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質問の難しさ それでも記者は聞かなければいけない

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社会部デスク 新庄秀規

 「流し足りないところはございませんか?」

 最近、美容室で洗髪する際に言われるこの質問が気になって仕方ない。以前は、「かゆいところはありませんか?」と聞かれていたような気がする。自分の不潔さをアピールするようなことは嫌である。いかにかゆかろうと、いつも「いや、ありません」と即答していた。

 しかし、今回は少し勝手が違う。「流し足りないところ」と聞かれて、どう答えればいいのか。果たして、髪に残ったシャンプーを手で触らずに知覚できる人はいるのか。おそらく洗髪のマニュアルがあって、そのまま質問しているのだろうけれど、「もう少し、答える身にもなって質問してくれませんか」と思う。ただ、小うるさい客とは思われたくない。そうなると、答えはこれまでと同じだ。「いや、ありません」

 人に質問をする職業について二十数年。他人の質問をあれこれ言う前に、自分自身があまたの苦い経験を重ねてきた。

 多くの新人記者が質問でつまずくのが、高校野球の地方大会だ。野球観戦は大好きだし、何とかなるだろうと思っている記者ほど、落とし穴にはまる。もちろん、私もその一人だ。

高校野球の地方大会。殊勲選手へインタビューに向かう
高校野球の地方大会。殊勲選手へインタビューに向かう

 逆転のタイムリーを打った殊勲の2年生。もちろん、この試合の主役なので、インタビューに向かった。
 「どうでしたか?」
 「ええ、うれしかったです」
 「どんな球でしたか?」
 「よく覚えていません」
 「今日は3安打と大活躍でしたね?」
 「ええ」

 すぐに所定の時間がやってきて、取材は終了。記者席に戻ってワープロの前に座るが、まったく手が動かない。まるで話を聞けていないのだ。ノートにはそれなりの分量の書き込みがあるのだけれど、そのほとんどが自分の質問の言葉だったときの絶望感。デスク担当の先輩からの催促に応じ、仕方なく書いた原稿は、「逆転のタイムリーを打ってうれしかった」という以上の内容がないものだった。

取材を終えて記者席に戻ったが、手が全く動かない
取材を終えて記者席に戻ったが、手が全く動かない

 選手は素直に質問に答えてくれている。でも、質問する方に何の構想もないと、こうなってしまう。ただ、構想ばかりが先走ってもうまくいかない。インタビューで意気投合し、秘密の特訓の話など、聞きたいことはすべて聞いたと思って記者席に引き揚げてきたら、肝心の試合の話をさっぱり聞いておらず、原稿にできなかったこともある。

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