パンデミック条約制定へ 教訓と課題

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POINT
■5月の世界保健総会(WHO年次総会)で、WHOや各国のコロナ対応を検証した報告書が三つの組織から提出された。

■その一つ、「パンデミックの備えと対応に関する独立パネル」の報告書は、世界的な保健脅威に対処する国連の理事会設置と枠組み条約の制定を勧告した。

■独立パネルには中国のコロナ対策専門家チームのトップが参加し、報告書には中国の初動に対する責任追及などの踏み込みが足りず、不可解な箇所もある。

■条約は、もともと欧州連合(EU)が主導した動きだった。依然として中国に厳しい姿勢を崩さない米国などがどのような態度を取るか、注目される。

調査研究本部主任研究員 笹沢教一 

 新型コロナウイルス感染症は発生から1年半が経過した。切り札と期待されるワクチン接種で出遅れた日本でも、医療従事者や高齢者らへの優先接種に続いて職域接種が始まり、世界的に見れば、いまだ地域などの格差はあるものの接種は着実に進んでいる。一方、英コーンウォールで6月11~13日に開かれた先進7か国(G7)首脳会議は、最終日の首脳宣言で「2022年中のパンデミック終息」を目標に設定した。まだ先は長い。

デジタル化と新「流通革命」
新型コロナウイルスワクチンを接種する日本航空の客室乗務員 羽田空港で(21年6月14日撮影)
新型コロナウイルスワクチンを接種する日本航空の客室乗務員 羽田空港で(21年6月14日撮影)

 こうした中、5月24日から1週間にわたってリモート開催された世界保健総会(WHO年次総会)では、今回のコロナ禍を教訓に、国連傘下の理事会の設置、「パンデミック条約」の制定、WHOの抜本改革――などの国際保健体制の再建案が勧告された。今秋から国連やWHOで議論が始まる見通しだが、次の「波」や変異ウイルスの流行などの不確定な要因もあり、欧州主導のこうした動きに対して、米国や中国がどのような態度を取るかも気になる。

失われた2月

 報告書を提出したのは、1年前の総会で設置が決議された「独立パネル」、既設の制度に基づく「国際保健規則(IHR)再検討委員会」と「WHO緊急保健プログラム独立監視諮問委員会(IOAC)」の3組織だ。

 5月31日に全会一致で採択された総会の決議は、「緊急保健の備えと対応に関する作業部会」を設置して、3組織の報告書で指摘された問題点や勧告について検討するようWHO側に求めた。決議は、日本など30か国・地域が共同提案した。

 提出された中で最も注目を集めたのが独立パネルの報告書だ。ほかの二つの報告書とも多くの部分で内容が共通しているが、再検討委はIHRに、IOACはWHOのプログラムにそれぞれ重点を置いているのに対し、パネルは世界全体のコロナ対応を包括的に検証している。本稿は、パネルの報告書を中心に論考を進めたい。

 「COVID‐19:Make it the Last Pandemic(新型コロナ:最後のパンデミックに)」と題した5月12日付の報告書は、2019年末から20年初めにかけての初動の検証に多くのページを割いている。

 WHOは1月30日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言したが、その1週間前にもPHEICを判断する緊急委員会を開催しながら宣言を見送った。報告書は「パネルの見解としては、武漢の流行は、20年1月22日の緊急委員会の最初の会議までに宣言の基準を満たしていた可能性が高い」と判断の遅れを批判した。

 各国に対しても、「PHEICが現行制度で最も重大な警告であるにもかかわらず、多くの国が脅威を十分に理解しておらず、どう対処したらよいかわかっていなかった」と指摘。テドロス・アダノムWHO事務局長が3月11日に改めて、「パンデミック(世界的な大流行)」との見解を発表して世界に警告し直すことになり、その間の2月が、流行封じ込めの機会を逃した「失われた月」になったと断じた。WHO、各国とも、「初期対応の緊急性と有効性が欠けていた」と総括している。

 余談にはなるが、PHEICのフェイクという呼び方について、再検討委の報告書は、「IHRの法文にそのような略称は示されておらず、偽物(fake)と同じ発音であるため、代替の略称を検討する必要がある」と述べ、emergency(緊急事態)のEをEMにしたPHEMIC(フェミック)を代案として示した。

 パネル報告書は、財力のある国がワクチンの抱え込みに走り、分配に不平等を招く「ワクチン・ナショナリズム」についても触れた。一部の高所得国が自国民をまかなうのに十分な量の確保を可能にした一方で、ワクチンを独自に調達できない中・低所得国にも公平に分配するCOVAXが供給不安に苦悩し続けていることを挙げ、「我々はCOVID‐19が不平等と不公平のパンデミックだったことに留意している」とした。

 肯定的に評価した点もあり、4月24日に欧州主導で発足した治療薬、ワクチン、検査手段の普及支援制度「ACTアクセラレーター」については「それまでになかった仕組みで、多くの点で成功したプラットフォームを確立できた」と強調した。先述のCOVAXは、この制度のワクチン部門である。

 WHOが17年に導入したネット上のニュースやSNSなどの公開情報から流行の兆候となる情報を検知するシステム(EIOS)(注5)は、IHRの通報制度よりも速く情報が得られると評価し、さらなる拡充を提言している。16年から本格化したPHEIC時に学術論文を査読前の段階でオンラインに即時公開する制度についても、迅速な情報共有への貢献を評価している。

保健脅威理事会とパンデミック条約

 こうした検証結果を踏まえ、報告書は7項目にわたる勧告を行っている。

 まず、「地球規模の保健脅威に備えた指導力の強化」として、国連やWHOの指導力・調整能力を高める仕組みとして、国連総会決議に基づく「地球規模保健脅威理事会」の設置と「パンデミック枠組み条約」の制定を求めた。

 理事会は加盟国の代表によって構成され、PHEICが宣言されるような保健緊急事態の際に、専門機関の壁を超えて国連横断的に機能する。WHOが設定した対処方針や科学的エビデンス(根拠)、国際法の枠組みに照らして各国の対応を監督する役目を担う。設置に向けた議論や手続きは、9月からの次会期の国連総会に委ねられた。

 条約はIHRの機能を補完し、政府や専門家、市民社会による協力を明確にするものと位置づけられる。半年以内の採択という目標時期を設け、11月29日に再招集される世界保健総会の特別セッションで議論が進められる。条約の採択には、WHO加盟国の3分の2以上の賛同が必要となる。

 もともとパンデミックに備えた条約の制定は、20年11月11~13日に開催された「第3回パリ平和フォーラム」で、シャルル・ミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)が提案している。

 21年3月30日には、ミシェル議長とテドロス事務局長のほか、ジョンソン英首相、マクロン仏大統領、メルケル独首相、文在寅韓国大統領ら26か国の首脳が署名者に加わり、「パンデミックの予防と備えに関する国際条約」の制定を求める緊急共同文書が発表された。日本、米国、中国などは参加していない。

 独立パネルと条約を求める国々とは直接関係がないが、勧告された枠組み条約が一連の動きを踏まえたものであることは明らかだ。欧州理事会は、11月の特別セッション開始の決定を受け、「条約は地球規模のヘルス・セキュリティー(保健安全保障)の強化につながる」と歓迎する談話を発表した。

 条約については、再検討委の報告書も先の緊急共同文書を引用する形で「利点を検討する必要がある」と支持した。パネルが目標時期の設定や手続きについての言及にとどまったのに対し、再検討委は、総会で議論する場合の論点も示した。

 IHRには義務を履行しなくても何の制裁も罰則もなかった教訓から、「コンプライアンス(法令順守)違反に対する制裁」や「強い紛争解決プロセス」の導入を挙げた。さらに、「野生生物や家畜からの人獣共通感染症の流出を想定した内容になるため、生物多様性や絶滅危惧種などの取引に関する環境条約との調整が必要になる」との見解を示した。各国の自主的な批准が必要な「条約」とすべきか、加盟国が拒否しない限り自動的に拘束されるIHRのような「規則」とすべきかの考察も行っている。

 IOACも報告書や5月25日に発表した声明で条約を支持する姿勢を示した。

 パネル報告書の勧告はこのほか、将来のパンデミックに備え、ワクチンや治療薬の開発支援などにつながる資金調達能力の確保を求めた。最大1000億ドル(約11兆円)を機動的に拠出できる仕組みが必要になるとしている。

 WHOの権限や独立性の強化として、現在、1期5年で2期まで務められる事務局長の任期を続投なしの1期7年に改めることも勧告した。続投への配慮などのしがらみを生まないようにし、利害を伴う改革をやりやすくする意味がある。

 やや専門的になるが、勧告とは別に、WHOと世界貿易機関(WTO)に対し、主要なワクチン製造国とメーカーから、新型コロナワクチンについての自主的なライセンス供与と技術移転の合意を得ることも提言した。3か月以内に結論が出ない場合は、「知的財産権に関する協定(TRIPS協定)」の権利放棄を適用して、より多くの国での生産を可能にするよう求めている。

中国の初動は総括しないのか

 ただ、パネルの報告書には疑問点や不可解な要素もかなりある。

 WHOがPHEICを宣言した際に「渡航制限を推奨しない」と各国に求めたことについては、文中での言及にとどめ、批判にも見直しにも踏み込まなかった。当時、多くの国が反発し、これに従わずに渡航制限の強化に踏み切った。コロナ対応を巡る議論で必ず出てくる問題点だ。

 「推奨しない」としたのは、IHRが前身の国際衛生規則(1951年)やその前の国際衛生条約(1892年)の時代から、過度な制限で交通や貿易を不必要に妨げないことを主たる目的としてきたという歴史的経緯のためでもある。それでも、再検討委の報告書では、「不必要に妨げない」という前提を「多くの国が合意できる現実的な形」に見直すよう求めている。グローバル化が急速に進む中で今回の事態が起きたわけで、パネルもこの矛盾をどう扱うべきか、判断を示すべきではなかったのか。

 さらに気になるのは、中国の扱いだ。世界中の国々の対応にまで対象を広げて批判を展開したのに、明らかに初動対応に疑問のある中国に対する個別の批判や問題提起はなかった。台湾の総会へのオブザーバー参加が17年から認められないことについての言及もなかった。

 21年1月19日のWHO執行理事会に提出されたパネルの第2次進捗報告(注6)は、「中国の保健当局は1月にもっと強力な対策を取れていたはずだ」との見解を載せていたが、5月12日の報告書にこのような箇所はなかった。

 独立パネルには、中国政府の専門家チームを率いる呼吸器専門医の氏が参加している。20年1月20日に、それまで中国当局が明言を避けていた「人から人」の感染を国営メディアに対して初めて認めた人物だ。逆に言えば、初動の核心にあたる部分を知る立場でもある。

 13人のパネルメンバーの中には、公衆衛生の専門家や国境なき医師団からの参加者など医師は他にもいるが、コロナの医療現場に携わった専門医としては唯一と言っていい。検証内容の医学的な判断は鍾氏以外にはできなかったのではないか。

 パネルは、20年5月の世界保健総会で採択された「公平で独立した包括的な評価」を求める決議に基づき、7月に設置された。検証される当事者中の当事者とも言える人物が検証する側にいて、公平性や独立性は担保されるのだろうか。

 パネルの共同座長は、ニュージーランド元首相のヘレン・クラーク氏と、2011年にノーベル平和賞を受賞したリベリア元大統領のエレン・サーリーフ氏が務め、2人がほかの委員を選任した。今回の流行で緊急的に設置された組織とは言え、「公平、独立、包括的」を掲げる以上、透明性を確保した上で厳格で慎重な人選がなされるべきだった。一連の対応に一定のスピード感はあったかもしれないが、いつの間にか人選がなされ、いつの間にか調査も終わっていたような印象だ。

 クラーク氏は5月12日の記者会見で、「中国の対応には明らかに遅れがあったが、遅れはあちこちで起きていた」と反論した。何かを言っているようで、報告書で触れなかったことを正当化したに過ぎない。これ自体が想定内で、ここで答えることで報道陣に対するガス抜きをしたようにも見える。

 米ジョージタウン大学のローレンス・ゴスティン教授は報告書を受け、「武漢での流行発生の報告が著しく遅れ、その発生源を探すWHOの調査は妨害されたにもかかわらず、パネルは(中国)政府に何の説明責任も求めなかった」と批判する論説(注7)を自身が所長を務める同大国家・国際保健法研究所のサイトに投稿した。

消えた不履行の事実

 報告書は、初動時の事実関係の検証結果として、

<1>12月30日午後に武漢市衛生健康委員会が医療関係者向けに謎の肺炎に関する報告要請(1回目)と対応指示(2回目)の「緊急通知」を発令

<2>翌31日午前に中国の非国営メディアが緊急通知について報道

<3>世界保健機関(WHO)のEIOSが報道を検知

<4>武漢衛健委が一般向けの「情況通報」を公式サイトに掲載

<5>中国にあるWHO国事務所が情況通報の内容をWHO西太平洋地域事務局に通報

という時系列を概略的に示している。

 筆者が過去1年にわたり、本誌で繰り返し示してきた事実関係と同じもので(注8、9)、WHO側のこれまでの発表内容とも一致する。

 ここで言えるのは、謎の肺炎発生について、中国がWHOには直接通報しておらず、WHO側が自身のシステムであるEIOSによって武漢当局の公式発表以前に謎の肺炎流行を検知していたことだ。

 IHR第6条は、PHEICにつながる事象が発生した国に対し、基準に基づいて評価した上で24時間以内にWHOの連絡窓口(地域事務局)に通報するよう義務付けている。これだけのパンデミックの発端を中国側が自主的にWHOに通報できなかったことになり、明らかな対応遅れと言えるが、では、どの時点で評価や通報をしていればよかったのかがはっきりしない。この1点だけで、中国がIHRの義務を怠ったとは断言できない。

 一方で、1月に入ってからの経緯について、報告書は過去の当局発表などにない新たな要素を加えている。

 これまでWHO本部での記者会見(注10)や、WHO西太平洋地域事務局の公式時系列(注11)では、「1月1日、WHOが中国に対し、IHRの義務としての検証を公式に要請した」としている。検証要請への回答も24時間以内と義務付けられているが、中国が回答したのは3日だった。これは年末と異なり、起点がはっきりしているので、中国が義務を履行しなかったことが明確だ。再検討委も21年1月12日の報告書では「1日に検証を要請し、3日に回答を得た」と明記し、「24時間を超えた遅延の一つ」と指摘している。

 しかし、パネルの報告書は「WHOが1日に公式な情報提供を要請、3日にIHR第10条に基づく検証を要請した」とした。1日の「公式な要請」とは別に、3日に改めて検証要請をしたというのは、に落ちない。出典は明記されていない。1週前に出た再検討委とIOACの報告書にも書かれていない新事実だ。

 パネルは調査にあたって、多くの関係者に聴取を実施している。こうした中で判明した事実なのだろうか。こうなると、検証要請に関する義務履行違反はなかったことになる。

 これまで1年以上にわたり、何の変更も訂正もなかった重要な事実関係が、こんなにあっさり修正されるのには違和感がある。複数の公式の文書で言及されている事柄を否定する以上、きちんとしたエビデンスを示すべきではないか。これで中国の初動対応への不信がされるわけではないが、明らかなクロがグレーにまで後退する変更だ。WHOの公式見解は今のところないが、この事実が報告書に反映された経緯が不可解で、この情報の扱いには慎重にならざるを得ない。

 細かいことになるが、報告書にはほかにも気になる点がある。

緊急通知の流出をきっかけに取材し、武漢で原因不明の肺炎が相次いでいることを伝える中国・新浪サイトの記事。配信元の名前と元の見出しを示す箇所(四角で囲った部分)が上側に確認できる
緊急通知の流出をきっかけに取材し、武漢で原因不明の肺炎が相次いでいることを伝える中国・新浪サイトの記事。配信元の名前と元の見出しを示す箇所(四角で囲った部分)が上側に確認できる

 中国の非国営メディアが報じたことに言及したのはいいが、経済ニュース大手の「新浪」だけが最初に報じたことになっている。これは正確ではない。

実際の新浪の記事を見ればわかることだが、ニュースポータルの新浪が「第一財経」(一財網)の記事を配信したにすぎない。いわば、読売新聞の記事なのに、それを載せたヤフーニュースが報じたと紹介されているのと似たようなものだ。写真を見れば、漢字で配信元のロゴや元の見出しを示した箇所があるのがわかる。配信元の第一財経のサイト(注12)を見てみると、見出しの冒頭に「特ダネ」を意味する「独家」の文字までが見える。書いた側からすれば、報告書のこの扱いは心外だろう。ここの部分の記述は、漢字が読めない人がURLなどからわずかに読み取れる英文をおそるおそるコピー・アンド・ペーストしたとしか考えられない。要するに、検証の肝となる最初の1点までたどる調査ができていないのである。

議論の行方はどうなるか

 秋からは国連とWHOで、パネルが勧告した理事会設置や条約制定が議論される。ジュネーブ国際開発高等研究所の研究者チームは5月20日、「警告と放棄の悪循環に陥る前にわずかなチャンスがある」と、こうした場での前向きな議論を期待する論文(注13)をスイス公共放送協会の電子版に投稿した。確かにそうだが、このように様々な疑問や不可解な箇所がある報告書の勧告を、小異を捨てて大同に就くような形で受け入れることができるのか。

 報告書が踏み込めなかった中国の責任追及はどうなるのか。対中批判の姿勢を崩さない米国の動向が気になる。責めるだけならたやすいが、これで対立が起きれば、国際保健体制の再建を目指す動きに水を差すことになる。

 総会の最中の5月26日、米バイデン政権は、情報当局に新型コロナウイルスの発生源に関する追加調査を行い、90日以内に結果を報告するよう指示したと発表した。バイデン大統領は、コウモリなどからの自然感染と武漢ウイルス研究所からの流出の二つの可能性について調べるよう情報当局に指示したとされる(注14)。

WHOの国際調査団を乗せた車が武漢ウイルス研究所に入るところ(21年2月3日撮影)
WHOの国際調査団を乗せた車が武漢ウイルス研究所に入るところ(21年2月3日撮影)

 流行の「初期」の経緯は、報道や当局発表などリアルタイムの記録をたどることで実証できるが、それでも本稿が示したように不可解な検証結果が後になって出てくることがある。流行が表面化する前では公開の情報もなく、今となっては時間が経過して試料なども失われているから、武漢ウイルス研究所の疑惑追及はなおさら難しい。WHOは「研究所からの流出は極めてあり得ない」という報告書をまとめている(注15)。

 このタイミングでバイデン政権が発表すること自体、政治的なメッセージとも取れる。コロナを巡る中国の責任追及に関して、バイデン政権は前トランプ政権とさほど変わらない主張をしていることになる。状況次第ではうやむやになる可能性もあるが、追加調査の結果がどんなものになるのか注視したい。

 EU離脱でほかの加盟国との関係が一時ぎくしゃくした英国は、条約の動きに関してはEUと歩調を合わせている。ここまで中国に寛容な報告書の勧告なのだから、中国も同調することになるだろう。新興感染症のパンデミックは気候変動や環境、格差などの地球規模課題と不可分の関係にあり、この条約は、これまでの保健・公衆衛生系の国際法とは一線を画す大きな話題となる可能性がある。条約制定は容易な話ではなく、このまま欧州主導で突き進むかも見通せないが、うまく結実させれば、それこそ「ノーベル賞もの」である。コロナ後の世界秩序にも少なからぬ影響を及ぼすことにもなるはずだ。

注釈
(注1)独立パネルの英略称は、20年7月の設置時点にはIPPRだったが、現在はIndependent Panel for Pandemic Preparedness and Responseのすべての単語から頭文字をとったIPPPRに変わった。
(注2)The Independent Panel for Pandemic Preparedness and Response(IPPPR).(12 May 2021)COVID-19:Make it the Last Pandemic.Retrieved June 17,2021,from https://theindependentpanel.org/wp-content/uploads/2021/05/COVID-19-Make-it-the-Last-Pandemic_final.pdf
(注3)Independent Oversight Advisory Committee(IOAC).(5 May 2021)Report of the independent oversight and advisory committee for the WHO health emergencies programme.Retrieved June 17,2021,from https://cdn.who.int/media/docs/default-source/dco/independent-oversight-and-advisory-committee/a74_16_e.pdf
(注4)The Review Committee on the Functioning of the International Health Regulations(2005)during the COVID-19 Response.(5 May 2021)WHO’s work in health emergencies,Strengthening preparedness for health emergencies:implementation of the International Health Regulations(2005).Retrieved June 17,2021,from https://apps.who.int/gb/ebwha/pdf_files/WHA74/A74_9Add1-en.pdf
(注5)Epidemic Intelligence from Open Sources(公開情報からの流行病インテリジェンス)
(注6)IPPPR.(2021)Second report on progress.June 17,2021,from https://theindependentpanel.org/wp-content/uploads/2021/01/Independent-Panel_Second-Report-on-Progress_Final-15-Jan-2021.pdf
(注7)Gostin,L.(11 May 2021)Analysing the COVID-19:Make it the Last Pandemic Report.June 17,2021,from https://oneill.law.georgetown.edu/analysing-the-covid-19-make-it-the-last-pandemic-report/
(注8)笹沢教一(2020)「検証 国際保健体制は機能したか」読売クオータリー55号(読売新聞東京本社調査研究本部)
(注9)笹沢教一(2020)「コロナ対策 国際協調は築けたか」読売クオータリー56号(読売新聞東京本社調査研究本部)
(注10)World Health Organization(WHO).(20 April 2020)COVID-19 virtual press conference.June 17,2021,from https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/transcripts/who-audio-emergencies-coronavirus-press-conference-20apr2020.pdf
(注11)WHO Regional Office for Western Pacific.(18 May 2020)COVID-19 timeline in the Western Pacific.Retrieved June 17,2021,from https://reliefweb.int/report/world/covid-19-timeline-western-pacific
(注12)『第一財経』2019年12月31日 Retrieved June 17,2021,from https://www.yicai.com/news/100451932.html
(注13)Gill,A.,Yap,P.and Snene,M.(20 May 2021)The case for a high-tech pandemic surveillance and response scheme.Retrieved June 17,2021,from https://www.swissinfo.ch/eng/politics/the-case-for-a-high-tech-pandemic-surveillance-and-response-scheme/46631660
(注14)『読売新聞』2021年5月27日朝刊3頁
(注15)WHO.(30 March 2021)WHO-convened Global Study of Origins of SARS-CoV-2:China Part.Retrieved June 17,2021,from https://www.who.int/publications/i/item/who-convened-global-study-of-origins-of-sars-cov-2-china-part

※この論考は調査研究本部が発行する「読売クオータリー」掲載されたものです。読売クオータリーにはほかにも関連記事や注目の論考を多数収載しています。最新号の内容やこれまでに掲載された記事・論考の一覧は こちら にまとめています。
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