「街の曲芸師」出前持ちがウーバーイーツになるまで

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編集委員 片山一弘

 最近、よく見かけるもののひとつに、ウーバーイーツの配達員がある。料理を飲食店から消費者のもとに届ける宅配サービスだ。ロゴマークの入った四角くて大きな専用バッグを背負い、スマホの地図を頼りに自転車をこいでいる(車やバイクを使う配達員もいるようだが、街中で目に付くのは自転車だ)。

せいろを高々と積み上げ、自転車で東京・銀座を行くそば屋の出前持ち(1950年5月)。「江戸ッ子夏姿」の見出しがついた当時の記事には、6月から食堂でそばが食べられるようになるため、昔のような出前持ち予行演習を始めた――とある
せいろを高々と積み上げ、自転車で東京・銀座を行くそば屋の出前持ち(1950年5月)。「江戸ッ子夏姿」の見出しがついた当時の記事には、6月から食堂でそばが食べられるようになるため、昔のような出前持ち予行演習を始めた――とある

 筆者が住んでいるのは東京の繁華街に近い住宅地。昨年の冬あたりから、よく見かけると感じていたのだが、今年になってさらに増えた。新型コロナウイルスの流行で緊急事態宣言が出た時期に、外出を自粛した人たちの利用が急増したのだろう(本業の仕事が減って配達員になる人も増えたと聞く)。緊急事態宣言が解けた後も減る気配はなく、今も、同業他社も含め、似た風体の自転車と頻繁にすれ違う。

料理の宅配と言えば、日本伝統の「出前」

 料理を消費者の家まで配達するサービスは、昔風に言えば出前だ。

 東京は、前身の江戸の頃から出前の発達した都市だった。歌舞伎の代表的な演目「助六」にも、「福山のかつぎ」という、うどん屋の出前持ちが登場する。

 江戸は当時、世界でも有数の人口を抱えた大都市で、長屋のように人口が密集した集合住宅も多く、それらの住人を目当てに、天秤(てんびん)棒の両端に(おけ)や籠をぶら下げて、魚介類や豆腐などの食材・食品、生活雑貨などを売り歩く「棒手振(ぼてふ)り」「振り売り」も盛んだった。落語「芝浜」の主人公も棒手振りの魚屋だ。

出前の刺し身代をだまし取る詐欺事件を伝える記事=1875年(明治8年)7月9日朝刊
出前の刺し身代をだまし取る詐欺事件を伝える記事=1875年(明治8年)7月9日朝刊

 読売新聞の記事データベースで、「出前」を検索してヒットする最も古い記事は、1875年(明治8年)7月9日にある。出前にまつわる詐欺事件だ。

 <浅草田原町三丁目の石井幾次郎といふ魚屋より芝崎町の古川與三次の家へ刺身を二朱(とり)よせたるに(しばら)くすると皿を取りに来て代を渡して()ッたれど全く(かたり)仕業(しごと)にて幾次郎は大きに(おど)ろき誰も取りに上げたものは有りませんとて一番してやられ又寿町の長尾卯之助の(うち)にても同町の塩井高富といふ蕎麦(そば)やより蒸籠(せいろう)七ツを取りよせると暫くして道具と代を取りに来たゆゑ渡してやると(これ)も騙にて蕎麦の道具は近所へ(すて)ていッたといふ皆さん御用心成さいまし>

 当時、出前の代金は、食後に容器を引き取る際に支払われていたようだ。その商習慣につけこみ、店員のふりをして客から容器と代金をだまし取る犯罪だった。同じ手口による詐欺犯はなかなか撲滅できなかったようで、この後も十数年間にわたり、似たような事件が繰り返し紙面に報じられている。

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1485476 0 ちょっと前はどうだっけ? 2020/09/18 10:00:00 2020/09/18 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200917-OYT8I50062-T.jpg?type=thumbnail

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