相次ぐ経営トップの退任表明…「裸の王様」「独り相撲」では職責を全うできない

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経済部デスク 五十棲忠史

 2021年も残すところ1か月。今年は、著名企業の経営トップが不本意な形で退任を表明するシーンが多い1年だった。それぞれのトップが表舞台を降りる時、どんな言葉を残したのか振り返ってみたい。

不祥事で降板

 経営トップがその座を追われる典型的なパターンは、業績悪化もしくは不祥事である。新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた2021年は、赤字決算などを理由に交代する事例はそれほど目立たなかった。誰がトップでも難しい局面にあるからだろう。

 一方、不祥事での交代発表は目に付いた。代表例は、三菱電機とみずほフィナンシャルグループだ。

厳しい表情で記者会見に臨む杉山武史・三菱電機前社長(7月2日、東京都千代田区で)
厳しい表情で記者会見に臨む杉山武史・三菱電機前社長(7月2日、東京都千代田区で)

 三菱電機は、岐阜県や長崎県の生産現場で、顧客と約束した検査を行わないまま、製品を出荷していた。少なくとも約30年前から続いていたという。現場の管理職は問題を把握していながら、「品質そのものには問題がない」などとして、本社には伝えていなかった。不正を発表した7月2日、杉山武史社長は辞任を表明。後任社長を決めた上で、7月28日付で引責辞任した。杉山氏は「組織的な不正行為と認めざるを得ない。現場にかかる負荷を管理職や経営陣がうまく受け止められなかった」との言葉を残した。

 みずほフィナンシャルグループ(FG)は、今年だけで8度のシステム障害を起こした。金融庁から今年2度目の業務改善命令が出た11月26日、坂井辰史社長と、傘下のみずほ銀行のトップである藤原弘治頭取が、2022年4月1日付で辞任すると発表した。記者会見で坂井氏は「社会インフラ(社会基盤)の一翼を担う金融機関として役割を十分果たせず、極めて重く受け止め、反省している」と陳謝した。

相次いだシステム障害の責任を取り、記者会見で頭を下げる、みずほFGの坂井辰史社長(左)とみずほ銀行の藤原弘治頭取
相次いだシステム障害の責任を取り、記者会見で頭を下げる、みずほFGの坂井辰史社長(左)とみずほ銀行の藤原弘治頭取

 みずほFGが何度もシステム障害を繰り返していることについて、監督官庁である金融庁は「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」との企業風土があると指摘した。これについて藤原氏は「企業風土に疑義は持っていたが、変えるのは容易でない」と語った。

 三菱電機とみずほFGの経営陣は、不祥事を把握する仕組みを構築できていなかったという点で共通している。悪い情報を教えてもらえない「裸の王様」だった。

 三菱電機の場合、現場の責任者である工場長までは情報が上がっていたが、本社まで伝わらなかった。本社と生産現場の人事交流がほとんど行われないという閉鎖的な企業風土が、情報の流れを滞らせた。

 みずほFGは、通帳がATMに吸い込まれるなど社会的に影響が大きかった2月のシステム障害の際、経営トップへの伝達が遅れた。藤原氏は、トラブルをネットニュースで知ったというから、お粗末というほかはない。

 どんな組織であれ、不祥事やシステム障害を完全に防ぐことは難しい。だが、ひとたび発生してしまった際に、トップまで速やかに情報を共有する仕組みを整え、徹底することはできる。三菱電機もみずほFGも日本を代表する企業だけに、残念でならない。

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