師走が来るたび思い出す、プランタン銀座の「秘密の落書き」

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社会部デスク 木下敦子

 人に個性があるように、 (やかた) にも個性があると知ったのは、5年前、プランタン銀座という百貨店に出向した時でした。プランタンのビルは、今はマロニエゲート銀座2&3となり、「UNIQLO TOKYO(ユニクロ トウキョウ)」などが入っています。

 このビルがある場所は、読売新聞の本社跡地です。ビルは読売の所有だったことなどから、読売とプランタン銀座の関係は深く、その (ゆかり) で、私は読売社員としてプランタン銀座に出向したのでした。プランタン銀座は2016年の大みそかに閉店したのですが、その最後の1年間を、私はこの館で過ごしたのです。

親しげでどことなく自慢げだった「やかた」と呼ぶ声

 ちなみに、商業施設の建物のことを「 (やかた) 」と呼ぶ習わしがあるのを知ったのも、このプランタン出向時代です。社員たちが、プランタンのことを「館」という時の口ぶりは親しげで、どことなく自慢げでもあったことを思い出します。この館の来歴を思えば、当然のことかもしれません。

タレントのはるな愛さんがコーディネートした洋服を着て、売りつくしセールの宣伝をする「社員モデル」たち(2016年9月)
タレントのはるな愛さんがコーディネートした洋服を着て、売りつくしセールの宣伝をする「社員モデル」たち(2016年9月)

 1984年に開業したプランタン銀座は、銀座にありながら、そのカジュアルさが最大の売りだったのだろうと、最後の1年の様子だけを垣間見た外様社員の私は思っていました。お客様と社員の距離が近いのです。バレンタインデーや母の日、クリスマスなどイベントごとになると、社員らが自分たちでファッションモデルをやって商品をアピールしたり、抽選会を開いたり。銀座なのに手作り感満載で、とにかくお客様に楽しんでいただこうという空気に満ちていました。

接客精神にあふれた「さようでございましたか」

 私がプランタンに行って覚えた言葉の一つに、「さよう(左様)でございましたか」というのがあります。「かしこまりました」でも「ありがとうございます」でもなく、「さようでございましたか」。新聞記者は絶対に使うことのないこのフレーズは、お客様のどんな要望・苦情もまずは笑顔で受け止め、考え、できる限り応えたいという精神にあふれていました。

シーズンごとに様々なイベントを開いていたプランタン銀座。お客様を笑顔でもてなした(2016年4月)
シーズンごとに様々なイベントを開いていたプランタン銀座。お客様を笑顔でもてなした(2016年4月)

 プランタン銀座では、かつては若手社員が自分で企画し、海外に買い付けに行き、仕入れた商品を自分で売り場に並べて売っていたと、昔を知る社員が言っていました。プランタンは、ほかに店舗がない「単館」デパートだったので、他の百貨店グループに入っているブランドを扱っても差別化がはかれない。日本に一つしかないデパートだから、ここにしかないもの、ここに来ないと買えないものをそろえようという気構えがあったと。地下の食品売り場(通称・プラ地下)でティラミスやナタデココ、パンナコッタなど時代を先取りする商品をいち早く売ることができたのも、そういう精神とつながるのではないかと感じています。

行列のたびに登場した「最後尾」プラカード。私ができたことといえば……
行列のたびに登場した「最後尾」プラカード。私ができたことといえば……

 そんな館に新聞記者が派遣されて役に立てることはほとんどなく、私ができたことといえば、プランタン銀座名物の「福袋」が大々的に売り出される新年の初売りや、お得な割引がある特別デーでお客様が長い行列を作るときに、「最後尾」のプラカードを持ってご案内することぐらいでした。

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2565725 0 デスクの目~社会部 2021/12/03 15:00:00 2021/12/21 12:07:43 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/12/20211201-OYT8I50031-T.jpg?type=thumbnail

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