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「木の家」のしなやかさ ~福島から岡山へ~

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社会部デスク 木下敦子

 童話に出てくる3匹の子ブタがつくる家のうち、2番目の子ブタがつくった木の家はオオカミに吹き飛ばされてしまうらしい。が、現実の木の家はものすごく強いのである。その強さとしなやかさを実感するストーリーを最近、知った。

東日本大震災の仮設住宅が、岡山で恒久的な復興住宅に変身

今年1月、岡山県総社市に完成した「復興住宅」。福島県いわき市で東日本大震災の被災者のためにつくられた仮設住宅の材料を「再々利用」している
今年1月、岡山県総社市に完成した「復興住宅」。福島県いわき市で東日本大震災の被災者のためにつくられた仮設住宅の材料を「再々利用」している

 今年1月、岡山県総社市に3棟の木造住宅が完成した。木組みの内装は、ロフトもついていて、「木のおうち」という表現がぴったりの癒やしの雰囲気。この家は、2018年7月の西日本豪雨で家を失った人が、これからずっと住み続けるためにつくられた「復興住宅」だ。前身は、仮設住宅だった。それもただの仮設住宅ではない。もとをたどれば、はるばる700キロ離れた福島県いわき市で使われていた仮設住宅なのだという。

いわきと総社の地図
いわきと総社の地図

 11年3月の東日本大震災で、津波だけでなく原発事故による避難者も多かった福島県では、計1万6800戸もの仮設住宅が必要になった。このうち約8000戸は、木造で建てられた。仮設住宅というとそれまでは「プレハブ」で建てられてきたが、未曽有の災害で被災地のあちこちで住宅が必要になり、「プレハブ仮設だけでは間に合わず、地元の大工さんの手を借りて木造も多く発注することになった」(福島県建築住宅課)という。

 そうした木造仮設のうち、福島県いわき市でつくられた24棟(46戸分)が、震災から7年後、西日本豪雨の被災地となった岡山県総社市に無償で譲渡された。その舞台裏が、なかなか興味深い。

構造がシンプル、建てやすくて解体しやすい「板倉構法」

畠和宏さん(岡山県立大助教)
畠和宏さん(岡山県立大助教)

 総社市には岡山県立大がある。この大学に豪雨前年の17年、縁あって助教として着任していた畠和宏さん(33)は、震災時は筑波大の大学院生として、いわき市の仮設住宅造りを現地でみていた人物だ。畠さんの恩師で建築家の安藤邦廣さん(現在は筑波大名誉教授)が普及を進めていた「(いた)(くら)構法」が、いわき市などの木造仮設で採用されたからだ。

 柱の間にスギ板を落とし込んで壁を作る日本伝統の板倉構法は、構造がシンプルで建てやすく、解体しやすい特徴がある。つまり、移築・再利用がしやすい。それに、「調湿性と断熱性が高く、仮設住宅に向いている」(いわき市などでの仮設づくりを取り仕切った地元建設会社の責任者・遠藤孝幸さん)のだという。

 だから、18年7月、西日本豪雨に遭遇した畠さんはすぐに思う。「岡山でも仮設住宅を建てるなら、あのいわきの住宅を使えないか」と。畠さんは「木造の仮設住宅」に大きな可能性を感じていた。

 木材は耐久性が高い。それに、災害で家を失うというつらい体験をした人たちが住む家だけに、「木のぬくもりでほっとしてもらうことができれば」という気持ちがあった。

「板倉構法」で建てられたいわき市の木造仮設住宅(撮影・斎藤さだむ氏)
「板倉構法」で建てられたいわき市の木造仮設住宅(撮影・斎藤さだむ氏)

 師の安藤さんに相談してみると、ちょうどその頃、いわき市の木造仮設はその役割を終えて解体されるところだった。奇跡的なタイミングといえた。畠さんは総社市役所に電話して、「いわき市の木造仮設が使えるかもしれない」と伝える。これが、豪雨発生から間もない7月12日のこと。

 そこからの総社市の対応は早かった。4日後には畠さんを市の災害対策本部会議に招いて直接話を聞き、さらに4日後の7月20日には、いわき市の木造仮設を総社市に運んできて建設するための関連予算が総社市議会で可決され、<仮設住宅の大移動>というプロジェクトが正式に決まる。畠さんが最初に市に電話してから約1週間というスピードだった。

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1922930 0 デスクの目~社会部 2021/03/19 15:00:00 2021/03/19 15:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210318-OYT8I50060-T.jpg?type=thumbnail

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