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「保存食」「非常食」は、いかにしておいしくなったか

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編集委員 片山一弘

 ある大学で、文章の書き方の講義を担当している。

 昨年の初夏に「今年食べた中で印象に残る食べ物・食事」をテーマに作文の課題を出したら、「サトウのごはん」を挙げた学生がいた。政府が緊急事態を宣言した時期、一人暮らしの息子のためにご両親が大量の「サトウのごはん」を送ってきて、期間中は、そればかり食べていたのだという。

 筆者もここ1年は、その種の食品を口にする機会が増えた。

腐らず干からびず…“チン”すれば炊きたてのよう

「防災の日」を前に東京・大手町の三和銀行(現・三菱UFJ銀行)で防災訓練が行われ、行員らは終了後、地下倉庫に保管してある乾パンなどを試食した=1987年(昭和62年)8月31日
「防災の日」を前に東京・大手町の三和銀行(現・三菱UFJ銀行)で防災訓練が行われ、行員らは終了後、地下倉庫に保管してある乾パンなどを試食した=1987年(昭和62年)8月31日

 「新型コロナウイルスに感染し、無症状または軽症のため自宅隔離をする」という可能性が、誰にとっても現実味を帯びてきた頃。筆者は一人暮らしなので、食べ物だけは備蓄しないと悲惨なことになる。体調不良でも手間をかけずに食べられるものがよかろうと、「サトウのごはん」のような「無菌包装米飯」や、カレー、中華丼、雑炊などのレトルト食品を約2週間分買い込んだ。

 それから9か月ほどが過ぎた。幸い、まだ自宅隔離の機会はないけれど、食品はやがて賞味期限を迎える。期限切れの近いものを食べては、代わりを購入して一定量の備蓄を保ち続けている。

 改めて感じることだが、近ごろの保存食品はおいしい。炊いてから何か月も経過した白米が、腐ることも干からびることもなく、電子レンジで加熱すれば炊きたてのようにおいしく食べられるというのは、一昔前の台所を思えば、驚くべきことだ。

「常温保存可」が保存食と同義だった時代

「農繁期の食生活」と題した記事。この頃、保存食といえば常温で保存できる料理を指していた=1954年(昭和29年)6月4日朝刊
「農繁期の食生活」と題した記事。この頃、保存食といえば常温で保存できる料理を指していた=1954年(昭和29年)6月4日朝刊

 「保存食」という言葉の中身は、この半世紀あまりで大きく変わった。

 かつて、この言葉は、年末のおせち料理に関する記事の中で、よく紙面に登場していた。例えば1954年(昭和29年)12月26日朝刊婦人面。<お正月向きのお酒のさかな>という記事は<お正月は保存のきくものを用意して、お酒のさかなでお客さまを喜ばせたいもの。>との書き出しで、いくつかの料理のレシピが紹介されている。塩サケ、塩ウニ、塩辛。冷蔵庫の普及率がまだ10%にも及ばない頃だから、常温で保存できる料理こそが「保存食」だった。

 ところが、その約30年後には、常温で保存できない塩辛が記事になっている。83年(昭和58年)2月22日朝刊婦人とくらし面の<塩離れ進む保存食品 日持ちに注意>に、製造日から1か月後の塩辛が腐ったとして<日持ちするものと思い、冷蔵庫に入れていなかったが、そんなに早く食べられなくなるものか>との消費者の声が紹介されている。山梨県消費生活センターが受けた苦情の事例だ。

減塩ブームの中、「塩辛さはそのままで食塩65%カット」をうたう商品が登場した=1982年(昭和57年)6月26日
減塩ブームの中、「塩辛さはそのままで食塩65%カット」をうたう商品が登場した=1982年(昭和57年)6月26日

 <かつての塩辛の塩分は二〇%以上。冷蔵庫に入れなくても半年間は持った。ところが、この製品の塩分は六%とかなり薄味で、「冷蔵庫でも一、二か月しか持たない」と同センターは見る>

 記事では塩辛のほか、つくだ煮、梅干しなどの商品でも、昔に比べて塩分量が減り、昔ほど日持ちがしなくなった実情を紹介している。

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1803715 0 ちょっと前はどうだっけ? 2021/01/29 10:00:00 2021/01/29 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210127-OYT8I50073-T.jpg?type=thumbnail

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