「塀の中」から考える社会保障

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編集委員 猪熊律子

 「監獄を見ればその国の文化水準がわかる」と、各国の刑務所を訪れたチャップリン。1932年に初来日した際も、「監獄が見たい」と突然言い出し、現在は東京拘置所がある小菅刑務所を見学したと当時の読売新聞にある。

 喜劇王には遠く及ばないものの、私も取材で何度か、塀の中に入ったことがある。最初は約10年前。刑務官全員が認知症の講習を受けたと聞き、福島市内の女性刑務所を訪れた。

「寮」から、作業をする「工場」へ向かう受刑者たち。シルバーカーの姿も(写真はいずれも岐阜県の笠松刑務所で。2018年11月撮影。写真は一部加工しています)
「寮」から、作業をする「工場」へ向かう受刑者たち。シルバーカーの姿も(写真はいずれも岐阜県の笠松刑務所で。2018年11月撮影。写真は一部加工しています)

 認知症の受刑者が多くいたわけではなかったが、驚いたのは、各部屋の入り口に「軟」「副食きざみ」などの札があったこと。高齢受刑者には、お(かゆ)や、細かく刻んだ食事が用意されていた。

 「出所しても、家も、出迎えてくれる人もいない。ならば刑務所の方がいいと、戻ってきてしまう高齢者が多い」との職員の説明に、刑務所が福祉の安全網になってよいのかと考え込んだ。

最高齢は89歳…受刑者に目立つ65歳以上の女性

 編集委員になった約3年前、気になっていたその刑務所を再訪した。入所受刑者の数は近年、減る傾向にあるが(平成期では2006年の約3.3万人がピークで、18年は約1.8万人)、増加ぶりが目立つのが高齢者、特に高齢女性だ。その刑務所でも「高齢化が進み、入所者約400人中、2割以上が65歳以上。最高齢は89歳。認知症など介護が必要な人は約30人。刑務官がおむつ交換や入浴介助をしている」という。シルバーカー(歩行補助車)を押した白髪頭の集団が刑務作業に向かう姿は、全員が同じ作業服でなければ、買い物をするお年寄りでにぎわう東京・巣鴨の一光景かと思うほどだった。

さまざまな作業をする受刑者たち
さまざまな作業をする受刑者たち

 刑務所の「福祉施設化」は、その後、密着取材に応じてくれた岐阜県内の女性刑務所でも同様で、刑の執行とケアの両方の対応に苦慮する刑務官の姿を見た。受刑者の中には、介護を学んだ「介助係」がおり、高齢化が進む刑務所では、なくてはならない存在になっていることも知った。

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1476009 0 編集委員の目 2020/09/15 10:00:00 2020/09/15 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200910-OYT8I50046-T.jpg?type=thumbnail

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