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「ファンタジーランド」化する日本──主観が曲げる新型コロナウイルス対応

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編集委員 伊藤俊行

 新型コロナウイルスワクチンの緊急使用が始まった米国で、ワクチン接種の「新たな課題」に触れた報道ぶりが、興味深い。

うたぐり深い米国民

英コベントリーの病院で、英国で最初に新型コロナウイルスのワクチン接種を受けるマーガレット・キーナンさん(AP)
英コベントリーの病院で、英国で最初に新型コロナウイルスのワクチン接種を受けるマーガレット・キーナンさん(AP)

 「これまで米国民にマスク着用と普段通りの生活に制限を求めてきた保健当局は、公衆衛生のための新たな戦いに臨まねばならない。すなわち、うたぐり深い米国民に、ワクチンは安全であり、ワクチンの認可がトランプ政権の政治的圧力によってなされたものでないと確信させる戦いである」(12月13日付、ニューヨーク・タイムズ紙電子版)とある。

 同じワクチンの使用を認可した英国やカナダにも、その効果に疑問や不安を抱く人はいるだろう。ただ、「うたぐり深い米国民」が指している対象は、少し違う。米国特有の事情が生んだ、他国では想像しにくいタイプの人々を思い浮かべた方がいい。

 一つの類型は、根拠の乏しい主張を振りかざして強権的な政治を進めてきたドナルド・トランプ大統領の4年間の施政で、この政権のやること、なすことに対する抜き難い不信を強めた「反トランプ」の人々だ。

 別のタイプとしては、20年ほど前に始まった「反ワクチン運動」に走る人々が挙げられる。「反ワクチン」をめぐる事情は、米国で大きな反響を呼んだ「ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史」(カート・アンダーセン著、山田美明・山田文訳。東洋経済新報社)に詳しい。

米国の反ワクチン運動

 同書によると、1998年にはしか、おたふくかぜ、風疹のワクチンが「子どもに自閉症的行動をもたらす」とする論文が英国の有力医学誌に掲載された後、米国で「反ワクチン」のヒステリーが広がった。12年後に同誌が、論文は完全に間違いだったと認めた後も、米国内ではワクチン不信が消えず、「何百万人もの親が子どもにワクチン接種を受けさせるのをやめた」。その結果、何十年も前に制圧されたはずの百日(ぜき)やはしかが再び流行し、新生児が命を落とすケースも出てきたという。

 なぜ、そんな事態になるのか。

 同書は米国民の傾向として、「客観よりも主観を極端なまでに重視し、意見や感覚を事実並みに真実であるかのように考え、行動する人々」が多いことを、建国の経緯にまで遡って分析している。そうした人々は、目の前で起きていることが科学的に正しいかどうかなど気にせず、ディズニーランドの「ファンタジーランド」で暮らしているかのような幻想に包まれて生きている。それが米社会の様々な問題にもつながっているというのだ。

 先の大統領選でトランプ氏の支持者が感染症の専門家の警告に耳を傾けず、マスク着用を拒み、密になりながらトランプ氏再選のための選挙運動を展開していた理由も、得心がいく。

 「アメリカ全体で、およそ3分の1の国民が『ワクチンは自閉症を引き起こす』と信じ」ている状態が、新型コロナウイルスの感染拡大の中でも続いているなら、「うたぐり深い米国人」との戦いは、集団免疫を獲得するためにも避けて通れない。

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1707794 0 編集委員の目 2020/12/18 10:00:00 2020/12/18 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201215-OYT8I50057-T.jpg?type=thumbnail

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