デスクの目~人生に「遅すぎる」はない

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 3回前のコラムに続き、またもや、NHKの連続テレビ小説「まんぷく」の話で恐縮だが、物語は1970年(昭和45)まで進んでいる。世界初のインスタントラーメン「まんぷくラーメン」の大ヒットから11年後である。

日清食品の創業者・安藤百福さん(1991年撮影)
日清食品の創業者・安藤百福さん(1991年撮影)

 日清食品の創業者、安藤百福(ももふく)さんと妻・(まさ)子さんをモデルにした主人公夫婦が、今度は世界初のカップ麺を作り上げようと奮闘中だ。新商品の値付けでも悩んでいる。

 「これを100円で売るのですか? 高すぎる」

 当時は、袋麺が25円の時代。高い値段に見合うだけの何かが欲しい。女優の安藤サクラさんが演じる主人公の発案で、具材を入れることになり、これから開発が始まるところだ。

 「謎肉」が登場するのだろうか。先が気になる。ちなみに謎肉とは、現実に売られている日清カップヌードルの具材で、正式名は「ダイスミンチ」。発売から46周年を迎えた2017年、日清が豚肉と大豆由来の原料に野菜などを混ぜて味付けしたミンチと明かすまで、その正体は謎に包まれていた。今でも、ファンだけではなく、日清自ら、謎肉と呼んでいる。

 カップヌードルが発売された71年(昭和46)、安藤百福さんは61歳と還暦を過ぎていた。

 「人生に遅すぎるということはない。60歳、70歳からでも新たな挑戦はある」

 2007年に96歳で没するまで新たな商品開発に挑み続けた安藤さんが残した言葉は、年齢に関係なく、周りを見渡して興味がわいたことにチャレンジする大切さを教えてくれる。

 それは、たとえ、一介のサラリーマンや主婦であったとしても例外ではない。

 高卒で勤めた銀行を退職する間際の60歳の頃から独学でパソコンを始め、81歳になった17年に、iPhone用のゲームアプリを開発した女性がいる。

 名前は若宮正子さん。日本だけではなく、世界が彼女のチャレンジに驚き、昨年2月には、国連で開かれた高齢者とICT(情報通信技術)に関するイベントに招かれ、英語で基調講演を行った。

 「新しいことを始めると『度胸があるねえ』と驚かれますが、記憶力が低下しても、理解することができれば大丈夫です」

 若宮さんはこう語っている。

 「人生100年時代の到来は大きなチャンスです」

 安倍首相は、今年1月の施政方針演説で強調した。元気な高齢者にそれまでの人生で培ってきた知恵を生かして働いてもらうことこそが、日本経済の成長に欠かせない。生涯現役の社会をどう作っていくのか、大きな課題との問題意識がある。

 しかし、ここ最近、人生100年時代に向けた政府の動きは鈍っているように思える。17年に発足させた「人生100年時代構想推進室」も開店休業中ではないかと心配になるほどだ。

 安倍内閣は、「地方創生」「1億総活躍社会」「人づくり革命」など数々のスローガンを掲げてきた。だが、どれも大きな成果を出したとは言えず、このままでは、「人生100年時代」も看板倒れに終わりそうな気配だ。

 新たな社会保障制度の構築や雇用慣行の見直し・・。取り組むべきテーマは山積している。今から改めて挑戦しても、決して遅いということはない。

 さて、最後まで読んで頂いた方々に、人生100年時代を生きていくための格言をお贈りしたい。燃える闘魂、アントニオ猪木さんの言葉である。

 「人は歩みを止めたときに、そして挑戦をあきらめたときに、年老いていくのだと思います」

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プロフィル
宮崎 誠( みやざき・まこと
 経済部次長。1997年入社。金沢支局などを経て、2003年10月から経済部。財務省や電機業界、経済産業省などを担当。予算編成やTPP交渉などの取材を手がけた。

490850 1 Webコラム・解説 2019/03/15 17:00:00 2019/03/15 17:49:10 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190315-OYT8I50002-T.jpg?type=thumbnail

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