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1970年代の欧州の変化
第2次大戦後の欧州の政党に変革をもたらすうえで大きな役割を果たしたのは、若者と女性だと言われる。
例えば、イタリアで共産党が大衆政党に変身していったのは、党組織のあり方について「1970年代に若者と女性からの挑戦」を受け、それを乗り越えたからだという(『イタリア20世紀史 熱狂と恐怖と希望の100年』シモーナ・コラリーツィ著、村上信一郎監訳)。

「若者と女性は、伝統的な組織の枠組みに統合されることを拒否する自由な個人として登場した最初の主体」(同書)と考えられた。欧州諸国では1970年代に選挙権年齢が18歳以上に引き下げられた歴史がある。
日本で選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたのは、欧州に遅れること40年、2015年6月の公職選挙法改正だった。それでも、若者の投票率は相変わらず低く、女性国会議員の数は国際比較で下位にあるままだ。1955年の結党以来、自民党は93年と2009年の総選挙後の短い期間を除き、ずっと政権の座にある。野党に転落した時は声高に党改革を訴えながら、2度とも、その約束を履行しないまま、「敵失」で政権が戻ってきた。
選挙制度を変えれば政権交代可能な2大政党制ができて、政治にダイナミズムが生まれるという期待から導入された衆院小選挙区比例代表並立制になって四半世紀がたっても、自民党をはじめ伝統政党は本質的な改革が進まず、その周辺で対抗勢力が離合集散を繰り返す。政党は民主的に運営されているのかという疑問は増し、「政治とカネ」の問題はなくならない。世界中で「民主主義の危機」が叫ばれる中で、政党の立て直しや、役割そのものの再考が求められているのに、選挙に勝てばいい、選挙に勝ったら何をしてもいいという態度は、ますます露骨になっている。
そんな政党政治に変化をもたらし得るのが、若者の政治参加ではないか。最近参加したフォーラムで、そのことを強く感じた。
未来選択につながる民主主義
若者の政治参加を高めるための方法や考え方をめぐる若者自身や教育現場の取り組み、労働界、メディア、企業の考え方が活発に議論されたのは、1月19日にオンライン形式で行われた「未来選択会議 第1回オープン・フォーラム 未来選択につながる民主主義~若者の政治・社会への関心を高めるために」(経済同友会主催)だった。

玉塚元一・経済同友会政治改革委員会委員長の進行による議論は3時間に及び、「若い世代は政治に無関心」という紋切り型の見方は成り立たないことを、改めて教えられた。
印象的だったやりとりがある。
玉川学園高等部の
これに対し、NPOの日本若者協議会の室橋祐貴代表理事が「若者の投票結果が大人と変わらないなら、政治参加にどういう意味があるのか。現状の社会で、大人の認識と若者の認識がずれているから、若者の政治参加を進めるのではないのか」と質問した。●合氏は、若者の判断能力への世の中の懸念を打ち消す狙いがあったと説明したうえで、「違う価値観があるからこそ、若者の政治参加の意味があるというのは、その通りだ」として、「『年代別比例代表』があってもいい」と、若者が政治参加に意義を感じるような選挙制度の検討も提案した。
室橋氏は問題提起のための発表の中で、日本の若者は政治に無関心だから政治参加に後ろ向きなのではなく、他の要因があることを国際比較で分析し、自分の政治参加で世の中を「変えられるという意識が低い」と指摘した。
インターネット投票を導入すれば若者の投票率が上がるという見方については、「ネット投票を導入していない国でも、若者の投票率が高いところがある。もっとほかに、やることがある」とも語った。
どれも、興味深い論点だ。