読売KODOMO新聞誕生秘話
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2011年3月に創刊した読売KODOMO新聞が10周年を迎えた。
全国で小学生向け新聞が発行される中、KODOMO新聞は唯一、社会部の記者が紙面を作っている変わった新聞だ。社会部といえば、事件・事故。口が鋼鉄の扉にでもなっているのではないかと思うくらい口の堅い刑事や検事から何とかネタを聞き出し、他紙に先んじて特報する。そんなことにたけた記者がずらりとそろっている。自分自身、10年前は事件記者を自認していた一人だった。

ある日、仲の良かった鬼デスクにたばこ部屋に呼ばれた。
ただ、胸がドキドキするだけで文章を書くとろくなものにならないことは、無残に散った過去のラブレターの数々が物語っている。しっかり準備しなくてはいけない。「いつごろ創刊する予定なんですか?」。曰く、「半年後。テスト紙面はもう作らないといけない」。
確かに、締め切りが近づかないとスイッチが入らない「怠け癖」があることも事実だ。準備期間は長ければいいというわけでもない。
とにかく、子ども向けの新聞や雑誌、本を読むことから始めた。しかし、なかなかこれが遅々として進まない。ただの読み物として読むならなんとかなるのだけれど、「参考にしよう」と思えば思うほど、つらくなってくる。まるで昔の受験勉強の悪夢を見ているようだ。
そんなわけで、同僚と考えたのは、普通の楽しい記事を書こうということだった。あまり肩肘を張らず、社会の出来事をしっかりわかりやすく書けばいいのではないかと。ふんわりとした方針だったが、テスト紙面の締め切りが近づく中、実際の紙面作りを少しでも前に進める必要があった。
その後、紙面全体の構成(ニュースと趣味のページの割合など)もなんとなく決まり、テスト紙面も突貫作業で着実に仕上がっていった。写真やイラスト、図表が多く、子どもたちに大人気の名探偵コナンのキャラもあしらった紙面は社内での評判も上々だった。
そして、その日はやってきた。2010年12月21日。はじめてテスト紙面を外部の人に見せるモニター調査を実施したのだ。正直、自信はあった。

モニター調査は、都内の雑居ビル内で行われた。小学校低学年、中学年、高学年の児童を集め、4人ごとのグループに分けた。彼らが新聞を読み、感想を語ってくれるのをマジックミラー越しにながめるやり方だった。
最初のグループにテスト紙面が配られた。ミラー越しに紙面を作った人がいるなんて知りもしないで、興味津々に新聞のページをめくる子どもたち。「そこだ、そこ。そのページをしっかり読んでほしい。時間かかったんだから……」。いつしか、拳をぎゅっと握りしめながら観察をしていた。