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映画から考える社会保障…実はとっても身近な話

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編集委員 猪熊律子

 75歳以上の医療費窓口負担の引き上げが実施される方向となった。GDP(国内総生産)の2割に相当する120兆円規模にまで膨らんだ社会保障の姿・形を考えることは、国のあり方を考えることにもつながる。コロナ禍で巣ごもりの機会が増えそうなこの年末年始、社会保障を考えるのにお勧めの映画を幾つかご紹介したい。

医療は不安だらけ 「病的」米社会をえぐるドキュメンタリー

「シッコ」=ブルーレイ:2000円(税抜き)発売・販売元:ギャガ ©2007 Dog Eat Dog Films, Inc. All rights reserved.
「シッコ」=ブルーレイ:2000円(税抜き)発売・販売元:ギャガ ©2007 Dog Eat Dog Films, Inc. All rights reserved.

 「社会保障を学ぶ人の必見映画」といわれるのが、アメリカのマイケル・ムーア監督の作品「シッコ(SiCKO)」だ。ドキュメンタリーとはいえ、「アポなし突撃男」と呼ばれる同監督ならではの癖のある味付けと、エンターテインメント性があふれる作品だ。公開は2007年だが、今見ても医療制度について考えるのに十分役に立つ。

 「中指をくっつけるのに6万ドル。薬指なら1万2000ドル。どっちにします?」

 事故で指を2本切断した大工に医師が聞く。この冒頭場面からして、国民皆保険制度のもと、保険証を出せば原則3割の自己負担で医療を受けられる日本人の目から見れば驚きだ。

 アメリカには日本のような国民皆保険制度がなく、無保険者が多い実態を映し出したものだが、たとえ民間の医療保険に加入していても安心できない人々の姿がリアルに映し出される。中流の暮らしを満喫していたある夫婦は、夫が心臓病、妻ががんとなり、加入していた保険では治療費がカバーされず、とうとう娘の自宅の物置で暮らす羽目になった。

 保険会社の多くは管理型の医療保険組織に属し、「治療は不必要だ」と診断した医師ほど優遇される。患者不在のこうした状況を、ムーア監督は「ビョーキ(Sicko)だ」と言う。Sickoとは、「病的」などを意味する俗語だ。

 カメラは、国民全員をカバーする公的な医療保険制度を作ることは、「社会主義国になること」と話す政治家の姿もとらえる。余談だが、トランプ大統領の個人弁護士となったルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が9・11の場面でちらっと出てくるのも目をひく。

 映画公開後、オバマ前大統領は日本とは異なる形で、全国民に医療へのアクセスを保障する「オバマケア」を作った。トランプ大統領はその撤廃を主張し、次期大統領となるバイデン氏は拡充の方針を示しているが、今後どうなるのか……。そうした動向もさることながら、「国によって医療制度やそれに対する人々の考え方はこうも違うのか」と気づかされるだけでも見る価値がある。

 医療ものでは、同じくアメリカの「ジョンQ」(2002年)もお勧めだ。心臓移植が必要になった息子を救うため、人質をとって病院に立てこもる父親を、名優デンゼル・ワシントンが演じている。ここでも、制度の違いや高額医療のあり方などを考えさせられる。

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1700248 0 編集委員の目 2020/12/15 10:00:00 2020/12/17 12:02:37 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201211-OYT8I50064-T.jpg?type=thumbnail

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