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週末だというのに、「世界三大夕日」をうたう北海道釧路市の釧路川にかかる
釧路港に注がれる視線

3月は夏や冬の観光ピークとずれているとはいえ、河口中央に太陽が沈み、美しさが際立つ季節だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、外国人観光客はもとより、日本人旅行者もほとんど見かけない。釧路川に面した津波避難施設を兼ねる商業施設「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」の中も、人影がほとんどない寂しさだった。
釧路湿原を案内してくれた男性は、廃虚のようになったビルや、駐車場になった更地を指して「私が子どもの頃はここも、あそこもデパートだった。今は、全て撤退した。あの頃の活気が戻ることは、もはやないのだろう」と語る。
コロナ禍をしのげば、夕日や釧路湿原を目指して世界から観光客は戻ってくるだろう。けれども、勢いを失った石炭、製紙、漁業に代わる産業が根付き、人口が増加に転じる未来像は、70歳の観光ガイドには描けないようだった。
MOOよりもさらに河口に向かっていくと、釧路港がある。
アジアから見て北米大陸に最も近い不凍港は近年、国際的な注目を集めるようになった。中国が「一帯一路」構想の「氷上シルクロード」と言われる北極海航路の拠点として使いたいとの考えを示し、中国企業や駐日中国大使らが次々と釧路を訪れるようになったからだ。
日本政府も釧路港の重要性は分かっている。
国土交通省は2011年、「資源、エネルギー、食糧等の安定的で安価な供給」を目標に、鹿島港(茨城県)、志布志港(鹿児島県)、名古屋港(愛知県)、水島港(岡山県)とともに釧路港を穀物の「国際バルク戦略港湾」(「バルク」は、包装されずにバラバラに運ばれる貨物のこと。鉄鉱石、穀物、石炭を「3大バルク貨物」という)に指定した。
指定に基づく機能強化や整備が行われ、18年には釧路港の戦略港湾としての運用が始まったが、町のにぎわいの復活や人口減少の傾向に歯止めをかけるものではなかった。
外国資本に危機感強めた米国


そんな環境の中で、「中国の投資があれば、釧路港や周辺が活気づくのではないか」といった期待感が高まるのは、無理もない。
一方で、一帯一路を進めるために中国政府が後ろ盾になった企業が世界中で港湾の買収や出資を繰り広げていることに、国際社会は安全保障上の懸念を強めている。一帯一路には、表看板の「巨大経済構想」の裏側に、軍事的な意図も隠されているとの見方が消えないからだ。