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2010年3月開幕フォーラム 日米同盟と東アジア 

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日米同盟 地域安定に貢献

 読売国際会議2010「明日への責任―危機をどう乗り越えるか」の開幕フォーラム「日米同盟と東アジア」(読売国際経済懇話会=YIES=、読売新聞社共催)が3月17日、東京・千代田区のホテルグランドパレスで開かれた。中国の台頭が著しい中で、日米安全保障条約改定から50年を迎えた日米同盟の重要性を確認するとともに、日本外交のあり方を探った。

(コーディネーター 池村俊郎・調査研究本部主任研究員)

冒頭発言

多国間安保で補完…カリフォルニア大学国際紛争・協力研究所長 スーザン・シャーク氏

 アジアの将来に日米中3か国関係は大変重要だ。中国に抱くべき心配は、その経済的・軍事的強さではなく、国内での弱さだ。

 1989年の天安門事件以来、中国指導部は共産党政権存続の危機を感じ、それが外交や国内政策に影響してきた。外国の干渉に反発するナショナリズムの広がりも、清朝やその後の中華民国がナショナリズムで団結した革命運動に倒された歴史があるから、指導部には懸念材料なのだ。

 「中国の脅威」という時に最も懸念されるのは、国内世論に押された指導者が外に向かって威嚇的行動に走る可能性だ。それでも、胡錦濤政権の指導者は世論に左右されず行動することが出来ている。中国外交は基本的に現実的で責任ある態度を示している。社会不安を防ぐための経済成長に必要な平和的環境を維持するためだ。

 一方で、日本と台湾に向けられたナショナリズムの感情的な側面もある。日米同盟は、過熱した世論に押された中国指導部が軍事的行動に踏み込むことを抑止するためには、必須の存在だ。

 しかし、中国を責任ある大国に導き、日中の相互不信を緩和するのに同盟は十全ではない。多国間の地域安全保障の枠組みが問題解決の助けとなる。多国間枠組みが2国間同盟を掘り崩すと懸念する人がいるが、多国間枠組みがあれば、米国のアジア関与政策は一層信頼性が高くなっていく。同盟と多国間枠組みは、相互補完の関係にあり、二者択一ではない。

タブーなき議論 必要…日本国際交流センターシニアフェロー 田中均氏

 東南アジアの友人たちは依存せざるを得ない中国への不安を口にし、日米関係の改善を求める。東アジアは成長センターであるとともに、大きな問題が存在する。特に中国は大きな所得格差や軍事的不透明さを抱えている。それに対処するには、強い日米同盟が不可欠だということを政府も認識しなくてはいけない。

 日本が追求すべき基本政策の一つは、日米同盟の深化というよりは進化だと思う。タブーなく問題に向き合い、日本の役割を考えることが重要だ。例えば、1994年北朝鮮核危機の時、米国にどんな支援を行うか、どうやって邦人を救出するのかなどに関し、何一つ法整備がなかった。近くの冒険的な国が核兵器で脅してくるような時、「非核三原則」との調整が必要になる。

 沖縄米軍基地について、普天間基地問題の早急な解決が必要だ。集団的自衛権行使の問題も、米国が多国間主義に転じる時代に、冷戦期の(否定的)解釈のままでいいのか。PKO(国連平和維持活動)に全面参加できないのもおかしい。これらにきちんと向き合う必要があるのではないか。

 追求すべき基本政策のもう一つは、東アジアの安保環境をよくするため能動的に行動することだと思う。安全保障分野で、いわば4階建ての構造が必要だ。1階部分に日米・米韓・米豪などの2国間同盟。2階には、日米中3極の信頼醸成枠組み。3階部分には、北東アジア6か国協議が最たるものだが、地域協力的な安全保障の枠組み。そして4階には、災害救助や海賊・テロ対策など非伝統的安全保障の協力枠組みを作りたい。

日本の価値観 前面に…慶応義塾大学東アジア研究所長 添谷芳秀氏

 米中両国は同床異夢の戦略的共存関係にある。冷戦終結後、アメリカは欧米中心の世界の外に中国を位置づけ、「関与か、封じ込めか」を議論した。しかし、2005年に登場したステークホルダー(利害関係者)論は、中国を世界システムの中に位置づけ、「重要な利害関係を持つのだから責任ある行動を」と求めた。

 G2論は元々、その延長上にあり、志向する国際システムが根本的に違う中国の台頭に真剣に対処する必要を説いた。中国はステークホルダー論を受けて立つ決断をした。つまり、世界システムの中で役割を果たすが、必ずしもアメリカの意向とは合致せず、中国の自己主張が存在しうるという立場をとった。世界貿易機関(WTO)や気候変動枠組み条約締約国会議(COP)での交渉にそれが表れている。

 中国外交の本質には、欧米や日本が過去に通り過ぎた「近代性」がある。ナショナリズムや外交における軍事の役割への思い込みなどが典型だ。仮に中国中心の東アジアができた場合、中国の価値観が地域秩序の構成原理に反映される危険性は排除できない。

 日本の対中政策は東アジア戦略と同義だ。ナショナリズムで張り合うのでなく、我々が大切にしている価値観や東アジアで成り立たせたい秩序や原理を積極的に打ち出す外交によって、不安を感じつつも中国に依存する東アジア各国を日本の外交パートナーにできる。

 大前提が日米同盟だ。鳩山政権は「日米対等化」の最初の課題を軍事の点に置いたが、これは日米関係の中で最も非対称であり、最後の議題とすべきだ。

パネル討論

集団的自衛権考えよ…田中氏

中国の反日避ける外交を…添谷氏

米中G2論バカげてる…シャーク氏

白熱した討論が行われたパネルディスカッション(右から添谷芳秀氏、スーザン・シャーク氏、田中均氏)
白熱した討論が行われたパネルディスカッション(右から添谷芳秀氏、スーザン・シャーク氏、田中均氏)

――日本の政権交代を米国専門家はどう見るか。

 シャーク氏 政権交代は、日本の民主主義にとって健全な動きだ。1996年から小選挙区選挙が導入され、政治学者たちはもっと政党間競争が生まれると予測していたが、ようやく実現した。政権交代した日本が中国に傾くとの見方についてだが、日中関係が悪化すると、米国の安全保障上の利益が損なわれる。日中の緊密化は心配していない。

 日本政府の新チームとは今後、良い関係を構築していかなければならない。ルース駐日大使と今朝会ったが、大使も積極的に新チームの人たちに会っている。

――日米同盟の現実と、「対等な」関係を求める鳩山政権首脳たちの理解の間に食い違いがあるのか。

 添谷氏 日米関係の「対等」化志向は、鳩山政権の専売特許ではない。「対等」を求めるのは自然な欲求だが、前提として、憲法9条に基づく軍事面の非対称性とのセットで議論しないといけない。新政権の提案は漠然としており、それほど深みのあるものではない。

 田中氏 対等な関係の基礎は、日本として自分の役割をきちんと規定していることだ。いやなことに目をつぶり、いいことだけ言う、ということであってはならない。憲法9条の下で安全保障政策としてできることは何か、突き詰めることを日本は怠ってきた。それでいて、「対等」といってもせんなきことだ。

――普天間基地移設問題は、なぜここまでこじれてしまったのか。5月の期限までに結論は出るのか。

 田中氏 96年、橋本首相の指示で普天間返還交渉に携わった。十数年たってもできなかったのは、地元に受け入れる用意があるかどうかの点がすべてだった。いつ事故が起きてもおかしくない状況を放置するのか。沖縄の民意だけで決めていいのか。沖縄の基地負担の縮小も含め、判断するのは政府でなければならない。

 政府は国の安全を担保する役割を負っている。日米安保改定50周年の今年は、東アジアで日米がどんな関係を築いていくのかをよく議論してほしい。

 添谷氏 5月が米との合意成立の期限の意味なら、無理だろう。東アジア全体の安全保障の根幹にかかわるのに、超党派の合意がなく、政争の具になっている。

 田中氏 鳩山首相には決める覚悟を持って臨んでもらいたい。これは米国が使用する基地だから、米国とも協議した結果として、5月末までに結論を出していただきたい。

――中国政府は日米同盟09をどう見ているか。

 シャーク氏 胡錦濤政権は日米同盟に前向きの価値を見いだし、中国にとっても有用だとしている。日米中3か国が協議することにも関心を持っている。

――米中が世界を主導するというG2論をどう見るか。どんな米中関係が日本には好ましいのか。

 シャーク氏 米中が可能な部分で協力し合うことには賛成する。重要なのは、欧州、日本、インドなども重要な役割を担うことだ。G2論はバカげており、国際秩序を形成する能力を持った関係ではない。多くの国を巻き込む必要がある。

 添谷氏 米中関係の安定は日本の外交政策の選択肢を広げるものの、不安定な(形の)安定になる。地球規模の政策について米中の基本理念は異なるからだ。日米同盟で言えることは、日本がこれまでの外交上の資産を維持しながら、新しい道を見つけなくてはいけないということだ。

 田中氏 多極的体制の中、どんな意思決定の仕組みでいかなる世界を作るか、成案がない。中国は当面、国内の成長や所得不均衡の是正を優先するから求心力を持たない。日米は、中国を国際社会に引き込む建設的圧力をかけるべきだ。

――中国のナショナリズムにどう対処すべきか。

 シャーク氏 日米は、中国が国内向けに駆使するレトリックに過剰反応しないことが大切だ。一方、中国の教科書に日米に関する誤った記述がある場合などには、指摘する必要がある。

 添谷氏 中国社会が多元化や民主化につながりうる状況で、日本側が反日に戻すような中国への対応をとるとすれば愚の骨頂だ。

 田中氏 排他的ナショナリズムにつながるのを防ぐのは、政府の責任だ。

――日米中の3か国協議を行う場合、日本はどう主導するのか。

 田中氏 鳩山首相は、「友愛」を言うなら、東アジア各国の違いを乗り越え、安全保障環境をよくする具体的な制度設計をしてほしい。日米中の枠組みは1年以内に実現できる。議題は、軍事の透明性を向上させる信頼醸成の枠組みがよい。

――中国の軍事力増強をどう見るか。

 シャーク氏 軍事力の拡大は避けられない。この10年ほど戦略的な焦点は台湾だったが、中国軍は海賊対策など国防以外の任務も行うようになった。軍事力自体は脅威でなく、意図と組み合わせた時に初めて脅威になるということだ。

 添谷氏 中国の軍事面での近代化が進み、米国は相対的に優位性を失ってきている。中国が望んでいるのは文字通り対等な米中関係だろう。日米はこれを議題に対話をし、認識をすり合わせることが大切だ。

――北朝鮮問題に、日本はどう対応すべきか。

 田中氏 北朝鮮問題は、原理原則に従って対処することが正しい。次の5原則、〈1〉北朝鮮を核兵器保有国として認めない〈2〉各国は一貫した政策をとる〈3〉包括的な形での解決を目指す〈4〉トップ会談の選択肢は残す〈5〉危機管理計画を用意しておく――ことを守るべきだ。

 添谷氏 現状は、北朝鮮を追いつめるのが難しい状況だ。(北朝鮮を除く)6か国協議参加国が協力して迫り、有効に働いた場合に北朝鮮は譲歩するだろう。

――「東アジア共同体」構想を米国はどう見るか。

 シャーク氏 東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)は、比較的包括的な地域のプロセスで、相当定着した。それがあれば「東アジア共同体」はあまり力を持たないだろう。

 添谷氏 東アジア共同体論は、実現可能性の議論ではなく、長期的な目標として掲げられるべきものだ。

 田中氏 機能的な協力を元に、参加国の違う幾つかの枠組みを考えるべきだ。

――核持ち込み密約の公開で日米関係に影響は出ないか。

3氏の議論に耳を傾ける聴講者
3氏の議論に耳を傾ける聴講者

 田中氏 「核持ち込み」問題や集団的自衛権問題から目を背ける時代は終わった。タブーのない議論を行うべきだ。(国民の)皆さんも自分たちの問題ととらえて安全保障を考えてほしいと思う。

 添谷氏 「核兵器のない世界」に向けた長期的抑止と、当面、米国の核抑止に依存する現実の2点を指摘したい。「日本は二枚舌」と言う人がいるが、核のない世界にたどり着くまで核抑止は必要で、矛盾しない。

コーディネーター総括

東アジア全体の「公共財」に…池村俊郎・調査研究本部主任研究員

 日米同盟はいまや日本の平和と安定にとどまらず、東アジア地域全体の繁栄に寄与する広範な「公共財」の役割も果たしている。日米3論者の議論を聞き、まず感じたのはそのことだ。

 中国が台頭する東アジア地域は一歩誤ると、均衡が崩れ、危機を迎えかねない。北朝鮮の不穏な体制と核の脅威もある。重層的な多国間の枠組み創出にさらに努力し、安定と繁栄を確固たるものにしなければならない。その基盤となるのもまた、日米同盟なのだ。

 3氏とも米中G2時代といった概念に意味はない、と言う。むしろ、価値観を共有する日米同盟の強化こそが、地域全体の安定的な環境醸成に役立ち、結果的に中国を大国の責任の自覚へと導ける。専門家任せにせず、官民合同の幅広い国民的議論を通じ、日米同盟の将来ビジョンを考え、同盟の深化を図る時期に来たと思えた。

(2010年3月24日朝刊)

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