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【質疑応答】日本銀行 雨宮正佳副総裁オンライン講演会【動画つき】

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 日本銀行の雨宮正佳副総裁は2021年3月8日、東京・大手町の読売新聞東京本社で開催された「読売経済フォーラム」で講演した。テーマは「ウィズコロナ、ポストコロナの金融政策」で、オンラインでライブ配信した。講演後の質疑応答は以下の通り。モデレーターは読売新聞東京本社調査研究本部の林田晃雄主任研究員が務めた。

異次元緩和の目的は変わったのか

 林田 政策決定会合を10日後に控えた大変微妙な時期に講演を引き受けていただき、感謝したい。話は尽きていると思うが、補足的にいくつか質問をさせていただく。1つ目は異次元の金融緩和の目的が少し変わった、広がっているのではないかという気がしている。異次元緩和はもともと「2年で2%の物価上昇率を実現する」ということで、いわばデフレ脱却に明確にフォーカスして始まった政策だった。ただ現状をみると、例えばETF(上場投資信託)の買い入れについては、リスク・プレミアムへの働きかけという話があったが、明確に株価対策じゃないのかとか、あるいは国債の買い入れについても財政ファイナンス、いわゆる財政出動を日銀がサポートしているのではということを指摘する財政学の学者もいる。こうした見方が強まっている中、さきほど言ったように、当初のデフレ脱却にフォーカスした金融緩和の目的がやや間口を広げているのではという私の感じ方について、どのように考えるか。

 雨宮副総裁 ご指摘のとおり、物価安定の目標を2013年1月に2%ということで決定し、これは政府と日本銀行の共同声明にも明記したわけだが、その後、我々は大規模な金融緩和を実施してきた。その手段として、今ご指摘があったような大規模な国債買い入れやETF買い入れがあり、2020年以降はこのコロナ禍を受け、経済活動支援のために様々な措置を講じている。

 この8年間いろいろな手段を講じてきたが、基本的には時間がかかるにせよ、2%の物価安定目標をいずれは実現するために行っている政策なので、その意味では、もともとの2%の物価安定目標という考え方、位置づけは全く変化していない。ちなみに2%を巡る議論がいろいろなされているのは私もよく承知している。実際にこの間、なかなか2%を実現することは難しい状態が続いているわけですが、指摘のあったとおり、少なくともデフレではないという状況になった訳です。2%そのものを見直したほうがいいのではないかという議論があることもよく承知している。ただ、米国でも欧州でも目標とする2%というのは、目標は掲げつつも、実は長い間達成できていない。そういう意味では似たような状況にあるとも言える。大事なことは、主要国の中央銀行が目的、目標を共有し、大きなこの金融政策の方向性を共有して政策運営を行うということが、国際的な金融資本市場や為替市場の安定、ひいてはそれぞれの国の企業や家計の経済活動の安定につながっているということだ。

 やはりこの2%の目標は大事だと思っている。その考え方は基本的には変わっていない。例えばETFについても、あくまでマーケットが非常に不安になった時に、僕らはよくリスク・プレミアムを圧縮するという言い方をするが、非常に市場が不安定になった時に、中央銀行が流動性を供給するよということでリスクを小さくすることで、変動を小さくする、そのことが、市場の不安定な動きが企業や家計に影響を与えることを遮断し、プラスの影響を及ぼすということを目的にしていて、何か一定の株価のレベルの為に買い支えをするとか、そういうことではないということであるし、国債の買い入れについても、先程来申し上げたような低位で安定したイールドカーブを維持することによって、経済活動にプラスの効果を及ぼして、企業や家計の円滑な資金調達や経済活動の下支えに貢献して、2%の物価安定目標につなげるということが目標であるので、あくまで、時間はかかるが、この物価安定目標を実現するためにこの間の様々な金融緩和を行ってきているということについては、変わりはないと理解してもらいたい。

 林田 「インフレ目標の2%を堅持する」、「米欧も達成できていない」という話があった。この間、某新聞のインタビューで、財務省出身の渡辺博史さん(元財務官)が「日米欧の中央銀行が達成できもしない目標を掲げ続けることは、かえって信認に関わるのではないか」という趣旨の話をしていた。日米欧が協調してそろってやれば、為替市場への影響などもさほど出てこないのかなという気もする。渡辺氏のような、そろって目標を見直そうという指摘、提言、問題提起についてどのように思うか。

 雨宮副総裁 各国の中央銀行が大きな方向性を共有することの重要性を申し上げた。大きな方向性を共有するためには、一定の根拠がないといけない。この間、実は米国は一昨年以来、金融政策運営の点検、点検というかレビューという作業を行ってきて、様々な理論的、実証的分析を行っている。さらに欧州中央銀行(ECB)も去年から今年にかけて、やはり金融政策の点検作業をいろいろやっている。我々も今回やっている。

 その中でやはり得られる結論は、物価安定の目標を考えた場合、物価の安定の目標というのは、例えば物価統計で言えばプラスでもマイナスでもないぴったりゼロよりは、いろいろな状況を考えると若干のプラスがいいという結論が得られている。それは何かというと、非常にテクニカルになるが、物価統計には少しバイアス(ゆがみ)があるので、統計上のバイアスを是正するためには少しプラスがいい、あるいは金融政策での対応の余地ということを考えると、理屈上はインフレに対してはどんどん金利を高くすることによって対応できるが、デフレに対しては、もちろん今、欧州や日本ではマイナス金利を採用しているが、マイナス金利がプラス金利のようにどんどん深掘りできるかというとそうではないだろうと考えると、やはりインフレの対応とデフレの対応は非対称的であって、デフレにならないような一種の「政策ののりしろ」を持っておく必要があるという議論がある。

 そうしたことを考えると、今の段階では、やはりいろいろな議論、あるいは理論的、実証的な研究を重ねた上で、2%くらいが適当であるというのが今の主要先進国の中央銀行の共通理解であるというふうに思う。ただこれは、これからもいろいろな研究を積み重ねていく。世界の中央銀行では、物価という現象は非常に複雑で難しいということは、さらに明確になってきているので、引き続きいろいろな分析・研究を重ねていく分野である。

政策点検について

 林田 そろそろ点検の話に移りたいと思う。ひとつは異次元緩和の副作用の問題について。低金利政策を続けている結果、銀行の利ざやは縮小して経営環境は厳しさを増している。こういう副作用を指摘されたことによって点検をしようとなったと思う。前回の決定会合後の総裁会見、あるいはその後の「主な意見」を見ると、これはどうも長期金利の上下0.2%のバッファーをやや緩めるというか、上方向にもやや容認するという観測が市場にも流れた。私もそうなのかなと思ったが、黒田東彦(はるひこ)総裁は、先日の国会で「長期金利の変動幅を拡大する必要はない」と明言された。総裁が変更不要だと言われたことは、私も驚いたし、市場でもサプライズと受け止められている。決定会合前で微妙だということは承知の上だが、直球質問で聞く。それでは、銀行の収益環境改善のために、点検ではどういったファインチューニングをするのか。あるいは総裁は「そこの点については何もやらないよ」というメッセージを出されたのか。そのあたり、どう理解すればいいか確認したいと思う。

 雨宮副総裁 今の質問は、実は中身が非常に大きい。1問の中にたくさん入っていると思う。順を追ってお答えすると、ご指摘のとおり、低金利政策の副作用として、金融仲介機能の低下が指摘されていることはよく認識している。ただ、ぜひ理解していただきたいのは、現在のところ、我が国では金融機関は充実した資本基盤を備えていて、この長引く低金利の中でも、金融仲介機能は円滑に発揮されているということだ。実際に足元、日本銀行や政府の措置のもとで、金融機関は先ほど説明したとおり、非常に積極的に企業等の資金繰りに応えているわけで、実際に銀行貸出残高は、最近でプラス5%程度と、30年ぶりの伸びをみせているので、現段階では、低金利によって金融の仲介機能が後退していることはないと思う。ただし、副作用というのは、言わば時間をかけて累積的にたまっていくもので、その点も踏まえて金融仲介機能をどう考えるかということは点検の対象になるわけだ。そのために何ができるかということはいろいろ考えていきたいと思う。

 ポイントは副作用を抑制しながら、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくためにはどうすればいいかということだし、世の中には、副作用があるために日本銀行はもう追加緩和を行わないのではないかとか、行えないのではないかというような見方も一部あるが、そうした見方は改めてもらう必要がある。

 必要であれば、副作用を抑制しながら緩和できるようなことをどういう風に考えていくかということがポイントになるだろうと思う。その上で、その中身はいろいろな分野があると思うが、ひとつ今お尋ねになったのは、長期金利の変動幅をどうするか。そういう論点があることもよく知っている。

 これは、副作用の中の低金利による金融機関経営への影響というよりは、国債市場の機能度に対する影響、副作用ということも念頭にある問題意識かなと思う。今、指摘にあった総裁の発言というのは、たぶん先週の国会の発言だったと思う。総裁も当然、「点検の中で議論になるが」と前置きした上でご自身の考え方として述べられたと思うし、実際、委員会のメンバーの中にはいろいろな意見があるでしょうから、来週の会合で議論することになると思う。ただ、議論のポイントは、先ほどの講演でも申し上げたが、3つぐらいある。ひとつは、2018年に確認したとおり、金利は経済情勢等に応じて上下に変動しうるということ。それが1つ目だ。それから2つ目は、特に超長期金利が過度に低下すると、これは家計を中心に人々のコンフィデンス(信認)に悪影響を及ぼす可能性があるということ。それから3つ目に、しかし、今はこのコロナ禍の下で、イールドカーブ全体を低位で安定させることが重要な局面であるということ。この3つのポイントを前提に議論することになると思う。「お前はどうなんだ」と言われれば、私自身はイールドカーブ・コントロールの枠組みのもとでも、緩和効果が損なわれない範囲内で、金利はもっと上下に動いてもいいのではないかという風に思っている。

異次元緩和の副作用にどう対処するか

 林田 金融仲介機能には大きな影響がでてないという話あったが、コロナ禍でいうと、地銀はメガバンクよりも収益環境が悪く、赤字のところが多い。コロナで影響が大きい飲食宿泊業は地銀から借りていることが多い。本業の収益環境をよくする手立てを講じないと、企業金融の支援策は日銀も講じているが、いわゆる本業の収益環境改善策はとらなくて、金融システム安定や地方経済の観点から見て大丈夫なのか。

 雨宮副総裁 ご指摘のとおりであって、地域経済を担っている地域金融機関にとっては、地域経済における人口の減少や企業数の減少、それを背景とする資金需要の減少という、構造的な困難を抱えている。その上で低金利状況が続くということが、経済の実態や金融環境を通じて経営の大きな重石になっているということは強く認識している。それに対する対応としてはいくつかあるが、まずひとつは、地域経済も含め、経済をまずしっかりさせることが第一だ。マクロ経済やマクロの物価を担当している私どもとしては、金融緩和を通じて経済全体をしっかりさせるということが第一だと思う。

 実際にこの間、日本経済の状況が良くなったことで、例えば、資金需要がそれまでと比べれば増えているとか、あるいは倒産などに伴う信用コストが小さくなるという格好で、実は地域金融機関の経営にもしっかりプラスの影響が及んでいる部分があるわけだ。それと並んで必要なのは、コロナも踏まえ、新しい時代の要請を踏まえてどのように経営を転換させていくのか、ビジネスモデルを転換させていくのかということも大きな課題だ。

 私どもはそうした地域金融機関の前向きな取り組みを後押ししたいという観点から、そうした取り組みで一定の成果を上げた先に対しては、当座預金に対して一定の金利を付けるということで、そうした前向きな努力をサポートするような、新しい制度も導入した。こうした制度も含め、地域金融機関の前向きな努力というものを後押ししていきたいという風に思っているし、それ以外でも、様々なセミナーや意見交換、あるいは我々の実地考査などの場を通じて、新しい時代に向けたビジネスモデルの転換に向けて議論を積み重ねていきたい。

ソーシャルディスタンスに配慮した質疑応答(右が雨宮副総裁)
ソーシャルディスタンスに配慮した質疑応答(右が雨宮副総裁)

ETFの買い入れについて

 林田 ETFの話に話題を移したい。日銀の多額のETF買い入れによって株式市場の価格形成機能、価格発見機能がゆがめられる、あるいは企業のガバナンスがゆるむおそれがあるのではないかという指摘がある。講演では、株価の上昇に歩調を合わせるようにETFの買い入れが減少してきているという話があったが、株価が崩れていけば、(買い入れが)増えていくことが予想される。そうした日銀の動き自体が、冒頭に申し上げたような問題をはらんでいないか。白川総裁は臨時、異例の措置としてETFの購入を決断した。これが長期化、多額化していることについてどうお考えか。

 雨宮副総裁 ご指摘のとおり、ETFの私どもの購入についていろいろな懸念や問題が指摘されていることは、我々も十分認識している。そうした問題点に対する対応をしながら買い入れを進める必要があると思っている。1つ理解していただきたいのは、先ほど講演でも申し上げたが、我々のETFの購入は、いわゆる相場誘導というか、一定の相場水準をむりやり実現するために、誘導するためにやっているのではなく、あくまで市場が混乱する時にリスクを小さくする、それによってある種のマーケット参加者や企業の安心感を醸成するということのためにやっていて、ということは理解していただいた上で、そうは言ってもこれだけ長期大量に購入していれば、いろいろなところに影響を及ぼす可能性があり、そういう副作用をできるだけ小さくするよう、いろいろな努力をしてきているつもりだ。

 例えば、個別銘柄の株価に偏った影響が生じないように、ETFの買い方もできるだけ幅広い銘柄から構成されるTOPIX(東証株価指数)に連動するもののウェートを高めてきている。TOPIXはほぼ全部が、平均で買っていくことになるので、個別の銘柄に偏らないように、TOPIXに連動する部分のウェートを高めるとか、それから例えば、コーポレートガバナンスの問題がよく指摘されるが、投資信託委託会社は、あくまでスチュワードシップコードを受け入れ表明したところにお願いするという格好にして、そうした投資信託委託会社が適切に議決権を行使されるという仕組みにするようにしている。

 それから、ご指摘にもあったが、できるだけメリハリのある買い入れ、べったりと買うのではなくて、ちなみに月間買い入れ額で言うと、先ほど申し上げたが、昨年春先は月間1兆5000億円くらいになっているが、この2月はたしか1000億円を割っているくらいなので、できるだけメリハリのある買い入れをするとか、さらに買い入れたETFを市場に戻すようなETFの貸付制度を開始し、新たな市場をつくるというようなことも含めて、いろいろな工夫をこらしてきている。

 ETFの買い入れ自体は、そうしたリスク・プレミアムの圧縮を通じて、望ましい金融環境をつくるということで、金融緩和の重要な一要素なので、引き続き、続けていくことが適当だと思っているが、続けていく以上は、今ご指摘のあった点も含めて、さらにどういうことができるか、これも次の点検で議論して、結論を出したいと思う。

  モデレーターの林田主任研究員
  モデレーターの林田主任研究員

 林田 (ちまた)では、日銀が(ETFを)買う時は、午前に0.5%下がって、午後に買う。0.5%ルールがあるのではないかと言われている。それを今度は、かつては1%ルールと言われていた。そのあたりに戻すのではないかという観測もでている。その点について、決定会合の直前に、ずばりお答えいただけるとは思っていないが、どういうふうに受け止めているか。

雨宮副総裁 マーケットは当然のことながら、日本銀行がいつどういう条件で買い出動を行うかということに大変関心をお持ちだろう。そうした見方がアナリストあるいは分析家、実務家の間でもいろいろと研究が進んでいると思うが、私どもは先程来、申し上げたとおり、マーケットの安定を確保する観点から、どういう状況で市場が不安定になった時に、どういう買い入れをすれば、一番効果的かというのを考えながら買い入れを行っているので、そういうルールに基づいて機械的にだけやっているわけではない。あくまでもこの後も、今度の点検でも、先程来申し上げたとおり、マーケットの安定を確保して、効率的に政策効果を発揮させるためにはどういう買い入れのやり方がいいかということをもう一度委員会で議論したいと思っている。

当日配信された講演会の全編動画は こちら からご覧になれます。

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1919253 0 読売国際経済懇話会(YIES) 2021/03/18 11:59:00 2021/03/18 12:13:48 2021/03/18 12:13:48 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210317-OYT8I50023-T.jpg?type=thumbnail

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