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新型コロナ「日本版タイムライン」の意義

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 2019年12月31日――。中国・武漢で「謎の肺炎」の流行が明らかになり、事態が動き出した。本紙の報道もこの瞬間から始まった。日々の記事、論説、連載、提言に加え、専門記者らが書き下ろした論考・解説80篇を収容。詳細な 時系列表(タイムライン) と充実の用語索引で、新型コロナの 世界的大流行(パンデミック) のここまでがわかる。

調査研究本部主任研究員 笹沢教一 

パンデミックの記録を時系列で

ジュネーブで記者会見するWHO・テドロス事務局長
ジュネーブで記者会見するWHO・テドロス事務局長
PCR検査のため集められた検体
PCR検査のため集められた検体

 新型コロナの流行を受け、世界保健機関(WHO)や欧州委員会、米国(議会調査局)、中国政府など多くの機関が対応状況や関連の出来事を日ごとに並べた「タイムライン」を公表した。米ニューヨーク・タイムズ紙など各国の主要メディアもこの動きに追随した。

 現在の国際保健の分野では、保健緊急事態に対して「イベントに基づくサーベイランス(EBS)」という手法が重用されている。これは、感染集団(クラスター)の発生や不調の訴えの急増などの情報をインターネット経由で監視し、それらを時系列的に把握することで、感染症流行の兆候を検知する手法だ。検査の陽性者数などの集計値(指標)を用いた従来型の「指標に基づくサーベイランス(IBS)」は平時に向いており、想定外の事態への対処が難しい。

 タイムラインは、こうした国際保健の様変わりに合わせた動きと言える。その時々の出来事を記録し、公表していくことで、透明性の確保にもつながり、後世の検証にも役立つ。

タイムライン(timeline) もともとは「予定表」「年表」を意味し、出来事を時系列に並べたもの。「時間軸」の意味もある。SNSではユーザーの投稿を時系列順に表示する機能を指し、災害時の行動を時系列でまとめた防災計画を意味することもある。

日々の紙面を「タイムライン」で

 では、日本はどうか。残念ながら、日本政府の公式タイムラインはいまだに存在しない。発生国の海を挟んだ隣に位置し、世界で3番目に感染が確認された国で、横浜港のクルーズ船感染など世界の先例となる出来事もあった。ここまで時間が経過した後に初動からのタイムラインを公表したとしても、文言修正や検証と称した「答え合わせ」をした後のデータになってしまい、本来の目的からずれたものになってしまう。

 だが、日々の出来事をその時々の価値観や重要度で記録し、公開してきたものは日本にもある。新聞だ。新聞はその日に刷られるので、発行後は調整や修正のしようがない。これを生かし、我々なりに「日本版タイムライン」を作れないか。これが本書の出発点であった。

10万の関連記事から厳選

 新聞にはニュースだけでなく、日々の出来事としては切り取れないような分析やわかりやすい解説、社会の諸様相に関する問題提起など様々な情報が網羅されている。それもまた重要なセールスポイントではあるが、2020年の1年間だけで全国・地域版合わせて10万ものコロナ関連記事がある中で、すべてを1冊にまとめるのは無理がある。今回は、タイムラインとしての記事活用に重点を置くことにした。将来の国際的な全文検索や電子化も念頭に、書名には英語の副題も付け、引用文献・注釈欄には引用元の欧語や中国語を入れた。

 本書冒頭の出来事一覧を見るだけでも多くのことがわかる。流行は世界中に拡散し、想定もしていなかった事態を次々と派生させた。新たな言葉が次々と現れては、やがて見出しに定着していく。序盤は「〇〇は初めて」が目立つが、中盤以降は感染者数や死者数などが「〇〇人を超えた」というニュースに置き換わり、その間隔も狭まってゆく。それでも、多少のことでは驚かなくなった。

非日常が日常に至るまでを詳細に

『報道記録 新型コロナウイルス感染症』目次
『報道記録 新型コロナウイルス感染症』目次

 読売新聞の全国・地域版に掲載されているコロナ関連記事の数は2020年4、5月をピークに、その後は多少変動しながらも減少した。コロナ禍での様々な出来事がニュース(非日常)ではなくなり、次第に日常化した結果とみることもできる。

 確かに、マスクを着け、アクリル板に囲まれ、その日の新規感染者数を知る暮らしにもすっかり慣れた。つまるところ、本書の記録というのは政府や海外の話のようで、実は私たちが1年余り経験してきた日々の変化そのものなのだ。

 残念なことに、その変化があまりに急速で編集が追いつかず、21年に入ってからの出来事や続報をかなり積み残してしまった。本書で扱いきれなかった内容については、本紙や調査研究本部のオピニオン誌「読売クオータリー」、電子版の「読売新聞オンライン」を通じ、今後も情報発信を続けようと思う。

(本書あとがきを一部改稿)  

【随時更新、最新情報】新型コロナ、今なにをすべきか~正しい情報で正しい行動を~は こちら

感染症医療を戦略的体制に…新型コロナ「平時」と「有事」で病床を転換【読売新聞社提言】の全文は こちら から

yomiDr. 「本ヨミドク堂」コラム

【動画】報道記録から展望する「新型コロナウイルス感染症」読売Bizフォーラムオンラインゼミ

   

【音声解説】ラジオ日本 よみラジ「コロナ禍を記録する、日本版タイムラインの重要性」(2021年7月5日放送) ポットキャスト版

本のご意見、ご感想を読売新聞調査研究本部 choken@yomiuri.com までお寄せください。今後の報道記録(タイムライン)作成の参考にさせていただきます。

 「報道記録 新型コロナウイルス感染症」が6月9日、発売されました。パンデミックの実像を後世に伝えるため、本誌掲載の記事や提言に書き下ろしの論考や説明を加え、時系列で再構成しました。写真や図表も充実。A5判、468ページ、カラー口絵付き。2200円(税込み)。



    

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2111138 0 NEWS特集 2021/06/09 09:58:00 2021/07/21 10:38:47 2021/07/21 10:38:47 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210607-OYT8I50043-T.jpg?type=thumbnail

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