コロナ後の新・観光戦略論

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POINT
■人口減少や少子高齢化が進展する中、国内外から人を呼び込み、旅行関連消費を拡大させることは、地域経済の活力維持や日本経済の持続的成長にとって重要だ。

■新型コロナウイルス感染拡大で、成長を遂げてきたインバウンド(訪日外国人客)需要に急ブレーキがかかり、裾野の広い観光関連業界は大打撃を受けている。

■影響の大きい中小のホテル・旅館業がコロナショックを乗り越えるには、行政の支援策を活用しながら国内需要を喚起する一方で、労働生産性の低さやデジタル対応の遅れを解消することが欠かせない。

■外国人旅行者の日本への関心は依然として高い。観光関連業界はデジタル化を推進し、ライフスタイルや環境の変化に応じたビジネスモデルへ転換すべきだ。

 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、日本経済を牽引してきた観光産業が大きな打撃を受けている。右肩上がりの成長を遂げてきた外国人旅行者が激減し、国内の移動も事実上制限されて、国内外の需要が一気に消失したためだ。とりわけ人口減少に伴う地域経済の縮小に直面していた地方の観光地への影響は大きい。コロナ禍を経て変化した観光需要や浮かび上がった課題を検証しながら、コロナ後を見据えた新しい観光戦略の方向性を探った。

物流の生産性向上を考える
調査研究本部主任研究員 高橋徹 

苦境にあえぐ道内経済

 観光資源に恵まれた北海道を代表する保養地の定山渓温泉(札幌市南区)。札幌市中心地から車で1時間弱とアクセスが良く、古くから札幌の〝奥座敷〟として賑わいを見せてきた。政府の観光振興戦略を追い風にインバウンド(訪日外国人客)需要をうまく取り込んでいたが、コロナ禍で一変した。

 札幌市など8市町村で構成する石狩管内の観光客数は2018年度に過去最多を記録したが、コロナ禍が始まった19年度から2年連続で減少した。定山渓温泉の20年度の宿泊客も約40万人と例年の3分の1に激減し、21年4月には、同温泉で最大規模の宿泊施設「定山渓ビューホテル」(647室)を運営していたカラカミホテルズアンドリゾート(札幌市)が事業の継続を断念。通販大手ベルーナ(埼玉県上尾市)に経営権を売却し、地元に衝撃が走った。

コロナ禍の影響で低迷する定山渓温泉。中央上部の高層建築が定山渓ビューホテル
コロナ禍の影響で低迷する定山渓温泉。中央上部の高層建築が定山渓ビューホテル

 同ホテルは1985年開業で、展望大浴場や大型温水プールを構え、札幌市周辺のファミリー層などに人気があった。だが、コロナ禍を受けて21年2月から休館していた。ベルーナは同8月にリニューアルオープンさせたが、コロナ前の活況を取り戻すには時間がかかりそうだ。

 道内では登別温泉(登別市)、湯の川温泉(函館市)、層雲峡温泉(上川町)などの有名温泉地も客足に勢いがない。

 北海道庁は「どうみん割」をはじめ、各市町村とも連携しながら観光支援策を展開し、道民の需要を喚起してきた。官民連携の観光キャンペーン「HOKKAIDO LOVE!」も本格スタートさせるなど、かつてないほど観光支援予算を投じた。

 この結果、21年10月の経済指標を中心とした北海道経済産業局の管内経済概況では、観光の状況は「低迷している」から「一部に持ち直しの兆しがみられる」と5か月ぶりに判断が引き上げられた。

 ただ、21年末から驚異的スピードで感染拡大した変異株「オミクロン株」の影響は織り込まれていない。北海道庁の山崎雅生・経済部観光振興監は「閑散期を埋めてきたインバウンド需要の消失の影響は大きい。道民向けキャンペーンで週末に集客できても、平日は閑散としている観光地が多い。首都圏や関西圏のアクティブシニアなどの観光客が動き出さないと、本格的な回復は見込めない」と話す。

観光業に大打撃

 訪日外国人旅行者数は、2013年以降、ビザ要件の緩和や税関・出入国審査・検疫体制の拡充、日本政府観光局(JNTO)などによる対外的なプロモーション活動が功を奏し、コロナ前の19年まで7年連続で過去最高を更新して推移してきた。

 しかし、コロナ禍で20年2月以降、訪日外国人旅行者数は大きく減少。旅行消費額にも急ブレーキがかかった。国内移動も制限されたことで旅行需要は消失し、約900万人の雇用を抱えるとされる裾野の広い観光業界に深刻なダメージを与えている。全体の延べ宿泊者数や外国人の延べ宿泊者数をコロナ発生前の19年実績と比べると、20年2月以降はマイナスに沈んだままだ。

 旅館・ホテルの倒産も止まらない。帝国データバンクの調べでは、21年12月20日時点のコロナ関連の倒産件数2544件のうち、「旅館・ホテル」は117件で、「飲食店」(427件)、「建設・工事業」(274件)、「食品卸」(132件)に次いで多い。

 20年3月以降の観光関連業の大型倒産(負債額100億円以上)を見ると、旅行会社ホワイト・ベアファミリー(大阪府、負債額278億円)、格安旅行会社エアアジア・ジャパン(愛知県、同217億円)、リゾートホテル運営WBFホテル&リゾーツ(大阪府、同160億円)など、影響が関連業界全体に広がっていることが分かる。

 21年1~9月に休廃業・解散した観光関連企業は全国で143件(個人事業主を含む、速報値)と、この時点ですでに前年実績を上回り、過去10年で最多の水準で推移している。全体の倒産や休廃業・解散が減る中、観光関連企業の苦況が目に付く。

「Go To トラベル」への期待

 苦境を脱するためのカンフル剤として期待が大きいのが、政府の観光支援策「Go To トラベル」の再開だ。20年7月にスタートし、旅行代金の割引や旅先で使えるクーポン券の配布で需要を喚起。東京発着の旅行が対象に加わった同10~11月は一時的にコロナ前の水準近くまで観光需要を戻す効果をもたらした。だが、その後の感染拡大で同年12月に中断された。

 観光庁の推計では、キャンペーン期間中、少なくとも8781万泊の利用があり、宿泊・利用代金割引(約4082億円)とクーポン(約1317億円)で計約5400億円が投入されたという。

 日本旅館協会の浜野浩二会長は「観光インフラ(社会基盤)が大きく 毀損(きそん) する事態は避けなくてはいけない。(旅館業の)財務を立て直し、成長軌道に戻るためには、旅行需要の自然回復だけでは困難で、政府などの強力な後押しが必要だ」と訴える。

 政府は事業再開に当たり、中小の旅館やホテルにも恩恵が行き渡るよう、最大1万4000円だった旅行代金の割引額を最大1万円に引き下げることにした。さらに、休日に利用が集中しないよう、最大6000円だったクーポン券も平日3000円、休日1000円と差をつける。

 大和総研の試算によると、再開による経済効果は直接的に3.2兆円、波及効果を加えると3.7兆円が見込まれ、2億2000万人泊分の需要を創出するという。鈴木雄大郎エコノミストは「政策効果が大きい分、終了後の需要急減が懸念される。割引率を段階的に下げるなどの工夫が必要だ」と指摘する。

宿泊業の構造的課題

 コロナ禍で、宿泊施設の構造的な課題も浮かび上がった。全国の旅館・ホテル約5万軒の9割は中小企業で、旅館の多くは家族経営だ。

 1980年代から90年代にかけては、団体旅行や社員旅行が盛んだったが、バブル崩壊後、ニーズが個人型旅行に移った。だが、こうした需要の変化に対応できず、独自のマーケティングを展開するノウハウがない宿泊施設は依然として多い。

 地域旅館に関する観光庁の報告書は「これらの旅館は、市場の変化への対応が遅れ、生産性が低い労働集約型オペレーションに依存する旧来型事業モデルから脱皮できず、赤字が続き、さらなる借り入れで債務過多となり、施設が老朽化していくという『負のスパイラル』に陥っている」と指摘する。薄利多売の自転車操業では、前向きの投資ができず、サービスの改善や客単価を上げることも難しい。

「週休3日制」の旅館

 ここで、中小旅館の構造問題に対し、デジタル化の推進で労働生産性を上げ、V字回復につなげた事例を紹介したい。

 東京都心から小田急線で約1時間の神奈川県秦野市の鶴巻温泉は、閑静な住宅街の中に旅館が点在する小さな温泉郷だ。かの地を代表する「元湯 陣屋」は、三井財閥の別荘を起源とする1918年(大正7年)創業の老舗旅館。皇族などを迎えるために作られた貴賓室「松風」は、囲碁や将棋の名勝負の舞台となってきた。

 この老舗が近年、IT(情報技術)を駆使した業務の効率化や働き方改革を実践し、異例の「週休3日制」や「副業解禁」で業界の注目を集めている。

 館内では、着物姿の従業員がタブレットを操り、顧客の食事の好みや旅館での過ごし方などの情報をチェックしている。駐車場に宿泊客の車が入ると、「ドアマン役」のカメラがナンバープレートを読み取り、登録された顧客データと照合する。到着情報は社内SNSや音声で知らされ、即座におもてなしの態勢が整う。大浴場でもセンサーを使って宿泊客の出入りを把握し、一定の人数に達すればタオルの補充や清掃に駆けつける。

 代表取締役で 女将(おかみ) の宮崎知子さん(44)、夫の富夫さん(44)夫妻は2009年、オーナーだった富夫さんの父の急逝を受けて旅館経営を引き継いだ。経営は火の車だった。負債総額は10億円。台帳類はすべて手書きで、人件費や食材の原価管理もできていない。予約や顧客管理も台帳のみ。現場の従業員は熱心だったが、布団を敷く係、部屋へ案内する係など業務が細分化され,連携が取れていない。ホンダの技術者だった富夫さんは、すぐに一元管理できる基幹システムの必要性を感じたが、中小旅館の経営管理に適した既存システムは見当たらなかった。

デジタル技術を導入して業務改革に取り組む「元湯 陣屋」代表取締役女将の宮崎知子さん(神奈川県秦野市で、2021年12月撮影))
デジタル技術を導入して業務改革に取り組む「元湯 陣屋」代表取締役女将の宮崎知子さん(神奈川県秦野市で、2021年12月撮影))

 「それなら自分たちで作ろう」。システムを独自開発し、「陣屋コネクト」と名付けた。旅館経営に必要な予約、顧客、勤怠、売り上げなどの管理を一括管理できるのが特徴だ。これにより経理業務が大幅に省力化され、経営状況も瞬時に把握できるようになった。改良を重ね、12年からは全国のホテルや旅館向けにシステムを販売、新たな収益源にした。

 同時に新しい経営方針を打ち出した。陣屋の客室はわずか20室で、1泊2食付き1万4000円のプランが基本だったが、時には1万円を切る価格で提供していた。宮崎夫妻は「付加価値を上げて単価を上げれば、稼働率が下がっても利益が出せる」と、高付加価値化への転換を宣言。特別イベント用だった貴賓室「松風」を一般客向けに改修し、食事の質も高めて徐々に単価を上げた。円滑なサービス提供のため、客のチェックインから見送りまで1人のスタッフが担当する体制を導入。ブライダル事業にも力を入れた。その結果、10年に3億円を切っていた売り上げが12年には4億円台まで伸び、黒字転換した。

 14年2月からは、稼働率が低かった火曜日と水曜日の2日間を思い切って休業にした。従業員は年俸制なので給料は減らないが、光熱費やパート従業員の人件費は抑制できる。16年からは月曜日の営業もやめ、週休3日制を確立した。業務効率化で浮いた原資を従業員の待遇改善に充て、平均年収は08年の約280万円から17年には約400万円に増えた。

 コロナ禍で20年4月は休館を余儀なくされたが、5月以降は営業を再開。同時に就業規則を改定して従業員の副業も解禁し、外でスキルを磨く機会を設けた。知子さんは「コロナ禍で売り上げは減少したが、常連客に支えられ、利益はそれほど落ちていない。これまでの12年間の取り組みは間違っていなかったと思う」と胸を張る。

地域の資源をフル活用

 コロナ下でも知恵を絞って、観光振興やファンづくりに取り組んでいる地域は少なくない。

 将棋の駒や果樹の生産で知られる山形県天童市の天童温泉もその一つだ。

 団体旅行をメーンに集客してきた天童温泉は、旅行需要の個人型へのシフトという環境変化への対応が遅れ、年々宿泊者が減少。台湾などからのインバウンド需要で当座をしのいできた。

 人口減少で国内市場の縮小が避けられない中、「個々の旅館の自助努力だけで限界がある。天童温泉全体の魅力を向上させないと生き残れない」。こうした思いを強くしていた老舗旅館「ほほえみの宿 滝の湯」の山口敦史社長(50)は、他の旅館経営者に呼びかけ、2017年に地元発のローカルツアーを企画・販売する「DMC天童温泉」を共同出資で設立。山口さんが社長に就任した。

 「既存の旅行社が持っていない視点のローカルツアー」を目指して、最初に企画したのが特産サクランボの朝摘み体験ツアーだ。6~7月に収穫期を迎えるサクランボは、昼に光合成と呼吸を活発に行い、夜半に甘さや栄養分を蓄える。早朝に収穫すると最も甘みを感じる状態になるという。シーズン中100人程度の集客を見込んでいたが、大幅に上回る約400人の応募があった。

 従来のサクランボ狩りツアーは日帰りが多く、宿泊に結び付かなかったが、集合時間が早朝なので前日に宿泊する参加者が増えた。20年はコロナ禍で中止に追い込まれたが、21年に再開すると、初回の参加者が戻ってきたという。

ラ・フランスの収穫ツアーに参加したメンバー(DMC天童温泉提供)
ラ・フランスの収穫ツアーに参加したメンバー(DMC天童温泉提供)

 このほか、ガス灯が照らす大正ロマンな街並みで有名な銀山温泉(尾花沢市)の夜景見学ツアーや、居合道体験(村山市)など、近隣とも連携したプランを次々と打ち出し、一般旅行者の投票で選ばれる20年度の「温泉総選挙」で天童温泉が観光庁長官賞を受賞した。21年には、全国一の生産量を誇るラ・フランス(洋梨)の収穫ツアーを企画。1回目に収穫し、追熟期間を経て食べ頃になったら再訪してもらう前後編完結型だ。新たな顧客層にしたい30~50代女性らに好評だったという。

 周辺スポットを巡回する無料バスの運行(22年2月末までの実証実験)や、銀山温泉と結ぶシャトルバスの運行も始めた。山口社長は「地域の果樹園や地場のメーカーも巻き込んで魅力的な体験ツアーを用意し、天童温泉だけでなく周辺地域も盛り上げていきたい」と張り切る。

岐路に立つ旅行会社

 オンライン旅行事業者(OTA)の台頭に加え、コロナ禍により長年、観光産業をリードしてきた旅行会社も深刻だ。最大手のJTBの21年4~9月期の連結決算は、本社など資産売却の効果で最終損益は前年同期の781億円の赤字から67億円の黒字に転換したが、旅行需要の停滞で本業のもうけを示す営業損益は330億円の赤字のままだ。近畿日本ツーリストなどを傘下に持つKNT-CTホールディングスも22年3月期の最終損益を130億円の赤字と見込むなど、未曽有の業績悪化に直面している。

帝国データバンク調べ
帝国データバンク調べ

 帝国データバンクによると、20年度の旅行会社の売上高合計は5・4兆円から1・8兆円に激減し、最終損益の合計も2273億円の赤字となった。人の移動が減ったことで、日本航空や全日本空輸、JR・私鉄など交通各社も経営環境は厳しさを増す。

 こうした中、ウィズコロナを前提にした取り組みも動き始めている。

ツアー参加者がスマホや紙で提示するワクチン接種の証明を一つずつ確認して受け付けする読売旅行の添乗員(埼玉県富士見市のふじみの駅前で、2021年10月撮影)
ツアー参加者がスマホや紙で提示するワクチン接種の証明を一つずつ確認して受け付けする読売旅行の添乗員(埼玉県富士見市のふじみの駅前で、2021年10月撮影)

 読売旅行は21年10月から政府が推進する「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験の一環として、添乗員が同行するすべてのツアーで、参加者を2回目のワクチン接種から14日以上経過した人か、3日以内のPCR検査で陰性だった人に限定している。

 「接種証を用意してください」。添乗員の呼びかけに、集まった約30人のツアー客は接種証のコピーやスマートフォン上の画像を示し、バスに乗り込んだ。

 埼玉県を発着点にした、行き先を知らせない日帰りのミステリーバスツアーでは、車内の座席の間隔を空けるなど感染対策を徹底し、山梨県内でシャインマスカット狩りなどを楽しんだ。終了時のアンケートでは、「安全、安心なツアーならこれからももっと行きたい」(50代)などの意見が寄せられた。坂元隆社長は「ワクチン・検査パッケージの推進で、ウィズコロナ時代でも安心して旅行ができるという認識が広がってほしい」と話す。

 大手を中心に旅行各社が力を入れ始めているのが、観光と結びつきの強い地方創生に関わる事業だ。

 JR西日本のグループ会社で、地域との結びつきの強い日本旅行の小谷野 悦光(よしてる) 社長は「地方を国内・海外・訪日旅行に次ぐ第4の柱にしよう」と現場に号令をかける。17年に地方創生推進本部を創設したほか、地方の営業本部にも自治体の活性化を担当する部門を設けた。「トータルプロデュースで地方創生の実現を」をスローガンに、全国の営業所を拠点に自治体のニーズを探り、ふるさと納税の事務局業務やワーケーション誘致のサポートなどの受注を勝ち取ってきた。こうした実績がコロナ禍でも役に立ち、ワクチンの大規模接種会場運営や予約システムの手配業務など300件以上受注する成果を上げた。国際会議や展示会の運営業務などにも力を注ぐ。旅行以外の業務の拡大で、社名から「旅行」の名前が外れる日が来るかもしれない。

迫られるビジネスモデルの転換

 これまで見てきたように観光産業は、地域経済や地方創生とも密接に関わっている。都市から地方への所得の再分配の役割も果たし、今後の日本経済の成長を考える上でも重要な位置を占める。裾野が広い観光産業の育成と課題解決には、所管の観光庁の政策だけでなく、総務省や内閣官房まち・ひと・しごと創生本部、経済産業省や農林水産省などとの連携も不可欠だ。

 東京女子大の矢ケ崎紀子教授(観光学)は「観光業は地域を豊かにし、成長と持続可能性の両立を実現するための重要なツール。域外の需要を獲得し、域内の多様な産業に波及させ、地域の他産業に刺激を与えることができるよう、政府や自治体はデータを明示しながら、新しいビジネスの創出をサポートしていくことが大事だ」と提言する。

 一方、インバウンド需要はいつ回復するのだろうか。帝国データバンクの 上西伴浩(かみにしともひろ) 情報統括部長は、21年11月の日本記者クラブでの講演で、「回復は早くても23年以降になるだろう」と予測した。その上で、「アジアを含めて数年後に日本を訪問したい声は圧倒的に多いので、V字回復のチャンスはある。ただし、コロナ禍前後で明らかになった課題にどう対応するかが、今後の経営を左右する」と指摘した。具体的には、<1>自社の強みを見定めた上でビジネスモデルを再構築する<2>従業員の確保<3>収益構造を細分化した上でのサービス・価格の見直し<4>電子決済への対応などDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進―を挙げ、「苦しい時にしっかりと対応したところが生きのびていく」と話した。

 欧米などでは、ITや人工知能(AI)を使って需要を予測するトラベルテックも進展している。データなどを利活用しながら山積する課題を克服できる地域や企業だけが生き残る「適者生存」の時代に入ったとも言えるだろう。


参考資料
国土交通省観光庁編(2021年)『令和3年度観光白書』
加藤弘治編著(2021年)『観光ビジネス未来白書 統計に見る実態・分析から見える未来戦略2021年版』(同友館)
観光庁報告書(2020年)『~地域旅館への投資の活性化による『負のスパイラル解消』に向けて~』
黒川茂樹(2018年)『中小企業のデジタル革命』読売クオータリー46号(読売新聞東京本社調査研究本部)
日本政策金融公庫総合研究所編(2018年)『インバウンドでチャンスをつかめ 中小企業における訪日外国人の受け入れの現状と課題』日本政策金融公庫総合研究所

※この論考は調査研究本部が発行する「読売クオータリー」掲載されたものです。読売クオータリーにはほかにも関連記事や注目の論考を多数収載しています。最新号の内容やこれまでに掲載された記事・論考の一覧は こちら にまとめています。

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2960243 0 経済・雇用 2022/04/20 12:00:00 2022/04/20 12:00:00 2022/04/20 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/04/20220427-OYT8I50037-T.jpg?type=thumbnail

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