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試される菅外交 政権基盤の強化が不可欠

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編集委員 尾山宏

 とかく「外交は不得手」と評される菅首相が、英国コーンウォールで開かれた先進7か国首脳会議(G7サミット)に出席した。首脳同士やエリザベス英女王との記念撮影の映像などから、首相は孤立していたのではないか、といった見方が出ているが、実際はどうだったのだろう。

初のG7サミット…無難にこなすも、ぎこちなさ目立つ

記念撮影を終え、笑顔を見せる菅首相(中央、左から2人目はバイデン米大統領、右から2人目はジョンソン英首相)(11日、英コーンウォールで)=代表撮影
記念撮影を終え、笑顔を見せる菅首相(中央、左から2人目はバイデン米大統領、右から2人目はジョンソン英首相)(11日、英コーンウォールで)=代表撮影

 討議の成果をまとめた首脳宣言では、強引な海洋進出など中国による国際秩序への挑戦に対し、強く自制を促した。開幕まであと1か月余となった東京五輪・パラリンピックの開催には、支持を取り付けた。日本の主張は十分に反映されており、首相は初の首脳外交のひのき舞台を無難にこなしたと言える。

 サミット取材に同行した記者によると、現地で首相はぎこちなさが目立ったのも事実だそうだ。各国首脳らと談笑する場面は少なく、緊張した表情でいることが多かったという。エリザベス女王を囲んで集合写真を撮影した際には、各国首脳が女王に歩み寄って歓談する中、その輪に加わることができなかった。

 首相は首脳会議終了後、記者団に「私、初めてで、人付き合いというのも下手な方だが、みんな目的は一緒だから、力まず言いたいことを言えたと思っている」と語った。「人付き合いは下手」と、率直な思いを吐露したことには驚く。

 首相が外交手腕を発揮していくには、時間がかかるかもしれない。

外交手腕の発揮には時間がかかる

 国際社会で日本の立場を高めたと言われる安倍前首相が、G7で発言力を持つようになったのは、政権に返り咲いてから2回目の出席となる2014年のベルギー・ブリュッセルでのサミットがきっかけだった、と外務省幹部は分析する。

 この時の会議では、ロシアによるウクライナ・クリミア半島編入に対し、当時のオバマ米大統領が、対ロシア制裁を具体的な項目を挙げて賛同するよう呼びかけたという。だが、ロシアから石油の供給を受けていた欧州側が反対し、折れないオバマ氏と激しいやり取りになった。険悪なムードが広がる中、安倍氏が「G7が決裂したらおしまいだ。相違点を議論するのはやめよう。首脳宣言は、ロシアを非難する内容にとどめ、制裁の議論は事務レベルに任せてはどうか」と発言した。

 これが落としどころとなり、首脳宣言は制裁に触れず、「ウクライナの主権と領土の継続的な侵害を一致団結して非難する」という文言で決着した。

 議論がまとまると、会議場の円卓で安倍氏の隣に座っていた当時のレンツィ・イタリア首相は、安倍氏にハイタッチをしてきたという。オバマ氏も会議終了後、安倍氏をハグしたそうだ。日本が米欧の橋渡し役を務めるようになったというのは、事実なのだろう。

 安倍氏が「自由で開かれたインド太平洋」の構想を提唱したのは、その2年後のことだ。国政選挙で勝利を重ねて長期政権を築くうちに、構想は主な民主主義国の共通認識となった。

 中国と経済面で結びつきを強めたドイツのメルケル首相は、かつて日本を素通りし、訪中を繰り返した経緯がある。2015年に来日した際、安倍氏がその理由を聞くと、「日本の首相は毎年替わっていたから、会っても意味がない」と言われたそうだ。

 来年のサミットはドイツで、再来年は日本で開かれる方向で調整が進んでいる。菅首相が外交で指導力を発揮するには、まず次期衆院選で政権基盤を固める必要がありそうだ。

プロフィル
尾山 宏( おやま・ひろし
 1966年、東京生まれ。政治部で首相官邸クラブキャップ、筆頭次長などを経て2018年から論説委員。21年5月から編集委員。共著に「時代を動かす政治の言葉」(東信堂)、「小泉革命 自民党は生き残れるか」(中公新書ラクレ)、「安倍晋三 逆転復活の300日」(新潮社)など。

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2133371 0 編集委員の目 2021/06/18 10:00:00 2021/06/18 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210616-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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