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遊軍記者と自由研究…悩む子どもの苦しみはよく分かる

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社会部デスク 新庄秀規

 新聞社には、「遊軍」と呼ばれる記者がいる。警察や検察、裁判所など役所を取材する記者とは違い、特定の担当を持たずに、さまざまな案件を自由に取材する記者のことだ。東京社会部は現在、20人以上の遊軍記者を抱えている。

 私も十数年前、この遊軍記者になった。それまでの記者人生ほとんどが警察担当。なかなか事件の特ダネをモノにできずに悩んできただけに、ほかの新聞社やテレビ局との競争がない遊軍になった当初は、その自由さにうかれていた。先輩記者からも「遊軍は何でも書けるからな。期待しているよ」と気合を入れられた記憶がある。

 ふだんは何をしているのかよく分からないけれど、社会面のネタが薄くなったころにさっそうと現れ、「こんな話を書いてみたのですが」と少し遠慮がちに申し出る……。そんな理想の遊軍記者の姿を思い描いたこともある。

 しかし、である。

 想像した世界とは全く変わり、実際には、取材対象を見つけるのも大変だった。「いい記事を書かなければ」という思い込みが、取材をためらわせ、原稿を出せない引け目から、「1面や社会面トップを書かなければ」と焦り……という負のループが始まると、もうダメである。「自由に」「何でも」という言葉にどんどん追い込まれる毎日。その後、ある事件取材班に加わるように言われ、正直ホッとしてしまった自分の情けなさは、今でも許せない。

子どもにとって、夏休みの宿題の自由研究は、読書感想文と並ぶ悩みの種だ
子どもにとって、夏休みの宿題の自由研究は、読書感想文と並ぶ悩みの種だ

 この時期になると、記者人生の中で一瞬に過ぎなかった遊軍時代を思い出す。あれと同じような苦しみを子どもが感じているかもしれないと思うからだ。「夏休みの自由研究」である。

 算数のドリルに漢字の書き取り。学校が終わっても習字やピアノ、水泳に学習塾……。そんな忙しいスケジュールをこなしている子どもに対し、「自由に」「何でも」研究しなさいと言う。一体、何をどう研究したらいいのか。

 「実は前からこんなことを研究したかったの!」と目を輝かせる同級生の横で、沈痛な顔をしている子は必ずいる。そんな子どもたちの味方になろうと、読売KODOMO新聞では毎年、「自由研究新聞」という別刷りのふろくを発行している。自由研究とは、何を研究すればいいものなのか。簡単にすませられるものから、大人顔負けの手の込んだものまで、研究のヒントを紹介する紙面だ。

 企業や団体が行っている自由研究イベントも掲載している。いずれも、イベントに参加することで、何らかの自由研究にまとめられる仕組みになっているのだが、よく調べてみると、世の中には「自由研究にピッタリ!」「自由研究ならおまかせ!」などと銘打ったイベントがたくさん実施されていることが分かる。それだけ多くの子どもたちがこの宿題に悩んでいるという証左だ。

一斉休校の影響で夏休みが短かった昨年は『夏休み新聞』という名前で発行した読売KODOMO新聞の自由研究新聞。今年は7月8日号で発行される
一斉休校の影響で夏休みが短かった昨年は『夏休み新聞』という名前で発行した読売KODOMO新聞の自由研究新聞。今年は7月8日号で発行される

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2153199 0 デスクの目~社会部 2021/06/25 15:00:00 2021/06/24 17:51:52 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210622-OYT8I50037-T.jpg?type=thumbnail

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