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読売国際会議 コロナ経済危機とデジタル革命 「コロナ後」新社会の創生【動画あり】

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 読売新聞と読売国際経済懇話会(YIES)は18日、読売国際会議2020春季フォーラム「コロナ経済危機とデジタル革命」をオンラインで配信した。年間テーマ「世界秩序の再生とイノベーション」を踏まえ、自民党の甘利明税制調査会長ら有識者3人が新型コロナウイルスの混乱からいかに日本経済・社会を脱却させ、「コロナ後」の時代に進むかなどについて討論した。(コーディネーター=黒川茂樹・調査研究本部主任研究員)

当日の動画

議論の模様は、読売新聞オンラインで読売新聞東京本社からライブ配信された=読売新聞ストリーム班撮影 2020年5月18日公開

 当日の動画はこちら


冒頭発言

官民で備え 耐性高く…自民党税制調査会長 甘利明氏

 新型コロナウイルスのような危機は周期的にやってくると覚悟した方がいい。現代社会が持つ脆弱性を洗い出し、今後に備えなければならない。

 「コロナ後」で大事なのは、社会をコロナ前の状態に戻すのではなく、進化させることだ。それは経済や社会活動をサイバー空間に移すことでもある。デジタル化によって産業構造を転換し、耐性の高い社会を創造していくことが重要だ。

 そのためには、リスクの分散が必要だ。コロナウイルスのように危機が周期的に襲来すると、民間経済がダメージを受けて、国家はパンクしてしまう。こうした事態を見据え、危機に備える「準備金」制度を作り、税制面で対応するなど、官と民でリスクを分散する仕組みが求められる。

 今回のコロナ禍では、世界に先駆けて経済が回復しつつある中国の国有企業やファンドが、体力の落ちた先進国企業を傘下に入れようとするとの懸念が出ている。デジタル化が進む中、自由と民主主義、法の支配という価値観を共有する西側諸国の連携をどう再構築するか。「コロナ後」の、新たなブレトンウッズ体制をいかにして構築するかが課題となるだろう。

 ブレトンウッズ体制 国際通貨基金(IMF)と世界銀行を中心とした第2次世界大戦  後の国際通貨・金融の枠組み。1944年7月、米ブレトンウッズで開いた連合国側の会議で決められた。事実上、米国主導で構築された国際経済秩序を指し、戦後の世界資本主義を機能させた。

 日本は機微技術の漏えい防止策が確立していない。「日本と組めば機微なデータや情報が全部、流出しかねない」という不安を同盟国に与えてはならない。

 現代社会において経済と安全保障は一体化している。サイバーテロ対策や、信頼に足る人だけが機微技術に接することができる「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を作らなければならない。「コロナの惨禍が次の進化につながった」と歴史を振り返って思えるようにしていくことが必要だ。

世界の構造変化加速…日本総研チェアマン・エメリタス 高橋進氏

 2020年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は2四半期連続のマイナス成長となった。インバウンド(訪日客)需要がなくなり、輸出が急減し、外出自粛で国内消費も落ちた。続く4~6月期も、リーマン・ショックを超える戦後最悪の落ち込みとなっても不思議ではない。

 大きな痛手を受けているのは飲食や宿泊、小売り、サービス、交通、不動産などで、製造業も受注が落ちている。日本も今後、雇用に影響が出てくるだろう。

 今後経済が回復するとしても、良くて(緩やかな)「U字型」、下手をすると、コロナウイルスの2次、3次の感染拡大でジグザグの「W字型」になるのではないか。元に戻るまで数年かかるとも言われる。世界各国でGDPの10%以上が蒸発する衝撃はとても大きい。日本政府は財政・金融政策から構造改革まで、あらゆるマクロ政策を総動員して対応に当たるべきだ。

 まずは患者の受け入れ態勢を強化する感染症対策だ。

そこから始めて、大きな打撃を受けている観光業などの中小企業の破綻しないようにする資金繰り支援や、大企業の資金調達を含めた金融不安の種を封じ込める必要がある。同様に労働者の支援も必要だ。需要を生み出す新たな成長戦略も求められる。

 コロナウイルスの襲来を受けた今、世界で起きている構造変化は加速するだろう。「世界は元には戻らない」という前提で日本も対応を考えなければならない。その一つはデジタル化の加速だ。例えば他者との間で一定の距離を保つソーシャル・ディスタンス(社会的距離)やサービスの非接触化は、デジタル化の推進につながる。日本はこの機会に、世界に追いつく必要がある。

 反グローバル化も加速するだろう。当面は人の往来が減少し、国内回帰が起きる。米国だけでなく自国第一主義が横行する危険性もある。

 最後に、米中摩擦の激化だ。日本が米国の同盟国であるという地位は変わらないだろうが、摩擦が激化する中で中国とどう向き合うのか、今まで以上に真剣に考えなければいけない。

政府への信頼感カギ…早稲田大教授 川本裕子氏

 今回のコロナ危機は世界各国が内向きになる中で発生し、「分断化」を加速させた。

日本は米中両国に次ぐ経済規模を維持し、割は一層重要になる。コロナウイルスの第2波の流行が起きる可能性はゼロにはならない。情報を素早く把握し、感染拡大を最小化し、感染者に十分な医療を提供できるかがカギを握る。これは保健・医療行政の中核の仕事で、政府が責任を有する。感染者が増えれば、経済にも負の効果が及ぶ。

 今回の教訓に学ぶため、私から3点申し上げたい。

 一つ目は、政府の実行力への信頼感だ。「ウイルス検査や医療体制が整備されている」と国民や企業が信じることができれば、経済活動回復のスピードは早まる。その結果、日本経済を支えるための巨額の財政負担の問題も、より期間を短縮できる。検査や医療体制の物的・人的投資がカギとなる。その中では工程表が大事だ。政府はこう考え、いつまでにこれを実施すると分かりやすく説明してほしい。

 日本はなぜ感染者が少ないのか、検査数やデータは信頼できるのかという疑問の声が諸外国から絶えない。感染者数が実際に減っても、国として信頼されていなければ訪日は敬遠され、来年の東京五輪・パラリンピックの開催にも響く。

 二つ目は、現場支援の強化だ。ウイルス感染の検査・医療はもちろん、教育や子育ての現場への支援が必要だ。日本の働き盛りの世代は今、仕事も家事も子育てもした上で、学校教育まで家ですることを求められている。親としての負担もさることながら、こうした状況下では教育の質が問われる。また、家庭のネット環境の違いで格差が拡大してしまう問題もある。

 三つ目は、本気のデジタル化だ。政府による行政の電子化は遅れに遅れたように思う。中央からのかけ声だけで、形だけのデジタル化に終わってきた。今度こそ、国民との関係で行政が本当に変わったと思える結果を出してほしい。

パネル討論

日本発の共通基盤作り…甘利氏

成長戦略に「オンライン」…高橋氏

医療・教育 現場支援厚く…川本氏

■大企業の資金にも懸念

オンラインでライブ配信された読売国際会議(左から甘利明氏、高橋進氏、川本裕子氏)=18日午後、読売新聞東京本社で、杉本昌大撮影
オンラインでライブ配信された読売国際会議(左から甘利明氏、高橋進氏、川本裕子氏)=18日午後、読売新聞東京本社で、杉本昌大撮影

 ――まず、新型コロナウイルスの短期的な課題と対策を聞きたい。今年度の第2次補正予算案では何が必要か。

 高橋氏 地域の医療体制が逼迫(ひっぱく)しており、感染患者の受け入れと検査の態勢強化が、まだまだ必要だ。資金繰り支援では、特にフリーランスの人たちの収入の落ち込みが大きく、手当てが求められる。観光や消費関連の中小企業に対しては、売り上げ減少対策に加え、家賃補助や雇用維持のための助成金といった固定費の支援が重要だろう。

 金融安定への目配りも大事だ。大企業にとっても、今後は資金繰りが心配材料となるからだ。成長戦略としてデジタル化を進めることは需要創出の柱となるだろう。

 川本氏 新型コロナウイルスの影響は事業分野ごとの差が非常に大きいので、打撃を被った所に重点的に補正予算を付けるべきだ。スピードが求められている。医療、看護、保育、教育、介護などの分野は、新型コロナウイルスによる負担が非常に増えたのに、報酬がそれほど高くない。手厚いサポートと予算が必要だ。

 甘利氏 2次補正では、1次補正の網で救えなかったり、支え切れなかったりした学生やフリーランスの人たちについて、より手厚く対応することになる。家賃補助は、中小・小規模事業者では月額50万円、個人事業主は25万円をそれぞれ上限に、半年分支給する。雇用調整助成金の日額上限は、8330円から1万5000円に引き上げる。世界トップランクの国に並ぶ支援となる。

 航空会社など大企業の内部留保も今後払底する懸念がある。最終的には、資本性の資金を注入することが大事だ。超長期で金利が非常に安く、再生したら後は資金を回収できるような劣後ローンを、できるだけ迅速に届けることが大事だ。

 劣後ローン 会社が倒産して資産を整理する際、返済の順番が劣る借入金のこと。帳簿上は債務に分類されるが、株式と性格が似ているため、金融機関からは負債ではなく自己資本とみなされ、借り入れる会社側には、財務面の悪化を避けられる利点がある。

■デジタル化――カギ握るマイナンバー

 ――デジタル化はいかに進めるか。テレワークやオンライン診療、オンライン授業などが拡大し、これまで日本が出遅れていたデジタル分野の取り組みが進展することが期待されるが、今後の進め方は。

 川本氏 最近は、大学院の授業はオンラインで実施しているし、企業の役員会もテレビ会議となったが、ほとんど問題はない。毎日の通勤で電車に乗る時間が年平均500時間も浮いて、新しい資格が取れる、という話を聞いたことがある。テレビ会議だと大量の資料は共有しにくいので、簡潔なものが求められるし、発言しない会議は後で記録を読めば済むから、会議の数も減っている。

オンライン診療も、どんどん進めれば良い。オンライン授業は、小学生、特に低学年では親のサポートがないと難しく、これが格差の原因となることは、とにかく避けなければいけない。

 甘利氏 マイナンバー制度が他の先進国並みに行き渡っていれば、かゆいところに手が届く、メリハリの利いた政策が素早く実行できたはずだが、各省間の調整が進まず、実現していない。自民党で法律を作ろうとしているが、議員立法は与野党の一致により成立させるのが原則なため、一部の党が反対するとできない。理不尽なことだ。

 米国では、80年前から社会保障番号制度が普及し、銀行口座を作るにも社会保障番号が必要になっている。日本では個人情報保護法がしっかりできているし、マイナンバーの安全性も世界一高いのだから、マイナンバーと銀行口座をひも付けできるよう、法改正していかないといけない。もはや今がタイムリミットだと思っている。

 高橋氏 私が参画している政府の規制改革推進会議は、緊急的な措置として、オンラインによる診療と授業の拡大を厚生労働省や文部科学省に求めた。慢性病の患者が病院に行かずに薬をもらうことができれば、院内感染のリスクがない。全児童へのパソコン配布は前倒しが決まったが、そもそも日本は他国より10年は遅れている。

 民間企業は、判子を押さなくても、契約書や見積書のやり取りができるように協力すべきだ。役所には対面で文書を提出している例が多いが、法律で明確に求められていないものが多い。やめようと思えばやめられるものは随分ある。

 橋などインフラの点検も、人の目視によることが指針で求められている例が多いが、ドローンを使ったチェックで済ますことを認めるべきだろう。

■日本がプラットフォーム提供を

 ――「コロナ後」の時代、日本は何で勝負するべきか。

 川本氏 今後、サプライチェーン(供給網)の見直しはやむを得ないが、「すべてを日本国内で」ということになれば次の危機への脆弱性が高まりかねない。自給自足は善という発想は幻想で、むしろ一層の多様化が必要だ。例えば中国だけに依存せず、日本国内と複数の国に拠点を持つことが大事になる。

 国境の壁は高くなろうが、日本は環太平洋経済連携協定(TPP)を推進する自由貿易大国という旗を降ろすべきではない。日本は通商国家であり、今をチャンスととらえるべきだ。この際、米中両国以外の国とどれだけ深くつきあってネットワークを作れるかがカギだ。日本がプラットフォームを提供し、他国に集ってもらう。このため日本は一層国際化する必要がある。

 ――甘利さんは担当相として、TPPを推進してきた。

 甘利氏 コロナ禍のために国際交流が減り、各国が内向きになることを危惧している。世界のGDPは国際貿易の進展に比例して伸びたことを忘れてはならない。

 (米インターネット通信販売大手の)アマゾンや(米動画配信の)ネットフリックスのように、現状下で業績を伸ばしたビジネスモデルがある。(ネット上の)バーチャルなプラットフォームだ。

 日本はこれにはなれないが、リアルデータという強みを持つ。日本は信頼できるデータの宝庫で、リアルなプラットフォームとなるような経済戦略が必要だ。

 リアルデータ インターネット空間で大量に発生する「バーチャルデータ」に対し、医療や介護の現場、自動車事故など実世界から得られる情報。

 高橋氏 中国は今後、デジタル版の「一帯一路(巨大経済圏構想)」を抜け目なく推進して来るだろう。デジタル化を通じて関係各国を取り込もうという動きで、日本もアジア太平洋地域を中心に負けないことをやらなくてはならない。

 日本はデジタル分野では遅れているが、都市計画や交通網整備などで実績がある。希望する国と協力し、その国のデータを集め、活用するシステムを作る。日本はデジタル人材が不足しているから、逆に人材育成でもアジア諸国と一緒にできることは多い。

■人材育成に予算と知恵

 ――新時代の人材育成、教育とはどうあるべきか。

 甘利氏 世界の一流大学を見ると公的助成はさほど増えていないのに年次予算は伸びている。大学発の新興企業を育て、自ら稼いでいるからだ。

 大学、企業双方に意識改革が求められている。例えば欧米では博士号取得者が民間企業に行くことがよくある。日本でも博士が企業の知恵袋として活躍できるような環境作りが必要だ。

 高橋氏 日本は大学を卒業して社会に出たら、その後、教育を受ける機会がほとんどない。企業も人材育成をないがしろにしてきて、そのつけが来ている。今、人材育成に予算を使わなければ日本は今後何十年も出遅れかねない。企業も内部留保をもっと使うべきだ。

 川本氏 大学と企業の垣根を下げることが大事だ。大学は卒業の要件をもっと厳しくしないと専門性が育たない。専門家たる博士を企業が生かす仕組みを作らなければならない。一定の分野の専門家に対する敬意が社会全体に足りないからこうなる。

■「日本発」の共通基盤作りを

 ――今回の危機を乗り越えるためのキーワードを提示していただきたい。

 川本氏 「〈1〉政府への信頼感〈2〉現場支援の強化〈3〉本気のデジタル化」としたい。政府への信頼感が民間部門の経済復興には大切だ。また、今まで「やるやる」といって、何年間もできなかったことを進めなくてはならない。

 高橋氏 「コロナは構造変化を加速する――デジタルファーストの徹底を」が1番のメッセージだ。日本の成長戦略にはデジタル化が必要だ。医療、介護、交通、環境エネルギーなど日本が世界をリードできる分野は特定されつつある。デジタルファーストとは、デジタル化を前提にすることだ。判子を例にすれば、前提としてなくすと決め、どうしても必要なところだけの対応を考えれば良い。

 甘利氏 私は「デジタルニューディール」とする。「コロナ後」に、前の時代に戻るのではなく、局面が進化した社会を創る決意を込めた。米国が中国と対立を深め、欧州の同盟国ともけんかする中、日本には自由、民主主義、法の支配といった共通の価値観をつなぐ役割がある。中国のような権威主義的な国を民主的ルールに巻き込む作業もしていかねばならない。日本の産業界には、世界の共通基盤たるプラットフォームを握ってほしい。世界が必要とするプラットフォームとなることが大切だ。

 ニューディール 1929年の大恐慌による世界経済危機からの脱却を目指し、33年に就任したルーズベルト大統領が打ち出した一連の経済政策。テネシー川流域開発などの大型公共事業による失業者雇用や社会保障制度の確立が柱。

(読売クオータリー2020夏号) 

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1621168 0 読売国際経済懇話会(YIES) 2020/10/20 05:00:00 2020/11/17 11:48:01 2020/11/17 11:48:01 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201112-OYT8I50067-T.jpg?type=thumbnail

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