三村明夫・日本商工会議所会頭「アベノミクス加速を」
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日本商工会議所の三村明夫会頭は11月21日、東京・大手町の経団連会館で開かれた読売国際経済懇話会(YIES)で講演した。安倍政権の経済政策「アベノミクス」について、「様々な政策を通じて一貫してデフレ脱却と潜在成長率の回復が目指されている」と評価し、改革の加速を求めた。
高齢者の負担を増やす社会保障制度改革といった国民に痛みを伴う政策についても「構造改革を行うことは安定政権でしかできない。さもなければ日本は成長軌道に乗ることができない」との認識を示した。
三村氏はトランプ次期米大統領が選挙中に輸入を制限する保護主義的な政策を主張したことについては、「米国第一ということだが、外国の首脳と対話していく中で、どう行動するかだ」と述べ、修正されることに期待を示した。
「民の実力発揮」期待
日本商工会議所の三村明夫会頭は読売国際経済懇話会(YIES)の講演で、アベノミクスを「正しい方向に向かっている」と評価し、さらなる加速を求めた。今後本格化する社会保障や労働市場などの構造改革には強い抵抗が予想されるが、成長軌道に乗るために必要な政策との考えを強調した。
一方、安倍政権は経済界に、賃上げや設備投資の拡大を呼びかけ、デフレ脱却に向けた取り組みを求めている。しかし、昨年に比べて円高・ドル安が続いた影響で、輸出企業を中心に業績は厳しい。次期米大統領にドナルド・トランプ氏が決まり、環太平洋経済連携協定(TPP)の先行きも不透明だ。
三村氏は講演の最後で、商工会議所を創設した渋沢栄一氏の言葉を引用し、「今こそ、『民の実力が発揮されること』が期待されている」と述べた。経営者は政治に頼るばかりでなく、自ら苦境を乗り切る意気込みを持つべきだというメッセージと言えそうだ。(福森誠)
講演要旨
■アベノミクスの現状

最初に示された「3本の矢」は、デフレ脱却や成長戦略の構築という分かりやすい内容で、人々から共感を呼んだ。(安倍政権が掲げる)GDP600兆円の目標は中期的には正しい政策で、2020年の達成にこだわる必要はない。20年間続いたデフレの傷は大きく、数年で解決できないことを政権や企業、国民も認識すべきだ。
金融緩和の強化には様々なデメリットがあり、財政刺激策の継続は民間の自力回復力を損なう。社会保障制度の効率化、消費増税などの痛みは避けて通れず、政権はその旨をはっきり発信してほしい。
■人手不足はチャンス
本当に深刻なのは、日本の成長する力を示す「潜在成長率」が1990年頃の4%台から足元は0.2%程度に低下したことだ。人手不足、製造業の国内製造能力の不足、生産性の停滞という三つの新たなボトルネックも明らかになった。
一方で、深刻な人手不足は、成長率の上昇をもたらす要因になるという逆説的な側面もある。世界でも極めて異質な日本の労働慣行の改革を促し、女性や若者の活躍、人工知能やロボット、IoT(モノのインターネット)を通じて日本社会を変革させるからだ。