東京大会のレガシーと北京大会の意義

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編集委員・結城和香子

 2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会が、このほど大会のレガシーについての総括を報告書にまとめた。コロナ禍の直撃で無観客となり、選手や海外関係者との交流も限定された東京大会。オミクロン株急拡大の中で開幕する北京冬季五輪を前に、「コロナ時代」の大会開催の意義は何かを改めて考えたい。

多岐にわたっていた東京大会でのレガシー創出の試み

「TOKYO2020 アクション&レガシーレポート」より
「TOKYO2020 アクション&レガシーレポート」より

 北京冬季五輪の開幕が2月4日に迫る。聖火リレーは開会式直前の3日間のセレモニーに限定され、国内在住者を予定していた観戦チケットの販売も見合わせるなど、厳戒態勢を敷くのは東京大会と変わらない。異なるのは、世論の批判の大合唱が聞こえてこないことぐらいだ。本来の姿から大きく変容してしまうオリンピックは、社会に何をもたらし得るのか。

 組織委員会はこのほど、東京大会のレガシーについての報告書「TOKYO2020 アクション&レガシーレポート」をまとめた。教育、「違い」を前提にした社会づくり、ホストタウンなど国際交流、日本の文化や技術の発信、被災地からの発信――。一読して分かるのは、大会を触媒にしたレガシー創出の試みが、いかに多岐にわたっていたかということだ。

 2020年3月にコロナ禍で延期が決まってからは、選手や関係者との交流がしぼみ、イベントが中止され、 ()(りょう)(てん)(せい) を欠く、と呼びたいような制約を受けた活動は少なくない。それでも、これまでに築いた交流があり、コロナ禍の下ではオンラインなどで工夫をして絆をつなぎ、大会後の継続に期待をつなぐ動きがあった。なるほど、それは「無」ではないのだ。

 また、大会開催が決まった時点からを振り返れば、様々な社会の変化が培われてきたことも確かだ。スポーツ庁創設と、オリンピック・パラリンピックの一体的な強化が進んだこと。公共交通や競技会場などでのバリアフリーの概念が進んだこと。特にパラリンピック開催を機とする教育の変化、共生社会を目指す意識変化は、確実にレガシーとして残ったと思う。

人々の参画…マスコット選考・メダル用貴金属の寄付・全国からの木材

大会マスコットの候補3作品の中から、お気に入りのマスコットを投票で選ぶ小学生たち(2017年12月、福島市の小学校で)
大会マスコットの候補3作品の中から、お気に入りのマスコットを投票で選ぶ小学生たち(2017年12月、福島市の小学校で)
郵便局に設置された携帯電話の回収ボックス。東京五輪・パラリンピックのメダルには、携帯電話の部品の金属が使われた(2018年3月、東京都千代田区で)
郵便局に設置された携帯電話の回収ボックス。東京五輪・パラリンピックのメダルには、携帯電話の部品の金属が使われた(2018年3月、東京都千代田区で)

 レガシー分野で組織委員会として行ってきた努力の中核は、東京五輪・パラリンピックに向けた機運向上にもつながる、「人々の参画」を促すことだった。例えばマスコットの選考を、全国20万学級を超える小学生の子どもたちに託したこと。例えばメダルを作る貴金属を、使用済みの携帯等の「都市鉱山」寄付を通じて国民から募ったこと(そういえば、当方も出した)。選手村のビレッジプラザに行くと、福島など被災地をはじめ、全国から寄せられた木材が、地名の「焼き印」付きで使われていた。大会後には各地域に戻され、再利用されるという。

 参画を促す仕組みとして、組織委員会はオリンピック・パラリンピックに関わる民間の活動やイベントに、「東京2020 参画プログラム」の認証も与えてきた。国や東京都が後押しするホストタウンや教育文化関連の試みも含めれば、認証を受けた活動は、全国で16万件に上ったという。東京大会と人々をつなぐ試みの数だ。

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