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読売国際会議 安倍・トランプ同盟と北朝鮮 北 完全非核化への道

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 読売国際経済懇話会(YIES)と読売新聞社は6月6日、読売国際会議2018「迫る危機――問われる日本力」のフォーラム「安倍・トランプ同盟と北朝鮮」を東京・内幸町の帝国ホテルで開催した。シンガポールで12日に予定される史上初の米朝首脳会談を見据え、北朝鮮に核・ミサイルを放棄させるための課題、拉致問題の行方や日米の結束のあり方について、専門家が聴衆約400人を前に議論した。

(コーディネーター 渡辺覚・調査研究本部主任研究員) 

冒頭発言

最大限の圧力 維持を…元米国務副長官 リチャード・アーミテージ氏

 12日の米朝首脳会談で何をなすべきか?すでに安倍首相とトランプ米大統領が一致した通り、北朝鮮に対して「最大限の圧力」をかけ続けるべきだ。

 1日にホワイトハウスを訪れた北朝鮮の金英哲(キムヨンチョル)朝鮮労働党副委員長は、米国のいかなる同盟国の特使よりも歓待を受けた。これは間違っていた。完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)の芽が失われようとしている。トランプ氏によって、最大限の圧力は「強力な制裁」と言い換えられ、完全な非核化は、段階的に行うことになってしまった。

 トランプ氏は、米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の脅威を強調している。だが、日韓が射程に入る短・中距離の弾道ミサイルも含めて、北朝鮮に廃棄を迫る必要がある。日韓への脅威は、米国に対する脅威と同じであるからだ。首脳会談では、あらゆる射程のミサイルについて、「所持は認められない」と言うべきだ。

 日本と米国の安全保障がデカップリング(切り離し)される事態は、何としても避けねばならない。ポンペオ米国務長官は米朝首脳会談の目的について、「米国の安全を確保することだ」と述べただけで、日韓に言及しなかった。私はこの発言に懸念を抱く。

 北朝鮮は物事を引き延ばして譲歩を引き出すのがうまい。トランプ氏は米朝会談を、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と「知り合いになるチャンス」と言うが、北朝鮮がCVIDに取り組むか否かは不明なままだ。いずれ中国と韓国からは、「日本は制裁を解除せよ」と圧力がかかるかもしれない。

 人権問題についても前進がみられない。拉致問題が解決したと言える権利は、金委員長にはない。解決したかどうかを決めるのは家族だ。安倍首相はトランプ氏に拉致問題を米朝会談で取り上げるよう働きかけているし、私もそれを望む。

 北朝鮮は「もう核実験はしない」と言う。挑発の度合いが低下してきているのは良いことだ。だが、核実験停止と核計画の放棄は違う。私たちは、まだそれを北朝鮮から聞いていない。

米朝会談の3リスク…前駐米大使 佐々江賢一郎氏

 なぜ北朝鮮が交渉のテーブルに出てくることになったか。それは、軍事的な威嚇を含め、米国による最大限の圧力があったからだ。大量破壊兵器とミサイルの廃棄という目標を達成するため、同盟国として米国の努力を支持し、助言することが日本の役割だ。

 拉致問題は、最終的には日朝交渉で解決しなければいけない。だが、朝鮮半島や北東アジアの将来を考えていくうえで、核・ミサイル問題と同様に、拉致問題も非常に重要な要素であると関係諸国に理解してもらうことが欠かせない。

 金正恩氏と首脳会談をするというトランプ氏の決断が本当に良かったかどうか。結論を出すのは早い。ただ、どんな交渉でも相手を個人的に知り、何らかの話ができると思うようにならなければ前には進まない。

 米国はCVIDを達成したい。北朝鮮は体制の保証とともに、核を放棄する代償として経済支援や制裁解除を期待している。大局的な方向と大きな目標について合意できれば望ましい。(核問題をめぐる6か国協議など)過去の交渉では、「いつまでにやる」という合意はできなかった。虚心坦懐(たんかい)に話をし、お互いにできること、できないことが明らかになってくれば、意味のある会談となる。

 だが、米朝会談には三つのリスクがある。第一に会談が劇場化して中身が伴わないことだ。米朝首脳が握手して、「新しい春が来た」という印象が広がるのは果たして良いことなのか。

 第二に北朝鮮は、プロパガンダ(宣伝)と分断政策に巧みだ。首脳レベルと実務レベルを分断し、自分たちに厳しい強硬派は批判して取り除こうとする。北朝鮮の望む方向に誘導しようとする動きには、注意しなければいけない。

 第三に、北朝鮮が実現までにいくつもの段階を設け、時間切れになる恐れがある。立派な約束をしても、実施計画について十分な合意がなければ画餅になる。

交渉には当然、ギブ・アンド・テイクがある。最終的にどうやって達成するかが重要だ。首脳同士の大局的な判断と実務者の専門知識が同調しないと難しい。

危うい「交渉人衝動」…慶応大総合政策学部教授 中山俊宏氏

 研究者としてトランプ外交を見ていると心配が多い。対北朝鮮では、大統領が「ディールメーカー(交渉人)としての自分」を世界に見せたい衝動にかられ、北朝鮮との取引自体を目的にしているように映る。

 北東アジアで重要なのは、米軍が長期間駐留し、耐久力を示すという米国の関与・役割だ。ただ、トランプ氏自身はアジア問題への関心が高いわけではない。北朝鮮に対する外交でも、「派手さ」を追い求めているのではないか。

日米同盟は本来、北東アジアにおける米国の確固たる関与を前提に成り立っており、トランプ氏の振る舞いは、「米国をどこまで信じたらよいのか」という不安を日本に生んだ。

 オバマ前政権下でも日本は、中国の台頭や不安定化する周辺情勢にさらされ、「本当に米国は守ってくれるのか」と不安になった。トランプ外交は、前政権の実績を否定したい衝動で動いている。一方で、イラクなどでの戦争のように、米国の若者の犠牲を伴う介入を「無駄」とし、同盟国やパートナーに多くの負担を求める。こうした点ではオバマ外交と共通する。

 米国内の政治状況の変化も気がかりだ。日本はこれまで共和党を「民主党よりも日本に近い」との思いで見てきたが、共和党は現政権下で「トランプ化」し、これに抵抗する勢力は先細りしている。こうした現象の行方を、日本は注視していく必要がある。

 国外への無駄な関与は控え、米国の立て直しを優先するある種の居直りが「米国第一主義」の根幹にある。力に依拠した対外政策で保守主義の伝統的価値を支えるという考え方は、トランプ化した共和党では、もはや支持されない。

 例えば60年先を見据えれば、日本外交のあり方も考えねばならないのではないかと、米朝間の外交を見ていて感じる。ただ、目下の北東アジア情勢を冷徹に眺めれば、誰が米国の大統領だろうと、日米関係を上手に管理し、日本の意思を伝え、日本の国益を最大化することが、日本にとって最善の選択肢であることは変わらない。

パネル討論

年単位の時間必要…アーミテージ氏

手法・スピード明確に…佐々江氏

核査察の態勢 構築を…中山氏

■大統領の性格

――史上初の米朝首脳会談への期待は。

 アーミテージ氏 拳でケンカをするよりは、首脳同士が会って話をした方がいいのは確かだ。ただ、トランプ米大統領の性格が、指導者として理想的とは言えないという点に懸念が残る。また、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に、彼自身を特別な存在にしている核兵器を捨てさせるのは難しい。不可能ではないとはいえ、非常に困難であることは見当がつく。

 佐々江氏 トランプ氏は自著で、「自分のポジションは、変幻自在で明らかにしない方がいい」と述べている。「最大限の圧力という言葉は使いたくない」というのも、好意的にとらえれば、彼のレトリック(修辞)だろう。

――ここに来てトランプ氏は、非核化の難しさを認識したとの指摘もある。

 中山氏 そもそも、非核化の一括妥結は現実的でなかった。トランプ氏が会談の開催中止を宣告する書簡を北朝鮮に送った頃のツイートを見ると、ロシア疑惑やフェイク(偽)ニュースへの批判ばかりだ。トランプ氏の意識は、北朝鮮の核・ミサイル問題とは違うところにあるのではないかと不安になった。

 アーミテージ氏 トランプ氏が、核・ミサイル開発、南北関係、朝鮮戦争の休戦協定など、すべての細部まで議論できるかどうかは疑問だ。希望は持ってはいるが、リスクもある。

――トランプ氏は、「北朝鮮への経済支援は日中韓が行う」と発言している。

 佐々江氏 交渉の中盤から最終局面にかけて、北朝鮮は当然、制裁解除や経済支援について期待をする。問題は、どちらを先にするかだ。日本にとっては、拉致問題の解決が前提となるが、最終的な到着地点に来た時にどう北朝鮮を支援するかは、すべての関係国で相談すべきだ。

■拉致問題は

――金英哲(キムヨンチョル)朝鮮労働党副委員長との会談で、拉致問題は話し合われなかった。

 佐々江氏 言及がなかったのは残念だが、それをもって今後も取り上げないという趣旨ではない。トランプ氏は拉致について、日本の重要な問題だから解決しないといけないと理解している。

 中山氏 逆に言えば、金副委員長との会談では、話し合っていない問題がたくさんあったのではないか。首脳会談の実現にフォーカス(焦点)があったとみられ、過剰反応する必要はない。

――北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)の実現のために、何をすべきか。

 佐々江氏 北朝鮮がCVIDに言及するのは、それほど難しいことではない。だが、核の申告、検証、監視を含めて、非核化を「どんなプログラムのもとで、どういうスピードで進めていくか」について合意しないといけない。

 アーミテージ氏 核兵器の廃棄がカギとなる。だが、北朝鮮にとって非核化が意味するのは、「核実験をしない」ということで、「核計画を放棄する」ことではない。

■人民軍内部の抵抗

――CVIDの実現にはどれほど時間がかかるか。

 佐々江氏 核放棄の検証には相当の手間、人、カネ、時間がかかると容易に想像できる。そもそも北朝鮮が合意しなければ、始まりもしない。ディテール(細部)をしっかり詰めて検証する作業が、今後の交渉の核心を成す。

 アーミテージ氏 12日の首脳会談だけでは、北朝鮮側も決定することはできない。とりわけ朝鮮人民軍の内部に抵抗がある。米韓との新しい関係についても、良く思っていない人たちがいる。

 佐々江氏 難しい点はまだある。北朝鮮は過去に、韓国側の検証も要求した。つまり、北朝鮮の非核化ではなく、朝鮮半島の非核化だ。米国の戦術核は韓国内にはもう存在せず、我々は要求を当然拒否する。

 アーミテージ氏 今我々がいる地点と理想の地点の距離は、年単位で計らなければならない。本当に非核化を目指すのであれば、長い道のりに備えなければならない。

――北朝鮮は、トランプ政権が交代するタイミングを見計らっているとも。

 中山氏 北朝鮮が「段階的かつ同時的な非核化」を主張する動機として、時間稼ぎとの見方はある。いつでもどこでも核査察ができる態勢を構築しないと、米国内からも反発が出る可能性がある。

――核査察の全面受け入れと核の国外搬出の後に制裁解除する「リビア方式」に、「体制の保証」を付けた非核化は考えられるか。

 佐々江氏 極めて早い時期に、全ての核兵器、核施設を国外に搬出、廃棄することと引き換えに、「北朝鮮への攻撃はしません。好きなように統治してください」と言うのは不可能な話ではない。

 アーミテージ氏 米朝首脳会談で体制保証を確実に手に入れるには、金委員長に高い外交手腕が求められるだろう。金氏は、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の支えがあって、闇の中から姿を現したばかりなのだから。

■日朝前進は重要

――米朝会談後、日朝首脳会談の可能性は。

 佐々江氏 日朝首脳会談があるとすれば、最も重要な議題は、日本にとっては拉致問題であり、北朝鮮にとっては過去の清算になる。米朝交渉、南北対話が進む中で、日朝関係を前進させるのは、相乗効果という面で重要だ。北朝鮮も、「究極的には日本との関係を正常化しなければならない」となれば、いずれその時期はやってくる。日本があわてて劇場型の首脳会談をやる必要はない。

――米朝首脳会談の成功と失敗の分岐点は。

 中山氏 派手な成功はないだろう。北朝鮮の時間稼ぎにならず、非核化の概念をある程度まで詰め、方向性が見えてくれば成功ではないか。

 アーミテージ氏 米朝首脳会談の開催で合意した段階で、米朝両国の首脳は「成功だ」と自負している。しかし、会談の結果、なんらかの形で日本が取り残されてしまう事態となれば失敗だ。

■中国台頭の懸念

――米朝首脳会談へ交渉が進む間、中国は国際的な存在感を高めてきた。

 中山氏 懸念されるのは、覇権的に見える中国の台頭の仕方だ。中国は周辺国間の亀裂を見据えつつ影響力の増大を考えている。

 アーミテージ氏 安全保障上、南シナ海の島々はあまり重要ではない。ただ、政治・経済的な意味は非常に大きい。中国による南シナ海の軍事拠点化は、中国が明確に総取りを狙っていることを物語る。米国も中国の台頭については警戒心を持っている。

 佐々江氏 問題は、中国が軍事大国を目指していることだ。経済が発展しても軍事大国となる道を拒否した日本とは違う歩みを見せる。中国は、米国のような軍事大国になりたいのだと思うが、周辺国へ与える安全保障上の影響は深刻だ。同盟国、友好国、アジア太平洋地域全体で、中国と争わず、しかし準備はしっかりしていくべきだ。

9月に日米同盟新提言 アーミテージ氏

 「第4次アーミテージ・ナイ報告書を9月に発表したい」。基調講演でアーミテージ氏は、ジョセフ・ナイ元米国防次官補らと共に日米同盟の新たな提言を準備していることを明らかにした。

 前回2012年以来となる注目の政策提言は、アジア太平洋地域の安全保障環境の変化を直視し、より効率的な防衛協力の可能性などを提示する考えだという。アーミテージ氏は「自衛隊が活動の能力を高める、よりプロフェッショナルな方法や編成のあり方についても提案したい」と強調した。

(2018年8月13日朝刊) 

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1630369 0 読売国際経済懇話会(YIES) 2020/10/09 12:00:00 2020/10/09 12:00:00 2020/10/09 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201116-OYT8I50086-T.jpg?type=thumbnail

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