ヒジキの鉄分量、国の数値は妥当か?
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「そういえば、あの話はその後どうなったんだっけ?」

昨年末、文部科学省が「日本食品標準成分表」(食品成分表)を改訂し、2020年版を発表した。そのひとつ前の改訂、2015年版で話題になったことを思い出した。
「鉄分の王様」として知られてきたヒジキの鉄分の数値が大幅に引き下げられたのだ。100グラム当たり55ミリ・グラムだったのが、6.2ミリ・グラムとおよそ9分の1に。
加工する釜を、鉄製とステンレス製で比べたところ、大きな差があったという。現在の主流はステンレス製だ。「ヒジキの豊富な鉄分は、鉄製の釜に由来していた?」と驚きを持って受け止められた。サンプルは国産のヒジキだけだった。2020年版も同じデータを用いている。
2015年の改訂を受け、ヒジキ加工の業界団体は研究を続けるとしていた。今回、その後の調査や研究について聞いてみると、当時とは違った視点が浮上していた。

ポイントは「ヒジキの鉄分量の差は、製法の違いではなく、産地の違いに着目すべきではないか」「国内に流通しているヒジキは輸入品が大半なのに、国産ヒジキの数値に代表させていいか」「過剰摂取の恐れはないか」──などだ。
まず、「食品成分表」についておさらい。
食品に含まれる栄養成分の基礎的データ集で、1950年に初めてまとめられた。食品の標準的な成分を、原則、可食部100グラム当たりの数値で示している。文科省が作成している。
食生活や製造法などの変化に対応するため、近年は5年おきに改訂。学校給食や病院給食、一般家庭でも活用されている。
国産と輸入品で鉄分量が1桁違う!

2015年の改訂直後、海藻加工業者で作る「日本ひじき協議会」は、国産と輸入品の鉄分量を独自に分析した。国産の数値は、食品成分表に近いものだったが、韓国産と中国産の数値は高く、1桁違った。加工にはいずれもステンレス釜を使っている。同協議会が現在示している数値も、国産6.2ミリ・グラム、中国産61.5ミリ・グラム、韓国産59.6ミリ・グラム。
「製法の違いより、産地の違いに着目すべきだ」と三重県内の加工業者・北村物産社長の北村裕司さんは強調する。北村さんは、三重大学大学院で、ヒジキの鉄分について調査研究を行った。「日本ひじき協議会」の協力も得ている。

多くの食品が海外産に依存している中、現在流通しているヒジキも、国産と輸入品がある。輸入品は中国産と韓国産。北村さんの研究などによると、輸入品が約9割で国産は約1割という状況だ。加工は、国内も中国も韓国も、ほぼステンレス釜を使っているという。鉄釜を使わなくても、中国、韓国産には、国産の約10倍の鉄分が含まれることになる。
なぜ中国、韓国産の鉄分が多いのか、理由は不明。もっとも、国産に含まれる鉄分も十分優秀だ。食品表示で「多い」と記載できる基準の3倍強ある。