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本格化する「科学的介護」

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POINT
■科学的根拠に基づく介護へ向け、政府の介護データベース「LIFE」が4月に稼働。介護報酬にその活用促進策が導入され、「科学的介護」が本格化してきた。

■科学的介護の目標は「自立支援」と「重度化防止」。効率的・効果的で質の高いサービスが、現場の負担軽減や将来的な介護費抑制につながると期待される。

■デジタル技術とデータを駆使して介護に科学を導入する試みは民間企業や研究機関で進む。人工知能(AI)によるケアプラン作成など実用化も始まっている。

■デジタル化が遅れている介護業界だが、今後は常にデジタルデータが求められる。本人の尊厳や満足度にも着目したエビデンスを蓄積し、介護の質を高めたい。

調査研究本部主任研究員 林真奈美

 経験や直感に頼りがちな介護の世界に、医療のようなエビデンス(科学的根拠)に基づく方法論を導入しようという動きが本格化してきた。エビデンス構築を目的とする政府の介護関連データベースが4月に稼働。併せて介護報酬改定で事業所にデータ提供を促す措置が多数導入され、「科学的介護」に向けて大きく踏み出した。企業や研究機関でも、デジタル技術とデータ活用でケアの質を高める取り組みが進んでいる。科学的アプローチによって「より有効なケア」が示されるようになれば、現場の負担軽減や将来的な社会保障費の抑制にもつながることが期待できる。

エビデンス構築へ基幹データベース稼働

 介護関連データを国レベルで収集・分析する「科学的介護情報システム」、通称LIFE(Long-term care Information system For Evidence)が、今年4月からスタートした。政府が2017年度にスタートさせた通所・訪問リハビリテーションに関するデータベース「VISIT(ビジット)」と、20年度に稼働した高齢者の状態やケアの内容等のデータベース「CHASE(チェイス)」を一体的に運用するもので、介護現場の情報が集約された基幹的データベースとなる。

 どのような状態の人に、どのようなケアを提供すれば、どのような効果やリスクがあるのか。これまでは客観的な情報が乏しく、事業所や介護職員の考え方によって対応が異なるのが実情だ。

 医療では多数の症例や臨床結果を集めて分析し、結果を論文にまとめて医療界全体で共有するのが普通で、治療法の選択において「根拠に基づく医療」の考え方が定着している。そこで、介護についても、ビッグデータを解析してより利用者の状態に適した合理的なケアについてのエビデンスを蓄積し、「科学的根拠に基づく介護=科学的介護」を現場に普及させようというのが政府の目的である。

 LIFEへの協力を促進するため、今年度の介護報酬改定では、データ提供や分析結果の活用に取り組む事業所への報酬を手厚くする「科学的介護推進体制加算」を新設。既存の加算の多くにも、新たに算定要件としてデータ提供などを組み込んだ。LIFEを育てて科学的介護を推進する、という方向性が明確に示されたと言えよう。この点が今回改革の大きな特徴ともなっている。

事業所に改善ポイント助言

 新設の科学的介護推進体制加算は、利用者1人当たり月400円が基本。施設サービスも通所・居住系サービスも対象になる。

 算定にあたって提出を求められるデータは、全ての利用者のADL(日常生活動作)値、栄養状態、口腔(こうくう)機能、認知症の状況などだ。提出した事業所には、全国平均との比較や改善ポイントといったLIFEによる分析結果がフィードバックされる。これに基づいてケアの内容を検証し、改善に取り組むことも、加算の要件となっている。データを出して終わりではなく、LIFEへの参加を通じ、計画(PLAN)→実行(DO)→評価(CHECK)→改善(ACTION)を繰り返すPDCAサイクルを現場に定着させ、介護のレベルアップを図ることが望まれているのだ。

 例えば、通所リハビリの利用者についてADL値や栄養状態などのデータを継続的に提出すると、LIFEが解析して「同じような状態像の利用者と比較してリハビリの効果が低い」「食事摂取量が少なく低体重」などと評価。その上で、「リハビリの提供に併せて、間食など食事提供量の増量を推奨」といったアドバイスと、「リハビリテーションの効果アップ(ADLが改善)、栄養状態の改善」などの結果予測が事業所に提示される。事業所はこのフィードバックに沿ってサービス計画を見直し、ADL値や栄養状態の改善に努めることになる。

 データの蓄積が進み、高齢者の状態に応じて「どのようなケアが望ましいか」が根拠とともに示されるようになれば、経験の浅い介護職員も適切なケアを提供しやすくなるだろう。職員のスキルアップと負担軽減につながり、事業所全体の介護の質も底上げされると考えられる。

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2022054 0 医療・社会保障 2021/04/30 10:00:00 2021/04/30 14:34:36 2021/04/30 14:34:36 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210428-OYT8I50051-T.jpg?type=thumbnail

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