ウイルスにみる遺伝子の変化 企業の「変異種」に期待
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新型コロナウイルスの「変異種」が猛威を振るっている。英国では、イングランド地方全域で3度目のロックダウン(都市封鎖)を余儀なくされた。感染力は従来のウイルスより最大で7割強いといい、新規感染者数の急増につながっている。

変異という現象は、ウイルスが増えるときに遺伝子をコピーする際、ミスをしてしまうことが原因という。国立遺伝学研究所の木村
「上はヒトから下はウイルスに至るまで、あらゆる生物のほとんどあらゆる形質が遺伝子突然変異によって変化する可能性がある」
変異はウイルスに限らず、遺伝子を有する全ての生命体が長い歴史の中で経験する。時には英国の変異種のように、その力を増し、勢力を広げる要因となる。遺伝子の変化には重大な意味がある。
読売新聞朝刊の経済面で、今月5日から連載「経済転換 新ビジネス」を掲載した。コロナ時代を生き抜くため、ノウハウや技術を新たなビジネスに生かそうと知恵を絞った人、企業を取り上げた。担当デスクとして痛感したのが、「遺伝子の変化」の重要性だ。

1937年創業の浴衣帯メーカー「小杉織物」(福井県坂井市)は、インバウンド(訪日客)の激減、祭りや花火大会の中止が相次いだため、浴衣帯の注文が途絶えた。廃業の危機に直面した小杉秀則社長が決断したのが、浴衣帯の素材である絹を使ったマスク生産だった。
紙面では言及しなかったが、伝統ある浴衣帯のメーカーとして、マスク生産に切り替えることには抵抗感もあったようだ。しかし、従業員の雇用を守りたいという思いは強く、「最後の手段」として絹マスクを売り込み、大ヒットにつなげた。
今後はシーツカバーなども手がける絹の総合メーカーを目指すという。小杉氏は取材に「廃業寸前にまで追い込まれたコロナに教わるのは悔しいが、将来の方向性が見えた」と語った。80年以上にわたって受け継いできた「浴衣帯作りの遺伝子」を見事に変異させた。
連載ではほかにも、「密」を避けるためにスタジオ撮影を諦め、モデルが自撮りするシステムを作った広告制作会社「モノクロム」、そば店の経営に乗り出した旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)など、あの手この手で苦境を乗り越えようとする取り組みを紹介した。