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読書感想文の正体

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社会部デスク 新庄秀規

 いにしえから、学校で子どもを悩ませる問題に、「読書感想文」がある。課題図書を読まされ、「では、感想文を原稿用紙2枚に書くように」と言われ、困惑しなかった人は幸せだと思う。

読書感想文が苦手な子どもは多い。子どもが本嫌いになる理由の一つは読書感想文ではないだろうか
読書感想文が苦手な子どもは多い。子どもが本嫌いになる理由の一つは読書感想文ではないだろうか

 「感想文」というくらいだから、素直に読後の感想を書けばいい、というわけではないところに問題の本質がある。

 たとえば、「どうしようもなくつまらない」と思ったとしよう。原稿用紙にそれを書いたら、もう書くことがない。つまらない理由をいろいろ挙げるのも面白いとは思うのだけれど、とても先生はOKを出してくれないだろう。

 ストーリーに立ち入るのもどうなのか。たとえば、「田中正造はがんばったと思う」くらいなら許されるだろうけれど、「『こころ』の先生は、あそこで自殺すべきじゃなかった」と話の筋についてあれこれ意見を言うのは少し違和感がある。

 本の末尾にある解説文を写すという定番のインチキもあるが、そもそも読書感想文で「筆者の社会の現実そのままをとらえようとする筆致は~」といった作者評、作品評は求められていないのではないか。

 少なくとも私は子どもの頃、「読書感想文の書き方」たるものを教えてもらった覚えはない。優秀な感想文はクラスで読み上げられていたような記憶もあるから、課題図書を読んだ証拠(アリバイ)以上のものを求められていることは確かだ。でも、何が求められているのかがよく分からない。

 読書感想文の道は、とかく幅が細い。そして、この道は高校までずっと続くからやっかいなのだ。音楽や映画、絵画は、「泣いちゃった!」「感動した!」「これは大好きだ!」と友だちと言い合えば十分なのに、どうして本だけは、何時間も原稿用紙とにらめっこをするという苦行が求められるのか。子どもが本を嫌いになる大きな理由の一つに、この読書感想文の存在があるではないかとずっと考えてきた。

 10年前に読売KODOMO新聞を創刊した時、ニュース面以外のページでいち早く決まったのが、「本のページ」だった。活字離れに苦しむのは、新聞社だけではない。良書をどんどん紹介して、子どもたちが本に、そして活字にもっと親しんでもらえれば……。

 問題は体裁である。まずは文化面にある書評欄を眺めてみたものの、日々、事件や事故を追いかけてきた社会部の記者たちが、児童文学についてあれこれ語ったものを読みたいだろうか。では、記者それぞれが読書感想文的なものを書くとしても、まさに何を書いていいのやら……。

 そこで思いついたのが、「本屋さんのポップ」であった。たくさんの本がある場所といえば、図書館と書店であるが、大きな違いは、書店が売りたいと考えた本をしっかりPRしているところだ。本の並べ方をはじめとしてPRの仕方はたくさんあるが、最も分かりやすいのがポップだ。書店員がこの本の肝をじっくり書く。センスのある短い言葉でこの本の良さをズバッと表す……。大きな書店に行くと、必ず一つは心に刺さるポップに出会える。

 そうか。本の読みどころを書けばいいのだ。

 それに気づいたとたん、目の前がパッと明るくなった。これなら書ける。それぞれの記者が思い思いに「この本はこう読んだら面白い」というところを書けばいいのだ。これを「読書感想文」と呼んでいいのかどうかは分からないけれど、どんなに難しそうな本でも、記者がいろいろな工夫をこらして本をアピールするという企画なら、読者以前に自分が読んでみたい。

読書感想文の正体を探った読売KODOMO新聞2018年7月12日号の『読書感想文新聞』
読書感想文の正体を探った読売KODOMO新聞2018年7月12日号の『読書感想文新聞』

 というわけで、実際の書店員にオススメの本を選んでもらい、記者が考えたポップと、(こん)(しん)の「読書感想文」を掲載した「本屋さんイチオシ」というコーナーがスタートした。あれから10年。いろいろな企画が始まっては終わった中で、このコーナーだけはずっと掲載され続けている。週に2冊を紹介しているので、のべ1000冊超は紹介したことになる。同じ本を紹介したこともあるが、記者によって書き方が全く違うので、まるで別の本を紹介しているように見えるのがいい。ちなみにこの方法だと、音楽や映画、絵画の感想文も書けてしまう。

 6月1日から、全国のおよそ170書店で、この「本屋さんイチオシ」で1年間紹介した100冊を並べたフェアが始まる。書店によっては、KODOMO新聞で使われたポップを飾ってくれるところもある。コロナ禍でなかなか外出は難しいところだけれど、街で書店を見かけたら、寄っていただけるとうれしい。

読売KODOMO新聞で紹介された児童書が並ぶブックフェアのコーナー(2020年6月、東京都中央区で)
読売KODOMO新聞で紹介された児童書が並ぶブックフェアのコーナー(2020年6月、東京都中央区で)

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プロフィル
新庄 秀規( しんじょう・ひでき
 1997年4月入社。富山支局などを経て2003年1月に社会部。警視庁や会計検査院、東京都庁などを取材し、2017年10月から社会部デスク。読売KODOMO新聞の編集長も務める。

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使い方
2082465 0 デスクの目~社会部 2021/05/28 15:00:00 2021/05/28 15:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210525-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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