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【コロナ禍の世界】「オンライン大学」意外にいい?教師と学生から見た功罪 教員座談会

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POINT
■大学のオンライン講義は、「学生の負担が大きい」「友達ができない」などと否定的に語られることが多いが、対面講義と比べると良い面も少なくない。
■オンラインのメリットとして、コロナ感染の拡大を避けるのみならず、通学時間の節約、大人数の学生と教員が「1対1」で向き合えることなどがある。
■ただ、オンラインだと学生の顔が教員に見えにくい。オンラインには「オンデマンド(動画蓄積)方式」「リアルタイム方式」の二つがあり、特に前者では学生の反応がほとんどつかめない。
■「アフター・コロナ」時代には、講義の目的ごとに、オンラインか対面か、ふさわしい形態を模索する必要があろう。

司会・調査研究本部主任研究員 舟槻格致

コロナ禍でオンライン講義を実施している大学のキャンパスは閑散としている(写真はイメージです)
コロナ禍でオンライン講義を実施している大学のキャンパスは閑散としている(写真はイメージです)

 読売新聞調査研究本部は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて各大学で行われているオンライン授業の効果や意義を探るため、大学教授と読売新聞社員による教員座談会を実施した。座談会は、メディア論が専門でジャーナリストの武田徹・専修大教授と、読売新聞の国際部長、編集局デスクなどを歴任し、調査研究本部の研究員嘱託として順天堂大と江戸川大で「比較日本社会論」などを教える岡本道郎氏、現役の国際部デスクで、日大で「ニュース英語」の授業を担当する柳沢亨之氏の3人が出席し、ウェブ会議システム「Teams(チームズ)」を使って行われた。司会は、専修大で政治ジャーナリズム論を受け持つ舟槻が務めた。

オンライン構築の苦労

――今年の春学期は、まずシステム作りから大変だったと聞くが、どうだったか。

武田氏は「オンラインか対面か」単純比較は雑、と語る
武田氏は「オンラインか対面か」単純比較は雑、と語る

武田氏 私の大学ではオンライン講義を始めるにあたって「教員と学生がお互いの映像を常時送り続けるような授業は避けてほしい」という要請があった。通信環境の整備が追いついていない学生もいるので、データ通信量を抑えた方がいいと考えたからだった。また、事前に動画を収録して蓄積しておき、学生が自分の都合に合わせて授業を受ける形式(オンデマンド方式)ではなく、普段の授業と同じ時間帯でオンライン講義をしてほしいとも言われた。学生が作ってきた授業中心の生活サイクルを大事にするという配慮からだ。

 こうした指示を踏まえつつ、教員が個々に授業スタイルを創意工夫してきたわけだが、私自身は資料を事前に提供し、オンライン会議のシステムを使って音声だけをリアルタイムで流している。例年であれば板書で済ませていたことも細かく資料に盛り込もうとしていたので、最初は準備が大変だった。

岡本氏 私もリアルタイム方式だったが、学生からちゃんと見えているのか、聞こえているのかが分からず、本当に不安だった。そのうち「チャット」で返事が来る関係が構築できると、少しは楽になったが。

 さらに、私は順天堂大も江戸川大も今年度が初めての講義で、いきなり4月からオンラインで始まったので、非常なプレッシャーを感じた。最初は、そもそも開講すら危ぶまれていたほどで、4月中下旬に大学側から「オンラインシステムに精通してください」という連絡があったが、最初は意味が分からなかった。同じ苦労を抱えた先生が多かったようだ。ゴールデンウィークは、オンライン講義の準備ですべて消えた(笑)。

柳沢氏 私は、武田先生の言うオンデマンドでやっている。大学側からは、(1)オンデマンド、(2)リアルタイム、(3)メールなどで学生に課題のみを与える――の3方式が示され、どれを選ぶかは教員の自由と言われた。私は(1)を選び、ユーチューブに録画し、受講生しか視聴できない「限定公開」とする形で実施している。これは、リアルタイム方式だと、私の仕事が講義時間と重なる恐れがあり、やむを得なかったためで、本当はリアルタイム方式の方が優れていると思っている。

 理由の一つは、オンデマンドだと学生の反応が全く分からない。「疑問や感想はいつでもメールで下さい」と言ってはあったものの、実際に送られてきたのは前期、後期の開講当初ぐらいだった。出欠を取るのも事実上難しく、質問や感想をくれた人は出席したことが明確なので、少し点数をプラスした。あと、テストもやりにくい。「何時から何時までに試験を受けて提出してください」と伝えるのは可能だが、学生は翻訳ソフトなどを使って解くこともできてしまう。本当の実力がなかなか測定しづらい。

武田氏 リアルタイム方式でも、カメラをオフにしていると、学生の様子を把握するのには限界がある。出欠は、別のアプリ等を組み合わせて抜き打ちで取る方法もあるが、私は、講義後に提出させる「リアクション・ペーパー」を、対面講義の時以上に重視し、講義内容をちゃんと理解しているかどうかを見て、出席を含む参加度を評価している。

オンラインにメリットも

――オンラインで良かったことはあったか。

武田氏 柳沢さんは「オンデマンドよりリアルタイムが良い」という話だったが、自分のペースで学べるオンデマンド方式には、「場所と時間が自由になる」というメリットがあると思う。たとえば、生活費をアルバイトで補っているような学生の場合、アルバイトで分断されることなく、まとまった時間が取れる時に、集中して授業を受けられるかもしれない。リアルタイム方式では、90分の授業中は端末の前にいないといけない。大学の講義に慣れていない1年生は、特に集中力の持続に苦労したはずだ。そこで新入生の多いクラスでは、好きなミュージシャンを学生に毎回紹介させ、URLを共有して音楽を「擬似的に」一緒に聴いてみる、オンライン環境ならではの5分程度の息抜き時間を途中に挟むなどの工夫もしてみた。

 また、オンデマンドとリアルタイムに共通するメリットとして、大人数講義がやりやすいことがある。対面だと、大教室では私語の問題がどうしても発生しがちだが、オンライン講義では何人登録していようと、一人一人の学生がパソコンやスマホを通して教員と直接向き合うことができる。

 もっとも、私語がすべて無駄かというと、そう単純でもない。対面講義では「今、先生の言ったことおかしくない?」とか、クラスメートとひそひそと言葉を交わしてから意を決して質問することはよくあって、その気づきの共有によって講義の流れが良い方向に変わる場合がある。つまり、私語のすべてが「ノイズ」ではなく、(複数人が触発し合うことで、より大きな成果が生まれる)「創発」につながることもある。オンラインでそれがなくなるとしたら、損失だと思う。

「オンラインの発展性にかけたい」と語る岡本氏
「オンラインの発展性にかけたい」と語る岡本氏

岡本氏 いつまで()っても不便と感じるのは、やはり「顔」が見えないことだ。順天堂では、大学側から「最初に、体の一部でも映すよう学生に指示してください」という連絡があり、私も学生にお願いしたが、結局、アイコンや漢字1字だけ示して出席する学生も多かった。こちらとしてはフラストレーションがたまるが、これは限界かもしれない。

 ただ、もちろんオンラインには便利な点もあり、学生側が送ってくるチャットは記録が残るので、積極的にチャットを送ってくる学生には、平常点をプラスできる。対面だと、学生の名前を一度に覚えるのはなかなか大変だから、平常点を公平に加算するのは困難だ。そこは、オンラインが優れている。

柳沢氏 武田先生がオンデマンドの良さを指摘されていたが、私も同じことを感じている。学生は時間を有効活用できるし、アルバイトで忙しい学生は夜講義を聴いたって良い。周囲を気にせず質問もできる。ただ、長所は裏返しで短所になることもあり、動画をため込み、小テストの前にまとめて聴く学生も多いようだ。

学生にも意外と好評

――学生の側は、オンライン講義をどのように評価しているのだろうか。

武田氏 頻繁に聞くのは、「課題が多くて大変だ」という声だ。実は、「アクティブ・ラーニング」化が進むなかで、授業への積極的な参加を求めて課題を増やす傾向は以前から生じていた。コロナで学生を教室に集める期末試験の実施が難しくなって、代わりに毎回の講義で出す課題がさらに増えたのだろう。個々の課題が積み上がって、こなせない量にまでなっているとしたら、かえって教育効果を損なう。他のオンライン授業でも課題が出ていることを意識して、先生方も徐々に調整を始めているとは思う。

岡本氏 私の担当する講義で、受講生にオンライン授業に関するミニ・アンケートを実施し、39人から回答があった。一日にとっているオンライン授業のコマ数は、2~3コマが6割、3~4コマが2割。課題は、5件以上が46%。2~3件、3~4件は各23%で、やはり多いと思う。

 ただ、オンライン講義を負担と感じるかどうかについては「あまり負担を感じない」が56%、「全く負担を感じない」が7%で計63%。「ある程度負担を感じる」は36%にとどまり、意外に負担は感じていない。後期に入って学生側も結構オンライン講義に慣れてきていることが、データとして示されたように感じている。

 自由意見では、オンライン授業のメリットとして、「時間に余裕ができる」「大学に行かなくて済む」「寝坊しなくなった」「大学に行くと感染症が怖い」「交通費がかからない」。「メークをする時間が(不要で)助かる」という女の子もいた(笑)。後期になると、オンライン授業の実利に気がつき、受け止めが積極的になってきたように感じる。「授業に集中できて成績も上がった」という学生もいた。ただ、「友だちに会いたい」「大学に行きたい」という声も、やはりある。

「思考のパラダイムを変えるのは対面講義」と語る柳沢氏
「思考のパラダイムを変えるのは対面講義」と語る柳沢氏

柳沢氏 大学というのは単に知識を得るだけでなく、先生や仲間の考えに広く触れたり、図書館の荘厳な雰囲気に影響を受けたりして思考のパラダイムを変えることができるところに意義がある。私は今も、「ベストはやはり対面講義」という考えだ。特に1年生は、オンラインだけでモチベーションを高めるのは難しいのではないか。一方、オンラインの授業は、知識を得たり補完したりするのには向いている。勉強の目的が明確で、モチベーションがそもそも高い社会人ならば、その方が便利だろう。

武田氏 結局、「オンラインか対面か」で優劣を単純比較するのは、雑な気がする。菅首相の「自助、共助、公助」をもじって言えば、学びには、教材や授業に向き合って一人で学ぶ「自学」と、人間関係の中で相互に刺激しあいながら学ぶ「共学」、社会から学ぶ「公学」の3層がある。自学の場合、オンラインの方が優れている面もある。共学は工夫すればオンラインでもある程度代替できそうだが、社会と触れる実経験が必須の公学はオンラインだけでカバーするのは無理だろう。オンライン講義が日常的になったこの機会に、学びのあり方を整理し、それぞれに対する教育方法の適性を理解したうえで、学びの場を確保することが必要ではないか。

岡本氏 ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」には、投票機能もある。「米大統領選でトランプ氏、バイデン氏のどちらが勝つと思うか」なんていう投票もしてもらった。オンライン技術は今後、高速・大容量通信規格「5G」の普及や人工知能(AI)の発達などで無限の可能性があるのであって、前向きに考えた方がいい。アフター・コロナで対面講義が完全にできるようになったとしても、オンラインと対面をうまく組み合わせた方がいいし、しばらく新型コロナが続くならば、当面はオンラインの発展性にかけてみたい気もしている。

プロフィル
武田 徹( たけだ・とおる
  1958年生まれ。ジャーナリスト・評論家。東大先端研科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大教授などを経て、2017年より専修大教授。2000年『流行人類学クロニクル』(日経BP社)でサントリー学芸賞受賞。著書に『日本ノンフィクション史 ルポルタージュからアカデミック・ジャーナリズムまで』(中公新書)、『現代日本を読む―ノンフィクションの名作・問題作』(同)、『ずばり東京2020』(筑摩選書)など多数。

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1675279 0 NEWS特集 2020/12/04 18:09:00 2021/02/04 12:43:30 2021/02/04 12:43:30 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201203-OYT8I50048-T.jpg?type=thumbnail

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