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米新政権と世界秩序 「核兵器の唯一の目的」を定めてよいのか

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POINT
■バイデン米新大統領は核兵器の「唯一の目的」は抑止と、核攻撃を受けた場合の報復であるとの持論を持つ。

■核攻撃を受けない限り核で報復しないという「先制不使用」宣言については、同盟国政府の多くが反対し警戒している。

■バイデン氏の発言からは、米国が核使用に抑制的な姿勢を示すことで核軍縮を主導していく狙いと、核抑止に配慮し軍縮条約を重視する姿勢がうかがえる。

■アジア情勢が厳しさを増す中、日本は安全保障上の脅威に対処しながら核軍縮を前進させる道筋を米新政権と協議するべきだ。

調査研究本部主任研究員 永田和男 

 米国のジョー・バイデン新大統領は自国の核兵器について「唯一の目的は核使用の抑止であるべきと確信している」と述べ、使用できる場面をきわめて限定的にとらえる姿勢が顕著だ。サイバーなど核以外の手段による攻撃にも対抗する狙いで「使える核」を模索したトランプ政権とは一線を画するが、先に核攻撃を受けない限りは核兵器を使用しない「先制不使用」の宣言につながらないかという懸念も米国内や日本を含む同盟国の間で生じている。アジアをはじめ世界各地域の情勢が厳しさを増す中、米新政権が打ち出す新たな核政策に注目が集まる。

「唯一の目的」

米モンタナ州のサイロに納まる大陸間弾道弾(ICBM)「ミニットマン3」(整備訓練用の実物=2009年1月8日撮影)
米モンタナ州のサイロに納まる大陸間弾道弾(ICBM)「ミニットマン3」(整備訓練用の実物=2009年1月8日撮影)

 「核兵器のない世界」をうたう歴史的な演説を行い2009年のノーベル平和賞を受賞したバラク・オバマ元大統領の政権で副大統領を務めていたバイデン氏が、ドナルド・トランプ氏の政権への交代をわずか9日後に控えていた17年1月11日に行った核政策を巡る演説が今、改めて注目を集めている(注1)。

 首都ワシントンの調査研究機関を会場にして行った演説でバイデン氏は「我々が持つ核以外の攻撃能力と今日の脅威の性質を考えれば、米国による核兵器の先制使用が必要となる、あるいは意味を持つという信頼性あるシナリオは考えにくい。オバマ大統領と私は、核以外の脅威を核以外の手段で抑止して米国と同盟国を守れると確信している」と述べた。そのうえでオバマ政権時代に通常兵器の能力向上が進んだことなどを挙げて、「核による攻撃を抑止し、必要なら報復することが米国の核兵器の唯一の目的(sole purpose)であるべきと確信している」と語って、核兵器が使われるのは米国と同盟国が核兵器で攻撃された場合の報復に限られるべきだと強調した。

 演説でバイデン氏は、オバマ政権が10年4月に発表した「核戦力体制見直し(NPR)」(注2)ですでに、核保有の目的を抑止だけにできる条件を作り出すことを約束していたと述べてその後の成果を強調。ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)締結やイランによる核開発制限合意、核テロ防止を目指す核安全サミットを主導した一方、通常兵器だけでなく核戦力と関連施設の安全性向上を目指す近代化にも着手したことで抑止力が十分確保され、米国と同盟国の安全保障を損なわずに核兵器への依存度を下げていけると説明した。

 20年大統領選に出馬したバイデン氏は同年春に発表した論文(注3)でもこの演説を取り上げ、「2017年に述べた通り私は、米国の核兵器は核攻撃を抑止し必要なら報復するのが唯一の目的であるべきと信じている。大統領になれば私はこの信条を実施に移す作業を、米軍と米国の同盟国との協議を通じて行っていく」と表明していた。

 「抑止が核兵器の唯一の目的」という考え方は、バイデン氏を大統領候補に選出した8月の民主党大会(新型コロナウイルスの感染拡大を受けてオンライン開催)で採択された政策綱領にも収録されたが、そこでもこの方針を政策に移すには「同盟国と軍との協議」を通じて行うと明記されていた。綱領はトランプ政権が掲げる新たな核兵器増強計画のことは「不必要、無駄であり擁護できない」と糾弾していた。

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1805670 0 国際・安全保障 2021/01/29 10:00:00 2021/02/04 14:43:54 2021/02/04 14:43:54 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210129-OYT8I50044-T.jpg?type=thumbnail

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