「競争と協調」で物流リソースの活用を

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POINT
■トラックと荷物をマッチングする「求貨求車ビジネス」は、デジタルで物流リソース(資源)を有効活用し、成長を続けている。

■複数の事業者による「共同配送」では、同じトラックで運ぶ「横の連携」に加え、今後はサプライチェーンで情報共有する「縦の連携」も重要になってくる。

■貨客混載など垣根を越えたリソース活用は今後も広がるだろう。トラックメーカーなどの協力にも期待がかかる。

■物流の効率化を加速するには「競争領域と協調領域」の整理も必要だ。ルールの整備や人材育成には協調が不可欠だ。

調査研究本部次長・主任研究員 井深太路 

 ドライバー不足や多頻度小口配送の増加で目詰まりを起こす物流を改善しようと、物流リソースを有効活用する取り組みが進化している。デジタルを駆使したプラットフォームが利便性を競い合い、情報連携で荷物の受け渡しをスムーズにする試みも進んでいる。荷物やトラックなどの状態をデータで可視化していくことが改革のポイントだが、さらなる進展には競争領域と協調領域の切り分けも必要になってくる。

「サーチファンド」は中小企業を救えるか

軽貨物のマッチングプラットフォーム

 「ドライバーさんや運送業者さんの価値を向上させたい」。物流ベンチャー「CBcloud」(シービークラウド、東京)の松本隆一・最高経営責任者(CEO)は2021年9月、ドライバーと荷主を結びつける同社のマッチング事業の狙いをそう語った。

 16年に始めた同社のマッチングプラットフォームである「PickGo(ピックゴー)」の中心的な機能は、スマホのアプリで軽貨物ドライバーとリアルタイムでつながり、登録している荷主の配送案件を素早く仲介するというものだ。荷主と運送者をマッチングする仕組みは「 求貨求車(きゅうかきゅうしゃ) 」などと呼ばれ、全国に多数の業者が存在する。運送業では、なるべく荷物を積んで走ること、つまり「積載効率」を上げることが生産性向上の鍵になる。行きが満載でも、帰りの荷台が空だと積載効率が落ちるため、「帰り荷」を仲介する求貨求車の業者は多い。ピックゴーも、数ある求貨求車システムの一つだが、軽貨物からスタートしたため、比較的近い距離の緊急の配送や、物量が不安定な配送ルートの荷量の波を吸収するための配送需要を中心に領域を広げ、登録する配送パートナーは、個人事業主の軽貨物ドライバーだけで3万人以上というプラットフォームに成長した。

 松本CEOが強調する特徴が二つある。一つは、実際の配送ドライバーと同社が直接取引をすることだ。当たり前のことのように聞こえるが、運送業界では、多重下請けが構造化し、委託された仕事を下請けに再委託することも当たり前になっている。3次、4次と仕事が下請けに回れば、その度に手数料が中抜きされ、実際の配送業者が手にする運賃は少なくなる。ドライバーとの直接取引は、仕事に見合った手取りを確保するのが目的という。

 もう一つは、ドライバーが選ばれる仕組みを採用していることだ。ドライバーの評価制度を開発し、評価の高い人が仕事を得やすい仕組みを取り入れた。実績や努力の可視化により、配送の質が向上し、荷主の満足度を高めることにもつながったが、主眼はドライバーの労働を適正評価することにあるという。

 こうしたビジネスモデルには、松本CEOの経歴が関係する。学生時代に独学でプログラミングを習得し、国土交通省の航空管制官になった松本CEOは、休日になると、後に妻となる女性の父親の運送会社でデジタル化を手伝っていた。義父はもともと、冷凍軽トラックの製造販売会社を営んでいたが、自身が軽トラックを販売した個人事業主のドライバーの仕事に「フェアネス(公平性)がない」と心を痛め、困っているドライバーに仕事を渡す仕事を始めていた。結婚前に義父から「一緒に物流を変えていこう」と言われ、13年に管制官をやめて義父の運送会社に入ると、翌月に義父が急死。その後は、自らも軽トラックのハンドルを握りながら、義父が描いたプラットフォーム作りに奔走してきた。

 ドライバーの価値が適正評価されていないと松本CEOが思うのは、届ける責任を体感したことが下地にある。荷台に荷物が残っていると、待っている人がいるからどうにかして届けよう、という気持ちになる。コロナ禍のような危機に見舞われると、社会は物流関係者が「エッセンシャルワーカー」(必要不可欠な労働者)だと再認識するが、トラックドライバーの待遇は、平均的な労働者と比べ、労働時間が約2割長いのに、所得は1~2割低い。国は、下請法などを駆使しながら「下請けいじめ」をしないよう監視しているが、末端にいた個人事業主のドライバーとデジタルで直接つながるビジネスモデルは、多重構造打破の役割を担っている。

 ピックゴーの配送料金は、距離や時間に応じて変動し、ドライバーの報酬とCBcloudの手数料に分配される。食品、小売り、建材など荷主の業種は幅広く、手積み・手おろしの荷物が多い。マッチング件数が非公表のため、正確な評価は難しいが、ドライバーが見つかるまでの平均時間が1分を切り、マッチング率は99%を超えるといい、デジタルプラットフォームの利便性の高さがうかがえる。

 CBcloudが開発した宅配効率化ソリューションは日本郵便に採用された。スマホのみで配送業務を完結させる仕組みで、企業がベンチャーなど外部の技術を取り込みながら改革を加速させる「オープンイノベーション」の一例だ。21年6月には、セブン-イレブン・ジャパンが一部地域で実証実験中のネットコンビニとピックゴーをつなぎ、顧客から商品の配送注文があると、ピックゴーの登録ドライバーが配送するという両社連携の取り組みを発表した。CBcloudがピックゴーとの接続窓口となるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を社外に公開したことで連携が可能になった。CBcloudには複数の大手企業が出資しており、業界の注目が集まる。

 20年2月には、最大積載量が350キログラムまでに制限される軽貨物だけでなく、一般貨物の運送業者とのマッチングもピックゴーで扱い始め、登録する運送業者は21年9月現在、1000社を超えている。一般貨物の場合、マッチングに臨むのは運送業者の配車担当者らが多いため、CBcloudへの出発・配送完了などの報告も、ドライバーの持つスマホのほかに、同社が運送会社向けに開発した業務支援システムの使用を求めている。このシステムは、トラックの動態管理(位置や配送状況の把握)や配車表・日報の作成、請求書発行をデジタル化したもので、複数の料金プランがあるが、機能を限定した無料プランも用意し、ピックゴーでの配送報告がすべてリアルタイムで入手できるようにしている。物流の効率化が進まない理由の一つに、国内の運送会社約6万社のほとんどが中小零細企業で、デジタル化に投資する余力がなく、労働生産性が上がらないという事情がある。松本CEOは「実は、単なるマッチングには、興味がないんです。ドライバーさんや運送事業者さんの環境改善、彼らの付加価値の向上に興味があるんです」と語っている。

 一般貨物については、現在は「緊急配送」がメインで、定常的な配送の領域に本格進出しているわけではない。積載量が多い一般貨物の世界で、求貨求車をデジタル中心の仕組みで構築するのは至難の業だ。納品の方法が現場によって異なるなど、調整項目が多いため、デジタルに加え、訓練を積んだ人間による電話などでの調整がないと、サービス品質が上がりにくい。一般貨物の領域で先行する物流会社などの取り組みも横目で見ながら、松本CEOは「(一般貨物の世界では)デジタルとアナログの融合も一つのテーマになる」と話した。

 国土交通省のまとめでは、21年5月時点で営業用の軽貨物は全国で約29万台。11~16年頃までは22万台前後だったが、17年頃から増え始め、20年5月には27万台近くになっていた。小回りがきく営業用軽貨物の増加は、ネット通販の隆盛やコロナ禍の「巣ごもり需要」も加わり、ラストワンマイル領域で配送が増えていることが関係しているだろう。

トラック物流で共同配送の取り組み

 ラストワンマイル領域での小口・多頻度配送は、消費者や企業に需要があるから増えているのであり、小回りのきく軽貨物で対応するのは理にかなっている。ただ、無駄な在庫を持ちたくない企業戦略に基づく小口・多頻度配送は、かなり以前から増加傾向にあり、トラックの積載効率を悪化させてきた。許容積載量に占める貨物量の割合を示す積載効率は、営業トラックの場合、2011年度に41.6%だったのが、19年度は37.7%まで低下。小口・多頻度配送が、物流の中流や上流にまで波及すると、全体の効率が阻害される。

 配送効率を上げるため、同業者が共同で輸送する取り組みは、昔から各地で行われてきた。日用品・化粧品メーカーが出資して1989年に設立され、2016年に解散した「プラネット物流」もその一つだ。

 日用品業界では、プラネット物流ができる前の1985年、メーカーから卸(問屋)に対する商流(受発注や入出荷など情報の流れ)の共通インフラとして、「業界VAN」と呼ばれたEDI(電子データ交換)を運営する共同出資会社「プラネット」(東京)が設立された。サプライチェーンは「商流」と「物流」に分けられるが、商流に続き、物流の効率化を狙ったのがプラネット物流だった。

 同社設立時に出資したのはライオン、エステー化学、サンスターなどメーカー10社とプラネットの計11社。まず、中部地区(拠点は愛知県)で共同配送を始めた後、東北、九州、98年には北海道にも体制を広げた。基本的な枠組みは、各メーカーの工場から製品を共同倉庫に集めて保管し、卸からの発注に応じ、まとめてトラックで卸の拠点に共同配送する、というものだ。

 この取り組みに携わったサンスターグループの荒木協和・日本ブロック・ロジスティクス担当理事によると、各社がばらばらに運ぶと、1台ごとに荷台の空きが発生するが、共同倉庫からの一括配送なら、大型の10トン車を何台か満載にし、最後の1台だけが10トン未満の物量を運べば良いため、トラック台数の削減が可能になった。各社で協議会を作り、外装箱(段ボール)の大きさや重さの上限、パレットサイズ、積み方などを標準化し、外装箱に表示する情報(文字・バーコード等)や表示位置なども統一したことで、荷受けする卸の物流センター側も機械で情報を読み取る仕組みを構築しやすくなった。日用品を扱う卸業界は統廃合が進み、大型化に伴って卸の発言力が増していたが、メーカー側も共同配送を組んでいれば、ものを言いやすいというのも利点だったという。

 プラネット物流は、南関東、関西にも拠点を設け、2008年には北関東にも大規模拠点を設けたが、09年に東北を閉鎖すると、13年に南関東、14年に中部を閉鎖、16年に解散した。解散の理由は様々あるが、環境の変化が要因の一つだと荒木理事は説明する。卸業界は統廃合で拠点集約が進んで、最初は全国1500か所ぐらいあった届け先が500か所ぐらいに減ったこともあり、メーカー側も拠点集約へと動き、プラネット物流の共同倉庫は、北海道と九州は別にして、本州に5か所もいらなくなったという。

 北海道ではメーカー16社が倉庫を共にしていた。しかし、本州で共同倉庫を関東と関西の計2か所に集約すると、もともとの物量が多いため、巨大な倉庫が必要になってしまうほか、集約に対応できるトラック台数にも限りがあり、共同保管・共同配送の枠組みの維持が難しくなった。

 共同配送は昔から、どの業界でも、物量が少ない地方に多かった。荷台がスカスカの状態で運ぶより、ライバル同士でも手を組み、共同配送したほうがお互いに助かるし、負担を分け合うことで社会インフラとしての役割を維持できる。都市部での共同配送は、物量の少なさを補う構図がない場合、「帰り荷」の確保や荷量の波動吸収といった、協調による別の利点が必要になる。

 プラネット物流の解散後も、北海道と九州では、物流会社との契約が個別になっただけで、ほぼ同じ形での配送が続いているという。本州の2拠点も、参加企業は減ったものの共同倉庫は続き、構築したルールも無駄になっていない。

 荒木理事は解散して気づいたことがある。<1>(プラネット物流時代の)各社の出荷量は営業担当者の売り込みの成果などで増減したが、売り場の総面積は同じだから、共同配送で総物量は平準化されていた<2>個別配送に戻ると、荷量が多くない社は積載効率が落ちる<3>卸拠点で専用バースがなくなるなど、荷下ろし場の環境変化で荷下ろしに時間がかかるようになった―などだ。個別配送では、波動の吸収力や交渉力が落ちるということか。各社の担当者は、もう一度、共同化を考えるようになり、商流のEDIを運営するプラネットに対し、物流情報も扱えないかと検討依頼が相次いだ。「プラネット物流でメーカー同士の横の連携が出来た。次は、プラネットのEDIで、メーカーと卸と運送会社が物流情報を共有するのが合理的だった」と荒木理事は指摘する。

 要望を受け、プラネットは20年、メーカー・卸・物流会社の間でやり取りする標準的な物流情報を整理した「ロジスティクスEDI概要書」を策定。概要書で示した27種類の情報のうち、要望が強かった「出荷予定データ」について、EDIで提供できる準備を整え、21年から一部のメーカーと卸、物流会社との間で使い始めた。出荷予定データは、業界でASN(事前出荷情報)とも呼ばれるもので、このケースで言えば、メーカーが卸から注文を受け、在庫を確認し、納品する前に卸に伝達する商品の種類や数などのデータのこと。従来、これらのデータは紙の「納品伝票」などに記され、商品と一緒に届けていたが、データが先に伝達されれば、卸側は倉庫の割り付けや作業人員などの準備ができるほか、照合作業も事前に行うことで、納品時の検品作業を簡素化できる。物流現場ではドライバーも検品を担うことが多いため、長時間労働が問題化しているドライバーの働き方改革にもつながる。

 プラネットが次に準備しているのは、卸からメーカーに返す入荷検収データ。これらの情報をEDIでやり取りすれば、物流現場のペーパーレス化が進み、紙伝票の印刷や保管の手間が減る。プラネットの商流の基幹EDIは、日用品・化粧品業界、ペットフード・ペット用品業界、OTC医薬品(市販薬)業界のメーカー約800社と卸約500社が利用しており、ロジスティクスEDIについて「中堅業者まで広げていけば(メーカー・卸間を流れる物量の)9割以上をカバーできる」とプラネットの森高宏・ネットワーク推進本部付マネージャーは語る。

 プラネット物流には主要メーカーが連なったが、業界トップの「花王」は参加していなかった。花王は、卸を通さない自前の販売ルートを構築する独自路線で成長し、商流に関しても、プラネットのEDIの利用はごく一部の取引にとどまっている。こうした背景事情が、他の主要メーカーにどの程度の影響を与えたかは分からないが、プラネット物流による横連携の共同配送は、四半世紀を経て外枠をはずし、デジタルを使った情報の縦連携(メーカー→物流会社→卸)へと組み替えることになった。花王と、プラネット物流を主導したライオンの両社は20年、内閣府が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「スマート物流サービス」に参加し、花王の神奈川県から香川県への輸送と、ライオンの香川県から首都圏3拠点への輸送を結合して往復輸送とすることで、CO2削減や輸送費削減を目指す共同配送の取り組みを発表した。競争と協調の枠組みは、時代や状況に応じて変わるが、社会インフラとしての物流の持続性を重視する意識が強まっていることは間違いない。

企業の連携促す法改正

 2016年に施行された改正物流総合効率化法は、複数の企業などが連携して行う流通業務で、総合化(輸送、保管、荷さばき、流通加工を一体的に行うこと)と効率化(輸送の合理化)により、環境負荷の低減や省力化に資する事業に国が経費補助や税制特例などの支援をする仕組みを取り入れた。典型的なパターンは<1>連携型倉庫で輸送網を集約<2>トラックの共同輸配送で積載率の向上<3>トラックだけでなく鉄道・船舶などを活用する「モーダルシフト(輸送手段の転換)」―などで、21年7月末までに284件が認定された。物流業者同士だけでなく、荷主企業なども連携し、役割分担することで、サプライチェーン全体の効率化を進める狙いがある。

 認定件数では、拠点新設などによる輸送網集約が半分以上を占め、鉄道や船舶などへのモーダルシフトも約100件に及ぶ。モーダルシフトは、拘束時間が長い長距離トラックドライバーの働き方改革が背景にある。意外に少ないのが共同輸配送(共同配送)で、20件余に過ぎない。共同配送は手軽に行えそうにも思えるが、誰が見ても効果が出そうなルートはすでに実施済みで、新たに組む検討を始めても、配送条件の見直しが必要になり、途中で頓挫するケースも多いのではないか。認定されているのは、ライバル関係にある大手の宅配会社や物流会社が、局地的に協調して経済合理性を追求するような事例も目立つ。

 国が17年に規制緩和するなどして利用を促してきた貨客混載も10件余り。これは、主に地方で旅客鉄道の空きスペースを宅配会社が活用する事例が多いが、路線バスに宅配便を載せるケースもあり、共同配送とモーダルシフトの両側面がある。貨客混載は認定事例以外でも、コロナ禍で乗客が減った鉄道会社が空きスペースで荷物を配送する取り組みが広がっており、新幹線による生鮮品のスピード配送も行われている。新たな組み合わせは物流の選択肢を増やすもので、流通業界におけるビジネスモデルの変革につながる可能性もある。

トラックメーカーも参画

 トラックの自動化技術は、物流業界の働き方を変えていく可能性を秘める。国は、25年度以降に「レベル4」(走行ルートや時間帯など特定条件下における完全自動運転)の自動運転トラックを高速道路で走らせることを目標にしており、大型トラックによる幹線輸送がターゲットになる。トラックメーカーにとっては大きな転換期だが、メーカー側の視線は、自動運転以外の物流領域にも注がれている。

ドライバー不足への対応策として期待されるダブル連結トラック(NEXT Logistics Japan 提供)
ドライバー不足への対応策として期待されるダブル連結トラック(NEXT Logistics Japan 提供)

 大手トラックメーカーの日野自動車は18年、物流効率化を手掛ける子会社「NEXT Logistics Japan(NLJ)」(東京)を設立。荷主企業や物流会社なども出資し、幹線輸送での「ダブル連結」や荷室内をセンサーで監視しながらの運行を行っている。ダブル連結は、荷台部分を2両連結し、運転手1人で2台分を運ぶ取り組みで、ドライバー不足への対応策だ。荷室の可視化は、荷物の組み合わせを最適化して積載効率を高める狙いがある。

 トラック運転手の時間外労働の上限規制が24年から適用されることも見据え、高速道路などの幹線輸送では、ドライバーが日帰りで戻れるように中継地点で荷物の受け渡しをする方式が増えつつある。NLJも、神奈川県と兵庫県の拠点間を高速道路を利用して配送しているが、中間の愛知県にある拠点を起点とし、その東と西でドライバーを分けて往復する。同社は事業開始から1年を経た20年12月、幹線輸送の運送人員やCO2排出量について、2~3割超の削減を達成したほか、直近3か月平均の積載率は56・9%に上ったと発表している。

 大手トラックメーカーは、トラックの位置や状態、速度、燃料などの情報を活用し、安全運転や省燃費運転などに資するサービスを提供する「テレマティクス」事業を行っているが、日本自動車工業会で大型車技術部会の部会長を務める小川博・日野自動車技監によると、メーカー各社がトラックから発信するデータは規格がばらばらのため、統一に向けた検討を進めているという。各社ごとに完結するアフターサービスとしては現状のままでも問題ないが、念頭にあるのは、物流業界で広がりつつある新たな仕組みへの対応だ。

 小川技監は「今のトラックは走る情報端末のようなもの」と言い、各社のデータを統一すれば、求貨求車システムやトラック予約システムといった他の物流プラットフォーマーとの連携を加速させる効果があると指摘する。走行データそのものは運送会社に帰属するため、トラックメーカーとしては、他のプラットフォーマーがデータ連携の接続窓口であるAPIを作る際、各社の提供データを一元的に利用可能にするためのガイドラインを示すなどして連携を促すことを想定している。荷台の中の荷物情報についても、架装(荷台)メーカーなどとも協力し、いかに活用しやすい仕組みを作るかが重要になってくる。

 今後の物流の姿を考える上で、欧州との違いは興味深い。欧州では車両データを車両から発信する規格はすでにトラックメーカー各社で標準化されており、トラックの構造も、荷台(トレーラー)部分が容易に分離できるため、荷台は荷主がコントロールしているという。小川技監は「欧州のドライバーは拠点に着いたら、トレーラーを切り離して帰ってくる」と指摘し、日本ではドライバーが荷下ろしや検品などをすることが少なくないことを踏まえ、「運転手の働き方改革や物流の効率化のためには、(検品などを)荷受け側が行うような変革も必要ではないか。商慣習は一朝一夕には変わらないので、地道に進めていくしかない」と付け加えた。

リソースの共用をどう進めるか

 ここまで紹介した取り組みに共通しているのは、トラックや倉庫、ドライバーなどの人的資源も含めた「物流リソース」を効果的に活用するには、業界の垣根を低くして、デジタル技術を駆使したデータで「リソース」をつなぎ、その状況を可視化していく手法が有効ということだ。

 CBcloudの松本CEOは、軽貨物以外の領域にも手を広げているが、「可視化されず、日の目を見ていない領域、伸びしろのある領域の価値を上げていきたい」と述べ、活用すべき物流リソースはまだまだあるとの見方を示す。 

 プラネット物流は、壮大な共同配送の実践だった。メーカー同士の横の連携で何が起きるのか、当事者として体感したサンスターグループの荒木理事は「卸も一体でやるのが本当の共同化であり、商流と物流の情報のマッチングで無駄をなくすことが重要だと気づかされた」と明かす。今後、縦の情報連携を進めるが、サプライチェーンを構成する「製(メーカー)・配(中間流通・卸)・販(小売り)」を一気通貫でつなぐ世界までたどり着くには、さらなる連携が必要になる。

 貨客混載は、かなり以前から必要に応じて活用はされていた。近年、改めて注目されるのは、大量消費、大量輸送時代の規制にとらわれず、限りある資源の有効活用が求められているからだ。国が進める「MaaS(Mobility as a Service)」は、IT技術を駆使し、様々な交通サービスを必要に応じて利用できるワンパッケージの移動サービスととらえる考え方だ。その物流版である「物流MaaS」が、トラックの車両情報や荷台の荷物情報などに着目し、他の物流サービスに活用することを想定する。どの取り組みも、リソースを無駄なく使う思想で共通する。

物流DXの専門人材育成を

 物流効率化を進めるためには、競争領域と協調領域の整理も必要だ。「競争は店頭(商品)で、物流は協調で」という言葉を企業が使うことがある。物流では協調し、本業の商品開発で競い合った方が、企業のため、社会全体のためになる、という意味で使われている。一方、物流会社にとっては物流が本業だから、競争領域と協調領域には別の線引きが必要になるが、単独では社会インフラとしての物流網を維持するのが難しい過疎地域などでは共同配送による協調が行われてきた。

 物流全体の効率を改善するには、荷物の外装表示やパレットの大きさ、納品ルールなどを標準化し、データ共有することが有効であり、協調が必要な分野だ。将来、自動運転などの領域が広がれば、安全面のルール作りや監視システムなどの基盤整備は国の支援、官民の協調が不可欠だし、そのスピードが国際競争力にも直結する。

 企業が自前主義に固執せず、オープンイノベーションで外部の技術を積極的に取り入れる手法は、大きな成果に結びつく可能性があるが、自由で公正な競争環境の確保が前提だ。データが集積するプラットフォームは重要な社会インフラとなるだけに、運営の透明性も求められる。ドライバーの働き方に加え、長期的な待遇の改善にも社会の関心は向かっていくだろう。

 今後、協調が必要な分野として、将来の物流人材の育成が挙げられる。21年4月に国と日本物流団体連合会が開いた「高度物流人材シンポジウム」では、物流のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上で、専門人材の養成プログラムを充実させる必要性が強調された。文系と理系の知識を併せ持ち、全体最適が見える人材が必要という指摘だ。パネリストからは「お客さまに喜んでいただくために、どんな価値を提供できるかだ」(ヤマト運輸の斉藤泰裕・EC事業本部ゼネラルマネージャー)という意見も出た。効率の追求と価値の追求は相反する面もあるが、どちらも物流に大切なものだ。産官学が協調し、若い人材が物流の未来に魅力を感じるような「場」を用意していくことが重要だ。


※この論考は調査研究本部が発行する「読売クオータリー」掲載されたものです。読売クオータリーにはほかにも関連記事や注目の論考を多数収載しています。最新号の内容やこれまでに掲載された記事・論考の一覧は こちら にまとめています。
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