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黒田東彦・日本銀行総裁「マイナス金利 株高・円安に」政策に自信

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デフレ脱却へ決意

YIESで講演する日銀の黒田総裁(7日午後、東京都千代田区で)=飯島啓太撮影
YIESで講演する日銀の黒田総裁(7日午後、東京都千代田区で)=飯島啓太撮影

 日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は3月7日、東京都千代田区のパレスホテル東京で開かれた読売国際経済懇話会(YIES)の講演で、マイナス金利政策について、「株高・円安の方向に力を持っている」と効果を強調した。中央銀行総裁が為替市場への影響に対し、踏み込んだ意見を述べるのは異例だ。マイナス金利政策に対する自信を示し、市場の疑問を払拭する狙いがあるとみられる。

 マイナス金利政策は、金融機関が日銀に開く当座預金口座のお金の一部について、「手数料」を取る仕組みだ。様々な金利が低下して、設備投資や住宅投資を促し、企業が収益を増やして雇用や賃金を改善させる狙いがある。

 黒田総裁は、マイナス金利政策の導入後に株安・円高が進んだため、効果を疑問視する向きがあることについて、「正当ではない。政策の効果は極めて強力」と反論した。様々な期間の国債や社債の金利が低下している動きが明確になっていることを挙げ、金利が相対的に高いドルなどの通貨を買う動きが強まれば、円安に向かうなどと説明した。

 投資家は世界経済に対し、過度に悲観的になっているとしながら、「市場は落ち着いていく」との見方を示し、時間をかけて政策の効果が浸透していくと強調した。「デフレに戻ることはない。必ず2%の物価安定を実現する」と述べ、デフレ脱却に向けた決意も改めて示した。

 マイナス金利政策により、金融機関の収益が圧迫されるという問題については、「避けられない」と認めた。しかし、金融機関は過去最高水準の利益を記録する健全経営で、貸し渋りが広がるといった事態は、「全く考えられない」と否定。融資は増えていくとの見通しを示した。

講演要旨

3年前より格段に良い

■マイナス金利政策を導入した背景

 年明け以降、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国経済の先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなった。原油価格は30ドル程度まで下落した。原油を輸入する日本にとっては良いことだが、資源国といわれるロシア・ブラジル・中東諸国の経済には悪影響をもたらし、世界経済が不透明な要因となっている。

 中国の株価は、昨年夏に続いて再び大きく下落している。もともと「バブル」の調整という面があったことに加え、人民元の動きも影響している。先安感がある中で投機的な人民元売りが起き、(中国の)外貨準備が減少している。この結果、株価は世界的に下落し、市場は悲観的になっている。為替市場では、資金が「安全通貨」とされる円に向かい、円高方向の動きが強まった。

 だが、日本経済は3年前に比べ、格段に良くなった。企業収益は史上最高水準、失業率は3.2%と完全雇用の状態だ。物価も、生鮮食品とエネルギーを除けば2013年3月のマイナス0.8%から、最近では1%を上回る水準まで上昇している。日本経済は緩やかに成長し、物価は2%に向けて上昇していく。このメインシナリオは揺らいでいない。ただ、「最高益の割には企業が設備や人材投資にいまひとつ積極的になりきれない」という現実がある。

 そこへきての世界的な金融市場の動揺で、企業心理が萎縮し、せっかく進んできた人々のデフレ心理からの転換が遅れるリスクがある。こうしたリスクの顕在化を防ぎ、2%の(物価上昇)目標に向けた勢いを維持するために「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が必要だと判断した。

マイナス金利 家計にプラス

■政策の効果

 メディアでは「住宅ローン金利は下がったが、預金金利も下がった。(マイナス金利政策は)家計にとってプラスかマイナスか」と言われるが、答えは明快だ。個人や企業全体としてみれば、プラスの効果が大きい。預金金利は低下しているが、もともとゼロ%に近かったため、低下幅はごく小幅だ。一方、貸出金利の低下幅は、預金金利と比べて明確に大きくなっている。メガバンクの10年固定型の住宅ローン金利は0.25%下がった。企業向け貸し出しの基準金利となるTIBOR(東京銀行間取引金利)は、3か月物で0.1%弱低下した。

 金利の低下効果は極めて大きいが、最近の国際金融市場の動揺が、その効果をわかりにくくしている面がある。(1月29日に政策導入を決定後)株価は2日間で800円上昇し、ドル円相場は一時1ドル=121円台となったが、その後、米国経済に関する見方の弱気化や欧州の金融機関の問題などをきっかけに、世界的な株安と円高が進んだ。

 金利の低下という効果ははっきりと表れている。円の金利が低下したことや、さらなる追加緩和が可能ということは、他の条件を一定とすれば、(マイナス金利政策は)株高、円安の方向に力を持っているはずだ。現在はそれ以上に、世界的に投資家のリスクを避ける姿勢が過度に広がっている。ただし、日本経済や日本企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)は強く、この政策の効果は極めて強力なことを考えると、投資家が冷静になるにしたがって市場は落ち着いていく。

黒田総裁の講演を聞く参加者
黒田総裁の講演を聞く参加者

■金融機関の収益への影響

 マイナス金利の適用は、金融機関の収益への影響が大きいと、かえって金融仲介機能を弱める懸念があり、対処する必要がある。例えば、マイナス金利のコストを(金融機関が)貸出先に転嫁し、企業向け貸し出しや住宅ローン金利が上がらないようにすることだ。金融機関が日銀に持つ当座預金のうち、ある残高までは、(日銀が当座預金に付ける金利を)プラスまたはゼロ金利とする部分を残した。こうした配慮で、金融機関がマイナス金利を支払う部分は必要最小限度に抑える考えだ。

 金利全般が下がったことで、金融機関の収益に対する下押し圧力は避けられない。ただ、金融機関は、顧客との長期の取引関係を維持する動機があるうえ、顧客が預金を引き出して現金で保有する可能性を考えると、(顧客が金融機関に預ける)預金金利をマイナスにするのは簡単でない。実際、マイナス金利を導入している欧州諸国でも、個人の預金金利がマイナスとなっている例は見あたらない。

 本質的な問題は、本業の貸し出し・預金業務で金融機関の収益が目減りし続けるという厳しい状態が、なぜこれほど長く続くのかということだ。その根本的な原因はデフレだ。デフレから完全脱却すれば企業は投資に積極的となり、貸し出し需要につながる。短期金利はプラスとなり預金収益が復活する。

 マイナス金利付き量的・質的金融緩和は、デフレからの完全な脱却を実現するための政策だ。デフレに戻ることはない。必ず、2%の物価安定を実現する。

質疑応答

賃金上昇条件「整っている」

 ――上海で開かれた主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で日銀のマイナス金利政策について、批判的な意見があったと一部で報道された。事実関係はどうか

 報道であったような事実は全くない。日本銀行の量的・質的金融緩和は、2%の物価安定目標の早期実現を目的にしたものであり、必要があれば、追加的な政策対応を行うという考え方はこれまでも十分に理解されている。今回のG20では、物価目標の早期実現のために金融緩和を強化し、実質金利の一段の低下を図ったものだと説明し、反論や意見はなかった。参加国の十分な理解が得られたと考えている。

 ――今後さらに踏み込んだ政策協調は可能か

 今回の合意は、金融政策、財政政策、構造政策を個別に、あるいは総合的に活用して、世界経済の回復、成長をより確実なものにする。そうしたことを通じて、金融市場を安定させるということをはっきりと言っている画期的なものだ。世界経済は基礎的条件がしっかりしていて、国際通貨基金(IMF)の見通しでも去年より今年は世界経済の成長率は加速していくとの見通しになっている。何かクライシス(危機)があるような状態ではない。十分な協調が図られている。

 ――物価と賃金が同様に上がらなければ、消費はなかなか伸びない。賃金引き上げは金融政策だけでは難しいと思うが、認識は

 物価が持続的に2%程度で上がっていくためには、賃金も持続的に上昇していく必要がある。そのための基礎も十分にできている。企業収益は極めて高く、労働市場は失業率で見ても、有効求人倍率で見ても、ほとんど20年来、一番良い、需給が逼迫(ひっぱく)した状況にある。基本的には(賃金上昇の条件は)十分整っていると思う。春闘が始まっているので、具体的なことを申し上げることは避けるが、基本的に我々も賃金と物価が共に上昇していくことを狙っているし、そうなるだろうと思っている。

 ――来年4月の消費税増税について、先送りすべきだとの意見が出てきている。見解は

 税の話は政府と国会が決めることで、私から物事を申し上げるのは僭越〈ルビ・せんえつ〉だ。増税の影響について、純粋に経済的な分析を申し上げれば、2014年4月には、3%、全ての財、サービスで増税された。17年4月は、増税の税率がまず2%で、食料品(全般)は非課税にする。その分1兆円の減収になるという点を勘案すると、影響は前回の半分強くらいだろう。さらには、前回は(増税前の)駆け込み需要が相当あり、その反動(による消費の)減があった。それらは前回ほどではないだろう。

 ――今後もマイナス金利の幅が広がる可能性はあるか

 マイナス金利付き量的・質的金融緩和を着実に推進することで、消費者物価の前年比は、物価安定の目標である2%に向けて、上昇率を高めていくと考えている。今回、決定したマイナス金利に伴う金利低下効果は極めて大きい。その効果が実体経済にどのように浸透していくかをしっかりと見極めたい。

 経済物価のリスク要因を点検して、物価安定の目標の実現のために必要な場合には、量・質・金利の3次元で追加的なことを考えることになると思うが、現時点では、現在の政策のもとで、17年度前半頃には、2%の物価安定目標に達する可能性が高い。現時点では、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を着実に推進していく。

 ――市場では円高が株安を招くとされている。だが、円高は対外購買力を増やす。認識の変化が必要ではないか

 円高、円安にはそれぞれのメリット、デメリットがあると思うが、為替レートは経済の基礎的条件を反映して、安定的に推移するのが一番望ましい。基礎的条件はそう簡単には動かず、もしそれを反映して為替レートが決まるなら、為替レート自体は緩やかにしか動かないはずだ。それ以上に、具体的な為替の水準や、今後の見通しを述べるのは適切でない。 

(2016年3月8日朝刊) 

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1649401 0 読売国際経済懇話会(YIES) 2020/10/07 05:00:00 2020/11/27 18:44:39 2020/11/27 18:44:39 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201124-OYT8I50086-T.jpg?type=thumbnail

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