「悪食」の細道~好奇心と食糧問題

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編集委員 前田恭二

 ちらほら昆虫食の話を見かけるようになった。

 取り組みとしては、将来、人類の食糧問題に資するかも?という問題意識があるようだ。そう言えば、今年のノーベル平和賞も世界食糧計画(WFP)に決まったばかりだ。

 とはいえ日本国内では、もはや虫を食べなければ生きてゆかれぬのだ、とまでは追い詰められていない(と思う)。ネットなどでよく取り上げられるのは、目下のところ、コワゴワながらも好奇心をそそる話題、といった事情もあるのだろう。

 そう、悪食の話は好奇心をそそるのだ。さしたる実体験など持ち合わせない筆者も、あれこれ読むうちに、ほう!と思う話に出くわすと、嫌悪するより好奇心が動く。しっかり記憶に刻んでしまう。

 以下、そんな記憶のストックを紹介しつつ、近代日本の奇妙な一水脈をたどってみようかと思う。

 恐縮ながら、お食事中の方、悪食と聞いただけで肌にアワを生じる向きは、ここでおやめいただいた方がよいかもしれない。

「香ばしくていいもんだ」…ゲンゴロウを食べた茂吉

斎藤茂吉(1950年5月27日付本紙より)
斎藤茂吉(1950年5月27日付本紙より)
佐藤佐太郎著「童馬山房随聞」(1976年、岩波書店)
佐藤佐太郎著「童馬山房随聞」(1976年、岩波書店)

 まずは最近、ほう!と思った話から。

 ランチタイムの消閑に、歌人・佐藤佐太郎の『(どう)()(さん)(ぼう)(ずい)(もん)』を読んでいた。佐太郎が師事した近代日本の大歌人、斎藤茂吉の言行録で、昭和戦前期のメモに基づいている。その1931年12月8日の項に、こんな茂吉の言葉が出てきた。

 「源五郎虫を何年ぶりかで食ったが、文章に書いておこう。(中略)かたい(はね)と足をとって焼いて食うんだが、ちょっと香ばしくていいもんだ」

 佐太郎は戦後に本書をまとめた際に「長兄死去によって郷里に帰られたときのことを先生は話されたのであろう」と注記する。茂吉は明治前半の生まれで、郷里は山形である。筆者も田舎の生まれだから、ゲンゴロウがどんな虫だかは知っている。アレを普通に食べるのか……と驚き、正直なところ、おののいた。

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1560595 0 編集委員の目 2020/10/20 10:00:00 2020/10/20 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201015-OYT8I50047-T.jpg?type=thumbnail

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