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米副大統領候補カマラ・ハリスの挑戦

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POINT
■11月投票の米大統領選では、トランプ大統領のコロナ感染や民主党候補ジョー・バイデン氏の年齢から、副大統領候補カマラ・ハリス上院議員に異例の注目が集まった。

■仮に当選すれば、バイデン氏は就任時、歴代最高齢の78歳。「バイデン大統領」に不測の事態があれば、「ハリス副大統領」が昇格する。

■ハリス氏は検察官上がり。組織をたばねる能力、巧みな演説力などが即戦力として期待され、大統領選でも存在感を示した。

■父はジャマイカ、母はインド出身の移民2世で、米史上初めて黒人女性が副大統領候補となった。果たしてハリス氏は「ガラスの天井」を破ることができるのか。

 新型コロナウイルスが猛威をふるう中、2020年の米大統領選が実施された。再選を目指す共和党のドナルド・トランプ大統領(74)本人もコロナに感染し、政権奪回を狙う民主党のジョー・バイデン候補(77)は高齢とあって、指導者の健康問題が浮上。副大統領候補にも異例の注目が集まった。大統領に不測の事態があれば、副大統領が職務を担うことになるからだ。殊に民主党候補のカマラ・ハリス上院議員(56)は、仮にバイデン氏が当選すれば、政権ナンバー2として初の黒人女性大統領への階段を上り始める。本稿執筆時点で結果は判明していないが、今回の大統領選で大きな存在感を示したハリス氏の足跡をたどる。

主任研究員 大内佐紀 

史上最注目のスペア討論会

米民主党大会で指名受諾演説するカマラ・ハリス氏(民主党ホームページのパソコン画面より)
米民主党大会で指名受諾演説するカマラ・ハリス氏(民主党ホームページのパソコン画面より)

 「あなたとドナルド・トランプ(大統領)は新型コロナウイルスの危険性を隠蔽(いんぺい)し、いまだコロナ対策の計画もない」「現政権の無策ゆえ、米国民は愛する人を失い、職を失い、辛酸をなめている」「外交の基本は、友人に対する約束を守り、敵を抑え込むことにある。ところがトランプは友人を裏切り、敵を抱擁する」―。

 西部ユタ州で10月7日夜、開催された副大統領候補テレビ討論会。コロナ対策のためのアクリル板を隔て、マイク・ペンス副大統領(61)と対峙(たいじ)したハリス氏は、トランプ政権を矢継ぎ早に批判。ペンス氏も、ハリス氏を危険な「リベラル派」とレッテル貼りするなど応戦した。

 討論会直後のCNNテレビの緊急世論調査では、ハリス氏が「勝った」と見た人は59%でペンス氏の38%を上回った。ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は、ハリス氏が「トランプ陣営に今後の攻撃材料を与えるような間違いをおかさず」、無難に乗り切ったと評価した。

 米市場調査会社ニールセンによると、全米にテレビ中継されたこの討論会を視聴した人は推計5790万人で、4年前の約3700万人を大きく上回った。目を覆うような罵倒合戦となり、「史上最悪」とされたトランプ氏とバイデン氏による9月29日の第1回テレビ討論会の約7300万人には及ばないものの、注目度は極めて高かったといえる。バイデン氏とトランプ氏の年齢に加え、10月1日にトランプ氏のコロナ感染が明らかになったことで、「大統領に何かあった場合、米国を率いることになる存在」として、ペンス、ハリス両氏の資質が問われたのだ。

大統領の3人に1人は副大統領経験者

米民主党大会で演説するジョー・バイデン前副大統領(民主党ホームページのパソコン画面より)
米民主党大会で演説するジョー・バイデン前副大統領(民主党ホームページのパソコン画面より)

 米国の副大統領は影が薄い。ボスである大統領を常に立て、その意向に従う。スポットライトは大統領や主要閣僚のためのもの。副大統領に回ってくる仕事は、得てして地味だ。陰の実力者と畏怖された、子ブッシュ政権時代のチェイニー副大統領は例外だ。

 しかし、副大統領の道は大統領に通じる。

 まず、米憲法は大統領が職務不能に陥れば副大統領が昇格すると定める。

 前例は9人いる。大統領が病死したため昇格したのが、1945年のハリー・トルーマンら4人。大統領暗殺のための昇格も、ジョン・ケネディ後のリンドン・ジョンソンら4人いる。残り1人は、ウォーターゲート事件のため辞任したリチャード・ニクソン氏の後任ジェラルド・フォード氏だ。

 歴代大統領はトランプ氏も含めて45人。このうちの9人というのは20%という高確率だ。

 さらに、大統領が任期を全うした場合でも、副大統領が希望すれば、党の次期大統領として極めて有力な候補となる。副大統領を経験した上で、選挙によって大統領に就任したのは、父ブッシュ氏など5人。つまり歴代計14人の大統領が副大統領経験者なのだ。おおむね3人に1人という計算だ。

 バイデン氏は、仮に勝利すれば来年1月20日の就任時には歴代最高齢の78歳。自らを、次の世代に橋渡しする「移行期の大統領」と宣言しており、24年の再選は目指さないとの見方が強い。しかも、「バイデン氏は心身共に不安を抱える」と執拗(しつよう)に追及してきたトランプ氏自身がコロナで緊急入院。「大統領の健康問題」と副大統領による昇格の可能性が有権者の前にわかりやすく提示された。

 「彼女は賢い。彼女はタフだ。彼女には経験がある」―。バイデン氏は8月12日、地元デラウェア州の高校体育館で、前日にハリス氏をランニング・メート(副大統領候補)に選んだ理由をこう語った。明晰(めいせき)な頭脳と鋭い舌鋒に加え、カリスマ性と見た目の良さにも恵まれたランニング・メートの「売り」として即戦力を強調したのは、「自分の次」を有権者が意識することを見込んでのことだろう。

移民の母の影響力

 ここでハリス氏の経歴を詳しく見てみよう。

 ハリス氏は、インド移民の母シャマラ・ゴパランさんと、ジャマイカ移民の父ドナルド・ハリス氏の間に1964年、カリフォルニア州オークランドに生まれた。2018年に記した自伝「The Truths We Hold(私たちが大事にする真実)」からは、ハリス氏が母親に大きな影響を受けたことがわかる。

 シャマラさんはインド南部マドラス(現チェンナイ)で生まれた。ニューデリーの大学を卒業した1958年、米カリフォルニア大バークレー校の大学院でがんの研究をするため19歳で単身、渡米した。

 折しも米国では公民権やベトナム戦争反対の運動がうねりのように起きていた。シャマラさんが、同じ大学で経済学を学ぶ将来の夫に出会ったのも、こうしたデモに参加中のことだ。2人はやがて結婚し、ハリス氏と、3年後には次女マヤ氏が生まれた。

 ところが2人はハリス氏が七つの時に離婚。シャマラさんは乳がん研究者として働きながら、2人の娘を一人で育てることになった。

 自伝からは、母と娘たちの緊密な絆がうかがえる。名門スタンフォード大教授(経済学)となった父の影は薄い。仕事のため帰宅が遅くなっても、料理好きの母は、「実験をするかのように、珍しい料理を作り」、台所で娘たちといろんな話をし、歌い、ジョークを言い合った。学業には厳しく、好成績を収めても「あなたは、やるべきことをしただけ」と褒めることはなかった。娘たちは「システム(体制)と戦い、それがより公平になるようにしなさい。過去の前例を自分の限界と思い込まず、進みなさい」と言われ続けたという。

 長女が、いずれ「黒人女性初」という経歴を重ねることを予想していたのだろうか。シャマラさんは、ハリス氏に「あなたは初の何かになるかもしれない。それが、最後にならないよう、気をつけなさい」と後進に道を開く大切さを説いた。

 シャマラさんは子宮がんのため2009年に亡くなる。娘たちを招いたレストランに、めったにしないおしゃれをして現れ、がんの告知を受けたことを伝えるなど気丈な人だったようだ。

 ハリス氏は今年8月の民主党大会での副大統領候補指名受諾演説でも、「今日の、この姿をママに見てもらいたかった」と天を見上げるなど、何度もシャマラさんの名を挙げた。

高校生で「未婚の母」の妹

 「法律は、物事を公平(フェア)にする道具となり得る」と、高校時代に法律家を志すようになったハリス氏は、歴史ある黒人向けの高等教育機関で、首都ワシントンにあるハワード大に進学する。この時期、一家にある事件が起きる。

 妹のマヤ氏が高校生だった17歳の時、妊娠し、未婚の母となったのだ。ロサンゼルス・タイムズ紙によると、学会のため出張することが多かったシャマラさんは、かねがね、娘たちの面倒を見てくれた友人に「変な虫がつかないようにしないと」と話していたが、心配が的中した形だ。母は4日間、泣き続けたという。

 幼い頃から2人だけで過ごすことが多かった姉妹は大の仲良しだ。同紙の取材に、姉妹ともマヤ氏の出産をめぐる状況についてのコメントを避けたが、ハリス氏がショックを受けたことは想像に難くない。

 ハリス氏は、大学院は西海岸に戻ってカリフォルニア大法科大学院に進み、マヤ氏と同居。(めい)ミーナさんのトイレのしつけも担ったという。

 高校生で未婚の母というと、その後、学業を続けるのが難しいというイメージがある。だが、マヤ氏は子育てをしながら大学院をスタンフォード大で修了し、弁護士となった。娘ミーナさんも弁護士だ。マヤ氏はテレビのコメンテーターとしても活躍、2016年の大統領選ではヒラリー・クリントン陣営に選対幹部として迎えられるなど、民主党内で一目置かれる存在だ。これまでの姉の選挙には、参謀として陣頭指揮する妹の姿が必ずあった。

やり手検察官

 ハリス氏は高校時代の夢をあっさり実現し、2度目の挑戦で司法試験に合格。1990年にカリフォルニア州アラメダ郡の地方検事補として検察官のキャリアをスタートさせる。

 優秀だったのだろう。8年後には、より規模が大きいサンフランシスコ地検に引き抜かれ、2003年には同地検のトップで公選の地方検事選に出馬、当選を果たす。さらに2010年にはカリフォルニア州司法長官選挙で勝利する。

 司法長官として、ハリス氏が最も熱心に取り組んだのは大手銀行による住宅の不当差し押さえへの対応だ。2008年のリーマン・ショックを受け、銀行が融資の回収を急ぐため、担保の住宅を不当に差し押さえることが続き、一大社会問題となっていた。

 この時、ハリス氏は盟友を得る。デラウェア州の司法長官として、同じ問題と戦っていたボー・バイデン氏だ。バイデン氏が自らの後継者にと期待をかけた、最愛の長男だ。意見交換と共闘から始まった2人の友情は、ボー氏が2015年に脳腫瘍で亡くなるまで続く。

 「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」運動により注目されるようになった警察改革や法執行の透明化については、この時代のハリス氏は消極的だった。警察・検察寄りの立場を譲らず、米国では微罪の麻薬所持などでのマイノリティー投獄を躊躇(ちゅうちょ)しなかった。

 次第に政治に関心を抱くようになったハリス氏に2015年、カリフォルニア州選出の女性上院議員バーバラ・ボクサー氏が翌年の選挙には出馬せず、引退するとの報が届く。いち早く出馬を決めたハリス氏は、34人が乱立した翌年の選挙を勝ち抜き、17年1月に、黒人女性として2人目、インド系としては初の上院議員となった。

 上院では司法など4委員会に所属。トランプ氏が最高裁判事に指名したブレット・カバノー氏の指名承認公聴会で過去のセクハラ疑惑に鋭く切り込む姿は全米にテレビ中継され、知名度が一躍上がり、「女性版オバマ」の異名を取った。

 プライベートでは、州司法長官時代の2014年、映画業界専門の弁護士で、ユダヤ系のダグラス・エムホフ氏と結婚した。ハリス氏の女友達がブラインド・デートをセットしたのがきっかけだ。再婚のエムホフ氏には1男1女がいて、ハリス氏はカマラとママ(mom)を組み合わせ、「ママラ」と呼ばれているという。結婚式では、エムホフ氏はインドの風習を踏襲して首に花飾りをかけ、ユダヤ教の伝統にのっとり、新郎新婦がワインを飲み干したグラスを足で踏み割るなど、文化の多様性を誇った。

 デートを勧められた時の心境について、ハリス氏は自伝で、「めんどうと思う気持ちと、ありがたいと思う気持ちが半々だった。公衆の目にさらされる立場にある、40歳代の働く女性にとって、誰かとデートすることは難しかった」「政治の世界で、独身女性は独身男性よりも好奇の目で見られる」と率直に振り返っている。

 「好奇の目」の背景には、検事補時代の恋人ウィリー・ブラウン氏の存在がありそうだ。カリフォルニア州議会議長やサンフランシスコ市長などを歴任し、州政界の立役者だったブラウン氏はハリス氏よりも30歳以上年長。長らく別居していたものの妻がおり、女性関係も派手だったことから、2人の関係も何かと取り沙汰された。別れた後も、ブラウン氏がハリス氏を後押しし続けたことも臆測に拍車をかけた。

消去法による選択

 今でこそ、「ジョー」「カマラ」と相手への信頼を前面に出す2人だが、実はハリス氏はバイデン氏の大本命ではなく、消去法で選ばれた副大統領候補だった。

 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、元上院議員や弁護士、世論調査の専門家からなる、バイデン陣営の副大統領選定チームが重視したのは、<1>バイデン氏と価値観を共有するか<2>共和党、特に口汚いトランプ氏による攻撃に耐えられる経歴の持ち主か<3>世論に好感されるか―の3点だ。

 ハリス氏は、これを軽くクリアした。価値観を見れば、左傾化が著しい民主党内で、ハリス氏はバイデン氏と同じく中道派に属す。格差是正の手法も企業増税などバイデン氏と共通項が多かった。対立陣営からの攻撃への耐性も実証済みだった。ハリス氏はカリフォルニア州司法長官選や上院選を勝ち抜いている。さらにハリス氏には、民主党が勝利するために必要な、黒人を中心としたマイノリティー票や女性票の掘り起こしが期待できた。バイデン氏よりも20歳以上若く、バイデン氏を敬遠しがちな若者世代に近い。

 だが、ハリス氏には大きな弱点があった。バイデン氏が最も信頼する2人の女性に警戒されていたのだ。ジル夫人と、長年バイデン氏の側近を務めてきた妹のバレリー・バイデン・オーエンズさんだ。2019年6月に実施された、民主党予備選候補者による第1回テレビ討論会で、ハリス氏が人種差別撤廃政策を巡って激しくバイデン氏をやり込め、一時期、「バイデン氏はもう終わった」と見なされるところまで追い詰めたのが原因とされる。

 ハリス氏がバイデン氏支持を表明したのも、他の民主党候補よりも遅く、今年3月のスーパーチューズデーで優勢が揺るがないことが確実になってからだった。

 バイデン氏が当初、「ウマが合う」と好感したのは経済政策のプロで大学生に人気が高い、党内左派のエリザベス・ウォーレン上院議員と激戦州ミシガンのグレッチェン・ウィットマー州知事だった。だが、ウォーレン氏は固辞。ウィットマー氏は「白人」という点で選定チームが除外した。

 バイデン氏は3月に「副大統領候補には女性を起用する」と言明していたが、5月に白人警官による黒人男性暴行死事件が起き、人種差別反対運動が全米に広がると、女性に加えて有色人種が望ましいという党内世論が急速に醸成された。

 その中で、バイデン氏の意向はオバマ政権時代に共に働き、気心が知れているスーザン・ライス元大統領補佐官(国家安全保障担当)に傾いたという。しかし、ライス氏はこれまで選挙の洗礼を受けたことがない。トランプ氏から予想される攻撃への対応力が未知数なのはマイナス点だ。

 イラク戦争従軍時に両足切断の大けがを負った、イリノイ州選出のタミー・ダックワース上院議員については、「最もバイデン氏を助ける経歴の持ち主」と選定チームの期待が高かった。ところが、ダックワース氏は米国人の父親とタイ人の母親との間に外国で生まれたことが問題視された。

 米憲法は、「アメリカで生まれたこと」を大統領の条件の一つと定める。副大統領候補とはいえ、トランプ陣営に攻撃材料を与えかねないと陣営は判断した。

野心的なプラグマティスト

 同紙によれば、バイデン陣営には、「ハリス氏は野心家過ぎる。バイデン氏をないがしろにして、自分が目立とうとするのではないか」という懸念もあった。

 最終的に、バイデン陣営の幹部がハリス氏と直談判。「ワンチームとして働けるか。今後、誰をスタッフに入れるかを含め、すべてバイデン氏の事前了承を得てもらう。この条件を()めるか。事前了承の対象には、最側近で実妹のマヤ氏も含める」と迫った。

 ハリス氏には、プラグマティストという評価もある。良く言えば、目標を達成するために柔軟に動く。悪く言えば、定見がない。例えば、「国民皆保険制度」の導入には反対の立場だったのに、予備選の段階では導入を容認するかのような発言もした。党内左派勢力への迎合と見られた。

 ハリス氏はバイデン陣営に対してもプラグマティストぶりを発揮し、条件を呑み、副大統領候補に決まった。8月17日の民主党大会開幕日まで1週間を切るタイミングだった。

ガラスの天井への挑戦

 ハリス氏は、女性としては3人目の副大統領候補だった。

 第1号は1984年の選挙時の民主党のジェラルディン・フェラーロ氏。後に駐日米大使となった、大統領候補のウォルター・モンデール氏が選んだ。人権派弁護士や判事として活躍後、下院議員を務めたフェラーロ氏は一時期、大旋風を巻き起こしたが、このコンビは歴史的大敗を喫した。

 次は2008年の選挙で、共和党のサラ・ペイリン氏がジョン・マケイン氏に選ばれた。アラスカ州知事のペイリン氏は、中絶や銃規制に反対で、当初、党内保守派から大いに好感された。しかし、北朝鮮を米国の同盟国と言い放つような政治音痴ぶりをさらけ出し、知事としての汚職疑惑も出て、次第にテレビのコメディー番組のネタになりはてた。このコンビも、大きく負けた。

 ハリス氏とやり手の法律家上がりの上院議員という点で共通するのは、前回16年の民主党大統領候補だったヒラリー・クリントン氏だろう。幼い頃から優秀な、できる女性というイメージが重なる。

 クリントン氏は、当初、政治経験ゼロのトランプ氏相手に勝利は確実とされながら涙を呑み、敗北演説の中で、「(女性の進出を阻む)ガラスの天井を打ち破ることはできなかった」と悔しさをにじませた。

 政敵にあだ名をつける癖のあるトランプ氏は、ハリス氏を「いかさま(Phony)カマラ」と呼んだ。トランプ氏が女性に向ける罵倒言葉の定番、「悪意ある(Nasty)」も、もれなく使った。「意地が悪い(Mean)」「気が狂った(Mad)」も多用し、「有能かもしれないが、意地の悪い女」を有権者に印象づけようとする狙いは明白だった。

 逆に、バイデン氏は「トランプ氏は能力が高い、強い女性には耐えられない」と、トランプ氏は女性蔑視(べっし)を重ねてきた、狭量な人間だとアピールした。

 正副大統領に女性がいないという米国史をハリス氏が変えられるのか。それも、今回の大統領選の一つの注目点だった。

 副大統領候補としても負ければ、再浮上は難しい。ハリス氏の大一番の勝負がどう出るか。米国社会の分断が広がり、米国というリーダーが背を向けた世界秩序が漂流し始める中、結果は彼女の将来だけではなく、米国全体、国際社会全体に影響を及ぼす。

米国で、どう人種が決まるか
 ハリス氏の母シャマラさんは、娘たちを黒人文化に触れさせ、黒人のバプティスト教会に通わせた。ハリス氏は「娘たちが黒人としてこの国で生きていくことになるとわかっていたからだろう」と振り返る。そして、自らのアイデンティティーを「黒人。インド系でもある。ベストはアメリカ人と言われること」とする。
 米国の国勢調査は、人種を白人、黒人、ヒスパニック・ラティーノ、アジア系、二つ以上の人種などに分類し、自己申告で決まる。肌の色や親族の出身地などに極端な違和感がなければ、そのまま受け入れられるという。
 ハリス氏の父親がアフリカではなく、ジャマイカ出身であることから、トランプ氏の長男ドナルド・ジュニア氏が「黒人度」を疑問視するようなツイートを投稿、その後、削除を余儀なくされた。カリブ海諸国にも黒人は居住し、中でもジャマイカでは人口の9割以上だ。
 テニスの大坂なおみ選手も、父親はカリブ海のハイチ出身の黒人。先の全米選手権やその前哨戦では、「一人の黒人女性」として、「ブラック・ライブズ・マター」運動への支持を表すTシャツやマスクを着用した。

●主な参考文献

Harris, Kamala, (2019), “The Truths We Hold” Penguin Random House.

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1612412 0 読売クオータリー 2020/11/10 05:00:00 2020/11/09 15:59:53 2020/11/09 15:59:53 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201106-OYT8I50085-T.jpg?type=thumbnail

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