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2004年度 ハンセン病撲滅へ尽力 笹川陽平氏

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笹川陽平・日本財団理事長
笹川陽平・日本財団理事長
インディラ・ナガー・コロニーでハンセン病患者に手を差しのべる笹川氏
インディラ・ナガー・コロニーでハンセン病患者に手を差しのべる笹川氏

 第11回読売国際協力賞は、ハンセン病撲滅のための医療活動支援などに献身している笹川陽平・世界保健機関(WHO)ハンセン病制圧特別大使(65)に決定した。笹川氏は自身が理事長を務める日本財団とともに、30年余にわたって途上国を中心に治療薬の無料配布や、活動のキャンペーンに従事してきた。

 笹川氏は毎年、患者発症率の高いインドやブラジルなど20か国以上の地方や辺地を訪れており、日本財団がこれまでWHOなどに寄せた撲滅運動資金は2億5000万ドル以上に上る。そのかいあって、05年の制圧目標年を前に、かつて1000万人を超えたハンセン病の患者数は約50万人に激減している。

笹川 陽平氏(ささかわ・ようへい)
 1939年東京都生まれ。明治大学卒。84~89年日本造船振興財団理事長。89年から日本財団理事長。ロシア友好勲章、ミレニアム・ガンジー賞、チェコ・ハベル大統領記念栄誉賞など受賞多数。

世界を奔走30年 薬無料配布資金提供も

 インド西部のジャルカンド州の州都・ランチ市から車で約1時間。人里離れた小高い丘の上に、社会から追われ、行き場を失ったハンセン病患者たちの集落「インディラ・ナガー・コロニー」があった。

 昨年3月、この集落を訪れた笹川氏は、患者たちの手をとっては、次々と声をかけ続けていた。

 「何か足りないものはありますか。元気出して」

 後遺症で両手が変形した女性は静かにうなずく。近づいてきた最長老の男性は「治療費がなくてこうなってしまった」と両手を差し出した。やはりすべての指が硬く固まっていた。

 「この病気は早く手当てすれば完全に治る。そのことを多くの人に知らせて、病気の理解が進むような社会運動を急いで起こしてほしい」。笹川氏は州当局の衛生担当官を訪ね、粘り強く訴えた。

 30年以上も続けてきたハンセン病制圧活動。その大半は、ハンセン病のまん延する国を訪ね、患者たちの声に耳を傾けては、各国政府のトップ、WHOの担当者に実情を訴える地道な活動に費やしてきた。理事長を務める日本財団からは、1995年から5年間、治療薬を全世界に無償で提供した。医療面からも多くの人々を救ってきた。

 海外での活動は年間3か月に及ぶ。インドは毎年3~5回は訪れる。ハンセン病に対する、差別の悲惨さを肌で感じており、活動の原点もそこにある。

 笹川氏をはじめとする関係者の努力が結実し、2003年の世界の患者数は、1985年のわずか1割(約50万人)にまで激減した。WHOは、ハンセン病患者を各国で1万人にひとり以下にすることを目標に掲げているが、未制圧の国も85年の122か国から、今やインドやネパールなど9か国までになった。

 「最後の1マイルに来ている。ファイナル・プログラムの最後の一歩のために、世界の力を結集したい。私はどんな力にでもなる」

 インドでの活動ぶりを同行取材した際、笹川氏はこの言葉を何度も口にした。みなぎる決意は、人々の心を動かし始めている。(科学部 安田幸一)

(2004年10月22日朝刊) 

笹川氏に聞く 「差別解決へ重責感じる」

――活動を改めて振り返っていただくと。

 笹川氏 ハンセン病の患者や回復した人たちは、社会から忘れられ、家族からも捨てられた存在です。だから彼らの声は、行政や政治家に届きにくい。私は、ハンセン病がまだ制圧されていない国々を何度も訪問し、各国の指導者に、患者たちの思いを繰り返し伝えてきました。

 その結果、指導者たちの意識も高まり、世界で最もハンセン病がまん延しているインドで、全国的にこの病気に対する理解が広まってきたと思います。

 ――ハンセン病の世界制圧のめどは。

 笹川氏 2005年までに患者を1万人にひとり以下にするのが当面の目標です。確実に実現しなくてはなりません。しかし、これで終わりではありません。ハンセン病には、本人が抱える病気と、偏見や差別といった社会が抱える病気という二つの側面があります。

 差別の問題については、国連人権委員会の小委員会が昨年、調査を始めることを全会一致で決めました。問題解決には、社会的運動として取り組んでいくしかないと感じています。

――差別を巡る世界の現状をどう見ていますか。

 笹川氏 ハンセン病患者は、国や民族、宗教を問わず、昔から世界で差別を受けてきました。日本では隔離政策の影響で、一般の人がハンセン病患者と触れ合う機会がなく、病気への理解が進みませんでしたが、今は報道される機会も多くなり急速に改善していると思います。

――現地の活動で一番印象に残っていることは。

 笹川氏 つらいことばかりですが、12、3歳の子供たちが薬を飲んで、ハンセン病の初期症状である皮膚の斑点程度で治って、元気にしている様子を見ると、こちらも元気が出ます。

――今後はどんな取り組みになりますか。

 笹川氏 WHOは、医学の問題を処理するところです。病気そのものを制圧すれば役割は終わります。ただ、残る差別の問題をどうするか。社会運動として取り組む適当な国際機関がありません。

 私たちは、病気撲滅と社会運動の両方をできる立場にあり、私自身の責任はさらに大きくなっていると感じています。高い目標を掲げて努力を結集する。社会的な波を起こす。私はこういう手法で今後も努力していこうと思っています。

ハンセン病  「らい菌」による慢性感染症。菌に感染すると、10年単位の潜伏期を経て皮膚に腫れやまだら模様が現れ、神経がまひし、手足に特有の変形が生じる。乳幼児期に感染者と濃厚に接触して感染すると考えられているが、感染力は弱いとされ、発症も極めてまれ。現在は、3種類の薬の服用で完治する。

(2004年10月22日朝刊) 

あいさつする笹川氏
あいさつする笹川氏

 第11回読売国際協力賞の授賞式が10月29日夜、東京・内幸町の帝国ホテルで行われ、笹川陽平・日本財団理事長(65)に、滝鼻卓雄・読売新聞東京本社代表取締役社長から賞状と副賞500万円が贈られた。

 世界保健機関(WHO)ハンセン病制圧特別大使を務める笹川理事長は、三十年間にわたって、インドなどを中心に治療薬の無料配布や差別解消のための社会活動の支援を続けている。 授賞式で笹川理事長は「全世界で、この病気と差別に闘っている人たちにも感謝したい」と語った。

(2004年10月30日朝刊) 






■選考委員 (敬称略)
浅尾新一郎(国際交流基金顧問)=座長
中川幸次(世界平和研究所副会長)
長尾立子(全国社会福祉協議会会長)
佐藤行雄(日本国際問題研究所理事長)
水上健也(読売新聞グループ本社議長)

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2049138 0 読売国際協力賞 2020/10/16 12:00:00 2020/10/16 12:00:00 2020/10/16 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210513-OYT8I50056-T.jpg?type=thumbnail

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