心のマスクを外そう…中学生の視点に教えられた

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編集委員 古沢由紀子

コロナ禍での模索、「少年の主張」に

 マスクを着ける生活が続くと、気持ちも内にこもっていくような気がする。初対面の人の顔がなかなか覚えられず、言葉がうまく伝わらないこともある。そんな日常を変えたいと一歩踏み出した中学生の取り組みに、はっとさせられた。11月に開かれた「第43回少年の主張全国大会」(独立行政法人・国立青少年教育振興機構主催)では、コロナ禍の中で模索し、前向きに挑戦しようとする中学生たちの姿が浮かび上がった。

マスクで「ミスコミュニケーション」に?

マスクで相手の表情が読めず、戸惑う場面は少なくない(東京都内で)
マスクで相手の表情が読めず、戸惑う場面は少なくない(東京都内で)

 実は筆者も、最近仕事で知り合った人と見誤って他の知人に声をかけ、ばつの悪い思いをしたことがある。「年のせいかな? 失礼なことをしてしまった」とぼやいていたら、同僚に「マスクのせいじゃないの」と慰められた。確かに、マスク生活になってから会った人は当然のことながら、顔全体のイメージがわかないので認識しにくいのかもしれない。そうした状況は、学校現場でも同様のようだ。同じ制服、同じ年頃。先生方はご苦労をされているかもしれない。給食は前を向く「黙食」が徹底され、マスクを外した姿で向き合う機会は少ない。

 日頃中学生が抱いている思いや考えを作文に書いて発表する今回の「少年の主張全国大会」で、山梨県代表として出場した北杜市立甲陵中学3年の平澤 朋佳(ほのか) さん(15)が取り上げたのも「マスク社会」への戸惑いだった。校内では「マスク姿の新入生や先輩の顔が分からない」という友人の声を耳にしていた。特に危機感を覚えたのが、マスクによる「ミスコミュニケーション」だったという。平澤さん自身、久しぶりに会った友人の話を心から面白いと思いながら聞いていたのに、「顔が笑っていないよ」と指摘されて戸惑った。他の友人からは「仲間に相談を受けていたら、『いま笑ったでしょう』と誤解されてしまった」という話も聞いた。

 平澤さんは、感染予防に重要な役割を担うマスクが、「他人との境界線や壁のように見えてしまった」と発表で振り返った。

互いの「素顔」を知る試み

互いの「素顔」を知る試みは、学校内に柔らかな雰囲気と一体感を生んだ
互いの「素顔」を知る試みは、学校内に柔らかな雰囲気と一体感を生んだ

 そうしたなか、平澤さんが所属する生徒会は、もっと生徒同士の交流を深められないかと話し合い、生まれたのが「DATA120」と名付けられた活動だった。全校生徒120人のマスクを外した顔写真と名前に、それぞれのプロフィルや趣味などを添えてもらい、校内に掲示する取り組みだ。副会長の平澤さんは全員の写真を撮影する役割を担った。ほかの生徒たちからは「お互いのことがよく分かった」という声が寄せられた。

 「文字通り『素顔』を知ることができ、学校にも柔らかな雰囲気と一体感が生まれたように感じる」と喜ぶ平澤さんはさらに問いかける。「私たちは『心のマスク』を外して、よりはっきりした伝え方や、マスクによって見えなくなった相手の感情や気持ちを知ろうとする心など、コミュニケーションの質を高める工夫が必要となっているのではないでしょうか」――。

 正直に言って、大人である筆者は、そこまで深く考えていなかった。マスクをしていると声が聞こえづらい、表情も読めない、という不便さは感じていたが、仕方のないことだとあきらめていた。それだけに、中学生の的確で新鮮な視点と 真摯(しんし) で力強い訴えに、我が身を振り返るとともに、感銘を受けた。生徒会の取り組みも立派だが、そこから深く思考し、未来につなげていこうとする平澤さんたちの意欲が素晴らしい。「『心のマスク』をはずして」と題した発表は、文部科学大臣賞に輝いた。

全国で約40万人が参加

「第43回少年の主張全国大会」のチラシ
「第43回少年の主張全国大会」のチラシ

 「少年の主張」では例年、各都道府県で代表選考会を開き、地区ブロックごとに選ばれた代表が東京の会場に集まって熱弁を振るっていた。

 今年は昨年に続き、感染拡大に配慮して全国大会の会場での開催は見送られ、各都道府県代表の作文や動画を審査する方式がとられた。都道府県ごとの代表選考会は、観客を入れない方式や作文のみ、動画による審査など様々で、全国で昨年を大幅に上回る約3800校から約40万人の作文の応募があった。甲陵中で国語を担当する清水増美教諭は、「作文を書くだけでなく発表することで、生徒は伝える力を磨くことができる。社会に対する関心も高まるので、毎年参加している」と話していた。(国立青少年教育振興機構の 特設サイト で30日まで、全国大会出場者の動画などが公開され、12月上旬には大会の報告映像が改めて公開される予定だ)

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