討している。SMRについては、工場での大量生産がコストダウンの手段として重要視されているため、このように潜在的な顧客が多数現れていることの意義は非常に大きい。

 非常に注目を集めている新型炉だが、これら「新型炉」の概念は、遡れば20年以上前の資料(注12)でもすでに提唱されているということは銘記しておくべきだ。このことは、それだけの期間を費やしても、なお商用実機がいまだに実現していないことを意味する。その原因については詳しく分析する必要があるが、理論上の高性能を追求するあまり、それを実際に利用する顧客の目線が欠けていたこともひとつの理由ではないか。20年以上前の原子力には大規模ベースロード電源としての役割だけが期待され、小型であることや発電以外に用いることの価値が市場で注目されていたとは考えにくい。

 これに対して近年は、前述したユタ州やカナダ各州をはじめ、新型炉に対して関心を示す具体的なユーザー候補が現れてきている。新型炉開発をめぐっては、これまで進展しなかった理由を真摯に分析・反省したうえで、いま広がっているチャンスをつかむことができるのかどうか、注目される。


(注1)DOEウェブサイト https://www.energy.gov/ne/articles/us-department-energy-announces-160-million-first-awards-under-advanced-reactor
(注2)2020年9月14日付ニュースケール社プレスリリース
(注3)イギリス政府ウェブサイト https://www.gov.uk/government/publications/advanced-modular-reactor-amr-feasibility-and-development-project
(注4)UKRIウェブサイト https://www.ukri.org/our-work/our-main-funds/industrial-strategy-challenge-fund/clean-growth/low-cost-nuclear-challenge/
(注5)CNLウェブサイト https://www.cnl.ca/clean-energy/small-modular-reactors/siting-canadas-first-smr/
(注6)2021年6月8日付ロスアトム社プレスリリース
(注7)2020年5月22日付ロスアトム社プレスリリース
(注8)2021年7月14日付CNNCプレスリリース
(注9)2021年9月15日付CNNCプレスリリース
(注10)限界費用とは、生産量をごく少量増やした場合に生じる総費用の増加分のこと。
(注11)Comptroller and Auditor General,Hinkley Point C,Session 2017-2018,HC 40,National Audit Office,2017.
(注12)例えばIAEA,Design and Development Status of Small and Medium Reactor Systems 1995,IAEA-TECDOC-881,1996.


プロフィル
木村 謙仁氏( きむら・けんじ
 2010年東京大学教養学部卒、15年東京大学大学院工学系研究科博士。同年日本エネルギー経済研究所新エネルギーグループ、18年から原子力グループ。

調査研究
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