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読売国際会議 緊迫する世界と日本の役割 米中「新冷戦」とアジア

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覇権争い 緊密対話で改善

 読売新聞と読売国際経済懇話会(YIES)は6月24日、読売国際会議2019年第1回フォーラム「米中『新冷戦』とアジア」を東京都内で開催した。年間テーマ「緊迫する世界と日本の役割」に基づき、日米中の有識者3氏が、深刻化する米中対立の行方やアジアに及ぼす影響、日本の果たすべき役割などについて討論し、約400人が耳を傾けた。

(コーディネーター 大内佐紀 調査研究本部主任研究員) 

冒頭発言

「米国の対中観、より厳しく」…米戦略国際問題研究所 マイケル・グリーン氏

 米中両国は短期間で戦略的な競合関係に陥った。私がホワイトハウスにいた頃は、中国を「ライバル」というよりも「パートナー」とみなす傾向があった。台湾や人権などの問題では対立するが、北朝鮮や気候変動など協力できる分野もあった。

今では米国民の大半が中国をライバルとみなす。

 原因を以下に挙げる。リーマン・ショックを見た中国は、自国経済を米国型に改革しても必ずしも成功しないと考えた。ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長の「失敗」に学び、建国の指導者・毛沢東路線に回帰するかのような、習近平(シージンピン)国家主席という指導者が中国に誕生した。オバマ前米大統領はいったん対中融和策に出たが、その後、中国の台頭を警戒する「リバランス政策」に転換し、中国を驚かせた。

 この間、人的交流など米中協力分野の柱が崩れる一方、中国は軍事力強化とハイテク産業育成に邁進(まいしん)した。そこに、予測不可能なトランプ米大統領が出てきた。

 では、米中は「新冷戦」状態にあるのか。答えはノーだ。貿易などで両国経済は密接な相互依存関係にある。米中経済のデカップリング(切り離し)は部分的にはあり得るだろうが、米国農業には中国市場が必要だし、貿易戦争となれば双方が大きな傷を負う。

一方で、中国はアジアにおいて覇権的な地位を求める動きを見せる。今後、米中間で新しい形の競争が始まろう。

 米ソ冷戦時代のように世界が二極化することはない。そして、多極化したアジアは中国の覇権を好まない。そこに米国、日本、豪州、インドなどによる安全保障面での連携が生まれる。

 今後、日本の役割はますます重要になるだろう。投資や貿易などを通じて、日本は中国の今後の針路にも、米国の選択肢にも影響力を発揮し得るからだ。

 米中経済のデカップリング 貿易、投資、技術で米国経済から中国を切り離し、中国がハイテク分野で優位に立つことを阻止する一方、米経済の対中依存度を下げようという考え。関税を課すことはその一つの手段と目される。デカップリングは元来、安保用語だったが、近年、米国内では通商タカ派が主張する。

「中国、『対立』は望まず」…北京大学教授 賈慶国氏

 中米関係を「競争」や「対立」と定義することは適切ではない。「競争」は対等な関係で成り立つが、両国は対等ではない。米国の国内総生産(GDP)や国防予算は中国よりはるかに大きく、技術もはるかに進んでいる。米国のソフトパワーに中国は及びようもない。

 「対立」は中国に対する米国の行動を表す。しかし、中国は対立を望んでおらず、米国の挑発にも抑制的に対応している。つまり中米は「一方的な対立」の状態にある。

 両国はまだ、冷戦状態にはない。米ソ冷戦の特徴は、イデオロギー上と軍事上の対立がある一方、経済は切り離されていたことだ。

この指標に基づけば、米中は「冷戦」にはまだ遠い。しかし、その方向に向かってはいる。

 米国は、中国が不満を持つような措置を相次いで講じている。中国通信機器大手ファーウェイ(「華為技術」)の最高財務責任者の拘束しかり、中米間で最も機微な台湾問題にからみ、米議会が多くの法案を可決したのもしかりだ。

 両国が冷戦状態になれば、アジア太平洋地域で経済的混乱のリスクが高まり、台湾海峡での危機や両国の軍拡競争によって誘発される軍事衝突の危険性も増す。米国は関係国に対し、自分の味方をするよう圧力を強化するだろう。

 中国も同様の圧力をかけ、地域諸国は望まない選択を迫られる。多くの国にとって中国は一大市場であり、米国は緊密な防衛協力の相手だ。

 では、地域諸国にどのような選択肢があるのか。まずは、どちらかを支持することに抵抗し、より合理的で洗練された対中アプローチをとるよう米国を説得することだ。新しい非同盟の運動を始めるのも一つの手段だろう。

「日本、『自由貿易』の強調を」…立命館大学客員教授 藪中三十二氏

 米中貿易摩擦の激化は日本にも影響する。米中対決の行方を日本は慎重に見守る必要がある。

 米国の対中観は、「責任あるステークホルダー(利害関係者)」から大きく変わった。例えば、南シナ海での(軍事拠点化の)活動は、近隣諸国に対する攻勢とみなされる。最近、米企業のトップや政治家と話すと、かつての中国への共感が懸念に転換したことを感じる。ところが、中国の指導部はこの変化を理解していない。

 日本のGDPは2000年には中国の3倍あったが、今や中国が日本の2.5倍だ。大国となった中国が一歩でも足を踏み出せば、近隣諸国は大きな影響を受けるのに、中国は自身の影響力を分かっていない。

 米国が第2次大戦以降、保持してきた覇権に中国は挑戦し始めた。米国の軍部やハイテク産業はこれに敏感に反応しており、手遅れになる前に中国の台頭に手を打つべきだと(トランプ)政権に促している。最近、貿易と安全保障が一体のものとして扱われるのはこのためだ。

 中国がもう一つ誤解しているのは、トランプ大統領が自らの再選のために貿易での合意を切望していると考えている点だ。米政治の力学はめまぐるしく変化するうえ、トランプ氏個人の気持ちは変わりやすい。いずれにしろ、29日に予定される米中首脳会談での合意は難しいのではないか。時間が足りない。

 では、日本に何ができるのか。28日開幕の主要20か国・地域(G20)首脳会議などを通じて、安倍首相はトランプ氏との間に築いた人間関係を生かし、保護主義への対抗、自由貿易の堅持を積極的に働きかけるべきだ。同時に習主席に対しても知的財産権の順守など、自由貿易の原理原則の大切さを強調しなければならない。

パネル討論

経済と安保 切り離せない…藪中氏

中国、国力を自覚すべきだ…賈氏

北の核・ミサイル危機 再燃も…グリーン氏

■通商摩擦の行方

――米中関係改善の糸口はあるか。大阪でのG20の首脳宣言で、前回見送られた「保護主義と闘う」という文言は盛り込めるだろうか。

 藪中氏 米中の覇権争いは今後も続くだろうから、両国関係が全体的に悪化しないよう、緊密な対話が必要だ。「保護主義への闘い」が書き込めれば大成功だが、仮にできなくても、自由貿易の重要性に言及することが極めて重要だ。(議長の)安倍首相の努力が求められる。

――29日には米中首脳会談が予定される。貿易摩擦緩和策で合意はできるか。

 賈氏 首脳会談では、交渉の継続だけを決めるのではないか。いずれは何らかの合意ができるだろう。

 中国は最近、外国企業が中国で事業をしやすくする外商投資法を全国人民代表大会で成立させた。知的財産の保護にも努めている。国有企業改革は、多くの労働者の利益にも関わるので簡単ではないが、外圧を受けて問題解決がはかどることもあろう。中国は決してすべてに抵抗しているわけではない。ただ、中国が相当量の米国製品を一定期間内に購入しなくてはならないという米国の要求は論外だ。そもそも米国製品の中には中国が必要とせず、割高なものが多い。自由貿易の原則に反するようなことを米国は主張すべきでない。

 グリーン氏 その点は同意できる。米国でもトランプ氏とその取り巻きを除けば、例えば米国の農業関係者などは管理貿易が行われることを危惧している。トランプ氏は、(中国製品に対する第4弾の制裁発動をちらつかせるが)最終的に関税を上げないのではないか。特に大豆農家は(中国の対抗措置による)関税の上昇を避けたいと考えている。来年の大統領選挙をにらみ、共和党にとって農家は重要だ。トランプ氏が望む中国とのディール(取引)を実現するには、相手が民主主義国でも同盟国でもないだけに、首脳同士の関係がとりわけ重要となる。

 藪中氏 トランプ氏と習氏との絆により何らかの取引は生まれるかもしれないが、分からない。中国はプライドがあり屈辱を望んでいない。第4弾の制裁関税は棚上げされ、期限を切らずに状況改善を図るのではないか。

藪中氏(右)、賈氏(中央)、グリーン氏(右)
藪中氏(右)、賈氏(中央)、グリーン氏(右)

■中国の矛盾

――米中経済の切り離し(デカップリング)はあり得るだろうか。

 藪中氏 トランプ政権下では、自動車の輸入でさえも国家安全保障上の問題となる。米中間には、次世代通信規格「5G」や人工知能(AI)など最先端技術を巡る覇権争いがあるから、貿易と安全保障問題が切り離せなくなっている。

――トランプ氏のユニラテラリズム(単独行動主義)は国際秩序にどのような影響を与えているか。日米経済交渉の展開は。

 グリーン氏 トランプ氏は世界貿易機関(WTO)が設立される以前のやり方に戻りたいのだろうが、無理だ。米国を既存の国際秩序に引き戻す上で、日本は先進7か国(G7)の中でも、とりわけ重要な役割を果たすとワシントンでは期待されている。

 米国は、中国の次の「獲物」は日本だと考えるかもしれない。参院選後、トランプ氏は自由貿易協定(FTA)の締結を日本に迫るだろうし、日米貿易摩擦が激化する可能性はある。ただ、関税引き上げは自動車価格の上昇を招き、共和党にとっても自殺行為になるから、やらないだろう。

 賈氏 中国は最近「バスへのただ乗りは許されない」ということを理解しつつある。ところが、元来、自由貿易を主導してきたはずの米国が、トランプ政権になって「中国がバスにただ乗りしているから、我々だって同じ事をやる」という態度になってきた。

 藪中氏 中国は現在もWTOで途上国として優遇措置を受けているが、もう各国共通のルールを受け入れるべき時だ。日米関係について言えば、日本は過剰反応すべきでない。米国の対日貿易赤字は対中赤字よりはるかに少ないし、日本企業は米国で多くの雇用を創出しているからだ。

 グリーン氏 トランプ氏のツイッターには過剰反応しない方がいい。

 中国は矛盾している。WTOでは途上国扱いなのに、(ハイテク技術を中心にした)成長戦略「中国製造2025」で経済支配を強めようとしている。仮にトランプ政権でなく、民主党政権でも米中経済摩擦は起きていただろう。

――中国指導部は最近、「中国製造2025」に言及しなくなったが。

 賈氏 中国独自の政治文化で、野心を示して指導部に認められようと誇大広告的なことを言う傾向がある。「中国製造2025」もこの官僚政治を反映した文書だ。中国は「自国がまだ弱い」と思い込み、大言壮語しても他国は気にしないと考える。しかし、中国は今や全世界が注目する存在で、外国との関係が変化したことを学ばなければならない。

■海洋権益

――中国は南シナ海で領土的野心を強めていると警戒されるが、何を達成しようとしているのか。

 賈氏 領土、領海に関する正当な国益を守ることが中国の第1の目的だ。ところが米国は、公海と排他的経済水域(EEZ)も含む中国近海での軍事的活動、情報活動の排除を目指している。中国は、米国と同盟国によって(南西諸島とフィリピンを結ぶ)第1列島線内に封じ込められていると感じてきた。だから「外洋型海軍」を持ち、第1列島線と(伊豆諸島からグアムに至る)第2列島線を越えた拡張的防衛力で領土と海洋権益を守りたい。

 仮に台湾が独立を宣言すれば、それを軍事的に封じ込める能力を持つ。米国にとってのコストを莫大(ばくだい)にし、介入できないようにする。そうした抑止戦略によって確実に国の統一を守ることが、中国の重要な国益だ。

 グリーン氏 アヘン戦争以来の歴史をみれば、中国の脅威は常に海洋から来るものだった。中国軍が第1列島線を越えてグアムに脅威を与えたり、東アフリカのジブチに基地を求めたりするのは確かに、台湾、あるいは尖閣諸島、南シナ海問題で米国の介入を抑止する手段を得るためだ。少なくとも第1列島線の内側では優位性を保ち、外交的慣例や国際法とは関係なく、自分たちで物事を決められるようにする手段でもある。

 しかし、第1列島線は米国にとっても、戦争を辞さないほどの「核心的利益」だ。だから状況は危険だ。

 藪中氏 中国のアプローチは南シナ海と東シナ海で違う。東シナ海では08年、ガス田の日中共同開発に関する合意が交わされた。

 中国は、海底資源に自国の主権的権利が及ぶEEZは大陸棚が及ぶ沖縄トラフまでという主張だが、08年の合意は事実上、中国が日本の主張に同意して(両国海岸線から等距離の)中間線を基にするものだった。

 賈氏 08年合意は、国内政治の問題と日中関係に好ましくない時期が続いたため実施されていない。実施されれば紛争処理に役立ち、相互に恩恵がある。

■米朝の橋渡し

――習氏が20、21両日、北朝鮮を公式訪問した。北朝鮮の非核化で、米中協力の余地はあるか。

 グリーン氏 習氏が北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)労働党委員長に、核・長距離弾道ミサイル実験を行えば中国は罰するが、やめれば援助すると言った可能性はある。だがそれが(非核化に)役立つだろうか。金氏には核開発を放棄する意図は全くない。北朝鮮は米国に核保有国として認めてほしいが、トランプ氏にはそれはできない。いずれ北朝鮮は核・ミサイル実験を再開し、危機が再燃するだろう。かつて北朝鮮問題は米中が協力できる分野だったが、今はそうでない。トランプ氏は3回目の米朝首脳会談を望んではいるが、米政府内では(核開発再開の)懸念が強まっている。

 賈氏 金氏が4回も訪中したのに答礼訪問しないのは非礼だという儀典上の問題があった。もう一つ、米国が中国に敵対政策をとり、同盟国にも同調圧力をかけるので、中国は仲間作りをしたい。北朝鮮を敵に回したくはないのだ。

 藪中氏 北朝鮮がハノイでの第2回米朝首脳会談で犯した失敗は、何を提案してもトランプ氏は受け入れると思い込んでいたことだ。首脳間の個人的関係があってもその下のレベルで意思疎通が全くなかった。両国の橋渡しという意味では、習氏訪朝も役立つ部分があったかもしれない。第3回会談に向け、例えば(08年に中断した)6か国協議のような高官級の交渉が必要だ。事前準備なしに米朝首脳会談を行っても、ろくな結果は出ない。北朝鮮問題の平和的解決に向け、日米中が建設的協力をする余地はあると思う。

(2019年6月27日朝刊) 

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1623633 0 読売国際経済懇話会(YIES) 2020/10/18 15:00:00 2020/11/13 13:23:21 2020/11/13 13:23:21 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201113-OYT8I50057-T.jpg?type=thumbnail

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