「赤毛のアン」は、深く大きな愛情に包まれたけれど…

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

編集委員 猪熊律子

 楽しみに見ているテレビドラマがある。NHK総合テレビで2020年9月から「シーズン1」が始まり、現在、「シーズン3」が放映中の「アンという名の少女」。カナダの作家、L・M・モンゴメリが1908年に発表した小説「赤毛のアン」を原作としたドラマシリーズで、カナダCBCとNetflixが共同で制作した。

懐かしいシーンに加えて、いじめや虐待はかなりリアル

2020年9月から「シーズン1」が始まり、現在、「シーズン3」が放映中の「アンという名の少女」(「アンという名の少女 DVDBOX シーズン1~3」 発行・販売元:NHKエンタープライズ 価格:シーズン1:16,720円(税込み)、シーズン2、3:20,900円(税込み)(C)2017 Northwood Anne Inc.)
2020年9月から「シーズン1」が始まり、現在、「シーズン3」が放映中の「アンという名の少女」(「アンという名の少女 DVDBOX シーズン1~3」 発行・販売元:NHKエンタープライズ 価格:シーズン1:16,720円(税込み)、シーズン2、3:20,900円(税込み)(C)2017 Northwood Anne Inc.)

 カナダのプリンス・エドワード島を舞台に、赤毛でそばかすだらけの孤児、アンが、マリラとマシューという初老の姉弟に手違いで引き取られ、様々な経験を積みながら大人になっていく。ドラマでは、ふくらんだ袖のドレスに、紫色のブローチ、砕けた石盤など、子どもの頃に読んだ懐かしいシーンが次々と出てくる。他方、原作では兄、妹のマシューとマリラが姉、弟になっていたり、原作にないシーンや人物が登場したり。極めてオリジナル性が高く、人種、ジェンダー、性的マイノリティー、所得格差など、すこぶる現代的なテーマも扱われる。この点については、視聴者の間で様々な評価があるようだが、「親子」や「家族」、さらには「多様性」について考えさせる質の高い作品であることには違いない。

 ドラマの描写で印象的な点はいくつもある。いじめや虐待の描き方がかなりリアルで、容赦ない点もその一つだ。例えば、孤児院で暮らすアンが他の子どもたちに取り押さえられ、ネズミを顔に押し付けられる――。そうしたシーンが、薄暗い映像とともに、フラッシュバックの手法で幾度となく映し出される。

 「赤毛のアン」は「児童文学」「少女文学」ともいわれ、少女を夢中にさせる甘い小説、というイメージも強いが、それを覆すような描写ともいえる。だが、そうした場面も持つこのドラマを見ていると、いじめがいかに残虐で、人の心に大きな傷痕を残すのかがよくわかる。アンの特徴である豊かな想像力や突飛といえるほどの空想力も、つらい現実世界から逃れるために少女が編み出した「生きるよすが」だったことが、理屈抜きに伝わってくる。

 アンの養親になったマリラとマシューの描き方も、リアルで等身大だ。ともに独身で、子育て経験のない2人が、「頑固」「内気」というそれぞれの殻を打ち破り、失敗や挫折をしながらも、アンと「家族」になっていく。血のつながりはなくても「親子」になれることや、「親」も子どもと同様、成長して「親」になっていくものだということがよく理解できる。

 アンは、マリラとマシューの深く、大きな愛情に包まれて、「私は愛されている。だから私は大丈夫」と言えるまでに成長した。翻って、日本の子どもの現状はどうだろうか。

  ※NHKの放送は3月6日で終了。

1

2

3

スクラップは会員限定です

使い方
2747180 0 安心コンパス 2022/02/10 15:00:00 2022/03/07 07:41:33 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/02/20220208-OYT8I50026-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)