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    消防無線機器の談合賠償、特約店の壁 

    • 名古屋市消防局が導入したデジタル無線機。車載型(後方)と携帯型がある=中根新太郎撮影
      名古屋市消防局が導入したデジタル無線機。車載型(後方)と携帯型がある=中根新太郎撮影

     消防救急用のデジタル無線機器を巡る談合で談合したと認定されたメーカー側に違約金や損害賠償を請求するかどうかについて、発注元の自治体や消防組合の対応が分かれている。直接の契約相手がメーカーではなく特約店などのケースがあるためだ。未請求の自治体などに対しては、住民監査請求や住民訴訟など、各地で賠償請求するよう求める動きが広がっている。(越村格)

     総務省消防庁によると、消防救急無線は2003年10月の電波法の基準改正で、16年5月末までに全面デジタル化された。従来のアナログ式よりも現場で使えるチャンネル数が増え、秘匿性も高まるという。

     公正取引委員会は無線機器メーカー5社のうち、談合と認定して課徴金の支払いを命じた4社分の工事を公表。10~14年に全国でのべ236の自治体や消防組合が契約していた。

     名古屋市は14年3月に日立国際電気と約10億6629万円で契約。同社は公取委に談合を申告したため課徴金の納付を免れたが、市によると、同社は談合認定後の昨年4月、賠償金として2億円余りを市に支払った。別のメーカーと契約した千葉県や埼玉県央広域事務組合、山口県下関市なども支払いを受けている。

     大半の契約は、受注業者が談合した場合、不当に価格がつり上げられたとして契約額の1~2割を違約金などとして支払わせる内容になっているが、談合したメーカーとの直接契約でない場合、支払いを求めないケースが目立つ。公取委の認定では、メーカー以外の受注業者が談合に関与したかどうかが不明だからだ。

     愛知県みよし市などでつくる尾三びさん消防組合は12年3月、沖電気の特約店と2億7300万円で契約した。市議が住民監査請求を行ったが、同組合の監査委員が「(談合認定された)沖電気との契約ではない」などとして棄却したため、市議は今年8月、組合に対し、同社に違約金などを支払わせるよう求める住民訴訟を名古屋地裁に起こした。

     岐阜県の揖斐郡消防組合や同県中津川市なども同様の理由で請求せず、住民訴訟を起こされたが、ともに「業者とメーカーとの談合が立証されていない」と争う姿勢を示している。

     一方、特約店などにも責任があるとして、賠償請求に踏み切る例もある。

     同県山県市と下呂市は、賠償に応じない契約先の通信業者と沖電気を提訴する方針を明らかにし、山県市の担当者は「通信業者も共同不法行為の当事者と判断した」と説明している。岡山県瀬戸内市も、業者側に不当に得た利益の返還を求める民事調停を岡山簡裁に申し立てている。

     談合の認定を巡っては、富士通ゼネラルが公取委の処分の取り消しを求め、東京地裁に提訴。同社や関連会社と契約した札幌市、大阪市などは訴訟の推移を見守りたいとしており、請求を見合わせている。

     税金の使い道を監視している全国市民オンブズマン連絡会議(事務局・名古屋市)は、未請求の自治体に住民監査請求などを行っていく方針で、事務局長の新海聡弁護士は「談合とされているのに賠償されないのは、納得できるものではない」と話している。

    <消防救急用のデジタル無線機器を巡る談合>

     全国で行われた入札で事前に落札業者を決めていたとして、公正取引委員会は2017年2月、NEC、沖電気工業、日本無線、日立国際電気、富士通ゼネラルに、独占禁止法に基づく排除措置命令を出した。談合は遅くとも2009年12月以降、14年4月までの間にあったとされ、公取委は、談合を自主申告した日立国際電気を除く4社に総額約63億円の課徴金納付も命じた。

    2018年10月12日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
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