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ネガティブからポジティブに…「注目しかない」

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社会部デスク 木下敦子

 晩ご飯を用意してくれた妻(あるいは夫、あるいは父や母)に絶対に言ってはいけないセリフの一つが、「これしかないの?」だろう。仮に思ってしまったとしても、決して口に出してはいけない。

広辞苑(第七版)には、「しか」という言葉は「わずかにそれだけである意を表す」と説明されている
広辞苑(第七版)には、「しか」という言葉は「わずかにそれだけである意を表す」と説明されている

 このセリフには、<本当は他のものが食べたかったのに……>とか、<おかずが少ないな……>とか、そういうネガティブな心の声が表出してしまっている。「~しかない」という限定表現は、このように否定の響きをもって使われるのが一般的だと思っていた。念のため広辞苑で調べてみると、やはり

 しか(助詞)=後に打ち消しの語が来て、わずかにそれだけである意を表す……とある。

 が、春の異動シーズン。いろんな場面でいろんな人があいさつのメッセージを述べる中で、この「~しかない」が劇的な変化を遂げていることに、ここ数年、何とはなしに気づいていた。そう、「感謝しかない」というフレーズである。

前向きな「感謝」+否定的な「しかない」=特別な「感謝」

2006年8月7日群馬版より
2006年8月7日群馬版より

 感謝というポジティブな名詞のあとに、「しかない」というネガティブ感のある限定の表現。文法上は誤用ではないだろう。感謝以外の選択肢はないのです、と言い切ってしまうことで、「私はものすごく感謝しているのです」という気持ちを伝える作用を狙う。

 否定っぽい響きを、特別な肯定感に変えてしまうところが何とも心憎く、語感の良さも相まって、いつの間にかかなり広まっているようだ。

 誰が使い始めたのかは定かではないが、試しに読売新聞のデータベースで「感謝しかない」という記述を過去30年分、検索してみると、最も古い登場は2006年8月7日の群馬版。館林市に音楽館を建設してもらえることになった男性コーラスグループ「ダークダックス」のメンバー3人が地鎮祭に参加して、「皆さんにはよくやっていただき、感謝しかない」と笑顔を見せた――とある。

 その後、2010年頃までは年に1件か2件の登場だったのが、14年以降は2ケタ台になり、19年には95件、昨年には143件に上っていた。

 今年に入っても30件(4月13日現在)と、ペースは落ちていない。ちなみについ最近では、俳優・田中邦衛さんの死去にあたり、ドラマ「北の国から」の舞台となった北海道富良野市で「邦衛さんのおかげで素晴らしいドラマに出会え、感謝しかない」(60歳代男性)、「富良野のことを気遣ってくれて、感謝しかない」(70歳代男性)といった声が上がっている。これまでのいわゆる「流行語」とは違って、幅広い世代に浸透しているようだ。

読売新聞に登場した「感謝しかない」の記事数
読売新聞に登場した「感謝しかない」の記事数

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1987912 0 デスクの目~社会部 2021/04/16 15:00:00 2021/04/15 18:51:01 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210414-OYT8I50069-T.jpg?type=thumbnail

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