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若者の投票行動につながるか 同友会フォーラムで紹介された「政治参加サイト」

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POINT
■次回衆院選で注目すべき点のひとつに「10歳代の投票率がどうなるか」がある。若者の投票率が低いと、将来は全有権者の投票率が下がる懸念がある。日本の民主主義にとっては大きな問題となりかねず、その数字は日本の将来を占う試金石といっても過言ではない。

■ネットを通じて政治家とやり取りができるサイト「PoliPoli(ポリポリ)」が経済同友会のフォーラムで紹介された。若者の政治参加を促すツールとして期待される。

■しかし、若者の投票率向上につなげるには、選挙区の有権者とのつながりを強めること、参加する政治家側へのインセンティブを高めることなど、解決すべき課題がある。

調査研究本部主任研究員 舟槻格致 

次期衆院選の本当の焦点は?

写真はイメージです
写真はイメージです

 衆院解散・総選挙が間近に迫ってきた。注目されるのは「菅政権vs野党」の対決ばかりではない。若者の政治参加と投票率がどうなるか――このことは、日本の将来を見据えれば、選挙結果に劣らぬ重要な焦点ではないだろうか。

 次回の衆院選は、18歳以上に投票権が与えられた衆院選としては、2017年の前回に次ぎ2度目となる。前回の18、19歳の投票率は40.49%だった。全体の53.68%を下回ったものの、20歳代の33.85%を上回り、若年層の政治参加を考える上で、明るい兆しがわずかながら見える結果となった。

 日本の選挙では一般的に、年齢層が上がると投票率も上がる「加齢効果」がみられる、とされる。高齢者の方が積極的に政治参加することで、子育て世代よりもお年寄り向けの政策が優先される政治は「シルバー・デモクラシー」とも揶揄(やゆ)されてきた。前回の投票率を見る限り、そんな傾向にストップがかかることも期待できそうだが、若者の政治参加が定着していくかどうかは、次回の結果を見ないことには分からない。

ネットで双方向の政策提言ができる「PoliPoli」

 若者にどうしたら政治への関心を高めてもらえるか――。

 国会議員と若者の間にそびえ立つ高い壁を突き崩す可能性を秘めたツールとして、永田町で注目が高まっているのが、「PoliPoli(ポリポリ)」というインターネットサイト(こちら)だ。

 3月にオンラインで開かれた経済同友会のオープン・フォーラム「未来選択につながる民主主義~若者の政治参画の向上に向けた社会の役割、メディア/デジタルの可能性~」では、サイトを運営する伊藤和真さん(慶応大4年)がこのサイトを紹介し、積極的に参加してほしいと呼びかけていた(オープン・フォーラムの動画はこちら)。

 PoliPoliでは、政治家が実現したい政策を示し、オンラインで有権者側に賛同を募ることができる。有権者側も政策の提案ができる。「国会議員に直接、自分の意見を伝えられる政治プラットフォーム」(伊藤さん)だ。

 仕組みは、こうだ。

 たとえば「家庭環境に関わらず、全ての子どもに学ぶ機会を」(自民党・長島昭久氏)という政策がPoliPoliにアップされ、具体的に、制服代や給食費の無償化、ひとり親家庭の支援といった内容が書き込まれる。すると、登録した有権者から「とても良いですね」「さらにこうしたらどうか」といった賛同、提案のコメントが寄せられる。

政策は、スライドなどを使って分かりやすく描かれているのが特色だ。まだ政治家が取り組んでいないような新しい政策も、「新しい政策リクエストを作成」のボタンを押して「こんなことで困っています」といった投稿ができる。

 長年、政治家と有権者との接点といえば、業界団体の代表などが公然と、時には隠密裏に行う「陳情」が中心だった。陳情は、直接政治家と面会することが前提となる。だが、こうしたオンライン上のサイトを利用する形なら、大会社や大組織、政治家の後援会などと無縁の若者でも、国会議員と直接、接点を持つことができる。政治家側も、学生時代からインターネットやパソコンのある環境で育ってきた「デジタルネイティブ世代」の若者たちに、じかに政策や人柄などを訴えることができ、“眠れる大票田”を掘り起こせるというメリットがある。政治家と若者の双方にとって「ウイン・ウイン」の関係ができるわけで、「政治はお年寄りが集まってやるもの」という偏見を払拭する可能性を秘めたサイトともいえる。

サイトで実現した新型コロナ対策も

 実際にPoliPoliに投稿され、実現した政策も少なくない。自民党副幹事長の木村弥生衆院議員が掲げた「コロナと闘う看護職に危険手当を!」という政策がその一例だ。

PoliPoliを操作する木村議員
PoliPoliを操作する木村議員

 自らも看護師である木村氏は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自由な政治活動もしづらい中、看護師の手当充実をPoliPoliにアップした。サイト参加者からは「意見に賛同です。危険な感染症と日々命がけで戦いながら、周りから『看護師なのだから』という理由だけで給付せずに放っておくのは…。やはり、月イチ(毎月)など継続的な給付をしてあげてほしい」(匿名ユーザー)といった声が寄せられた。

 当時は新型コロナ治療にあたる看護師には、診療報酬の上乗せなどが行われていたが、危険手当がつくことはなかった。しかし、木村氏は2020年4月、看護職に危険手当を支給する案を稲田朋美衆院議員とともに安倍首相(当時)に要望し、第2次補正予算で医療職や看護職、医療事務にも手当が付くことになった。

 木村氏は、PoliPoliで賛同を呼びかけたことについて、「コロナ禍で『ステイ・ホーム』を強いられ、有権者と接触が難しくなる中、自分の政策を伝えられる方法を探していた。サイトを頑張って運営している若い人たちを応援したいという気持ちもあった」と語る。

「Z世代」が政治参加を実感できる

 サイトを運営する伊藤さんは、「19歳の時に最初の衆院選があったが、『政治って、なんでこんなに遠いんだろう』と疑問に感じ、自分でプログラミングをしながらサービスをスタートさせた。『Z世代』と呼ばれる1990年代後半以降に生まれた若者は、環境問題への関心が高いとされるが、それが政治と結びついていない。若い人は『政治で何かが変わったという成功体験』がないので、諦めてしまっている」と語る。

 これまで永田町を縁遠いものと感じていた有権者がダイレクトに政治家とつながる方法があると思えれば、政治参加の実感は高まるだろうし、政治家にとっても若い有権者の声は、政策を進めるための勇気をくれるのではないだろうか。

利用拡大には課題も

 もちろん、国会を通じて政策を実現することは、それほど容易なことではない。特に、 若者が最初に考えたアイデアを国会議員が実現するのは簡単ではないようだ。学生がひねり出した新しい政策のほとんどは、すでに政党や霞が関が検討したが無理だったり、実現しかけても頓挫したりしたものだ。「思いつきの投稿も多く、精査が必要」(自民党衆院議員)になる。

 活発にサイトが利用されるには、国会議員側が選挙区の有権者とサイトを通じて結びつきを強めることができるかどうかもカギになる。比例代表選に出馬する職業団体や労組などの組織内候補にとっては、サイトを通じて得意分野の政策をアピールすることは集票活動にも有効となり得るが、より幅広い層の支持を集めなければ当選できない小選挙区の候補者にとっては十分な魅力があるとはいえない、との声もある。

投票しない若者は年をとっても投票しない?

 経済同友会のフォーラムでは、この他にも、スマートフォンやタブレットでのインターネット投票を認めることで若者の投票率を引き上げることを目指す森祐介・つくば市政策イノベーション部長の試みなど、若者の政治参加を導くための様々な案が示された。

 参院選では、初めて18歳以上に投票権が与えられた2016年の選挙では10歳代の投票率が46.78%と30歳代、20歳代を上回ったが、2度目の19年の選挙では32.28%で30歳代を下回り、20歳代の30.96%をかろうじて上回る数値まで落ち込んだ。「物珍しさ」がなくなった2度目以降こそが、正念場と言える。

 フォーラムに出席した東京工業大学の西田亮介准教授は、「年齢が上がるに従って投票率も上がっていくのでまあ良いという考えも従来はあったが、近年の投票行動に関する研究では、投票経験を持たない人は、年齢が上がっても投票に行かないことが指摘されている。どうやって若い人たちが政治に関心を向けられるようにするかが問題だ」と話している。

 次期衆院選では、各党や候補者が、若者にどのように参加を呼びかけ、若者がどう応じるだろうか。与野党の攻防以上に日本の将来を左右するであろう「もう一つの戦い」の行方に、注目していきたい。

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2090680 0 政治・選挙 2021/05/31 19:14:00 2021/05/31 19:14:00 2021/05/31 19:14:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210531-OYT8I50074-T.jpg?type=thumbnail

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