学生のためになる「よいオンライン授業」とは…コロナ後の大学の授業はどう変わる?

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

編集委員 古沢由紀子

 学生は対面授業の再開を切実に求めている……。新型コロナウイルスの感染が拡大した当初は、「キャンパスに行けない問題」が盛んにクローズアップされていた。それが最近は、アンケート結果などから「学生もオンライン授業を望んでいる」と言われ、コロナ収束後の平時も遠隔授業を一定の割合で続ける方針の大学が目立つ。現場の教員からは学生の学習意欲の「二極化」や、登校の手間を惜しむ傾向を危惧する声も上がっている。

対面と併用の「ハイブリッド方式」は「対面授業」扱い

 今回の感染再拡大を受け、再びオンライン授業に戻した大学もあるものの、コロナ後の授業に関する検討は、着実に進んでいる。

上智大学の全て英語による授業で、画面の向こうの学生に声をかける丸山英樹教授。ハイブリッド型の中でも、教室で行う授業をリアルタイムで配信する「ハイフレックス」型だ
上智大学の全て英語による授業で、画面の向こうの学生に声をかける丸山英樹教授。ハイブリッド型の中でも、教室で行う授業をリアルタイムで配信する「ハイフレックス」型だ

 一口にオンライン授業といっても、その方式は様々だ。たとえば、上智大学で筆者が昨年末に見学した学科横断型のSDGsなどをテーマにした英語による授業。基本的に対面で行いながら、海外で入国を待つ外国人留学生らにオンラインで議論を促し、彼らがまとめた意見を教室にいる学生のグループと同様に発表させていた。

 担当の丸山英樹教授は常にマイクを使い、時折、画面の向こうの学生の様子を確認することを欠かさない。「教員の負担は大きいけれど、オンラインでも対面でも学生同士が意見を交換し、質問もしやすいよう配慮している」と丸山教授。同じ内容を対面でもオンラインでも受講できる授業は、一般に「ハイブリッド型」と呼ばれる。同時に併用する方式のほかに、対面の授業とオンラインのみの授業を隔週で交互に行う方式などもある。

 国際化が進む中、情報技術を有効に使う授業の推進に、異論を挟む余地はないだろう。政府は、大学の卒業に必要な124単位のうち60単位までを上限とする遠隔授業の規制を特例的に緩和する方向で検討中だ。コロナ禍で現在は一時的に上限が撤廃されているが、日本私立大学連盟は恒常的な規制の撤廃を要望している。

 しかし、実はオンラインを併用する授業は、現行の大学教育の枠組みでも相当程度可能になっている。ハイブリッド授業で対面を基本としていたり、授業の回数の半分以上を対面で行っていたりすれば、「対面授業」としてカウントされ、上限規制の対象にならないためだ。

 昨年10月時点での今年度後期の授業方針に関する文部科学省の調査では、国公私立大の65%が「全面対面」か「8割以上の授業で対面」、18%が「7割」、14%が「半数」で対面授業を行っていると回答していた。この「対面」にハイブリッド授業を含めた大学は多いとみられる。

「成績に関係のある部分以外は早送り」…学生が二極化しやすい「オンデマンド型」

 コロナ禍を受けて多くの大学で一気に増えたのが、動画を配信するオンデマンド型の授業だ。大教室が「密」になるのを避けるため、「受講者200人以上の授業は導入の対象」といった基準を設けている大学もある。感染が落ち着いた後も、こうした全面的なオンデマンド型授業を一定程度残していこうという大規模大学が目立つ。

 オンデマンド方式は、時間、場所に縛られない利便性があり、大教室の授業よりも学習効果が得られやすい、という指摘もある。その一方で、学生の意欲や学力が「二極化」しがちな問題もはらんでいる。何度も繰り返して動画を視聴する熱心な学生がいる一方で、「早送りは当たり前」という声も少なくないからだ。

崇城大学(熊本市)の大嶋康裕准教授は例年、学生に黒板の前で問題を解かせる演習を行っている。互いの解答の過程を見ることで「学び合い」になっていたが、コロナ下のオンライン授業ではできなかった(大嶋准教授提供)
崇城大学(熊本市)の大嶋康裕准教授は例年、学生に黒板の前で問題を解かせる演習を行っている。互いの解答の過程を見ることで「学び合い」になっていたが、コロナ下のオンライン授業ではできなかった(大嶋准教授提供)

 「授業の流れを解説した部分を聞いておらず、成績に関する課題しかこなさない学生が半数近くに上った」。昨年秋に開かれた「初年次教育学会」の大会で、熊本市の崇城大学で工学部の1、2年生などに数学を教える大嶋康裕准教授は分析結果を発表した。感染防止のため、昨年度は全学的にオンデマンド方式の授業が導入されており、各科目で課題を出す量が増えた。学生からは「課題に追われているので、成績に影響する授業の視聴を優先せざるを得ない」との声が聞かれたという。

 学生のアンケートで最も支持を集めるほどオンライン授業の評判がよかった大嶋准教授だが、「対面授業のような『学び合い』がオンラインでは難しかった」と振り返る。例年の授業では、学生たちが黒板の前に出て、問題の解答過程を書き込む演習を行っており、互いの解答に刺激を受ける効果があった。オンデマンド授業では過去の学生による板書の写真を配信したが、見ていない学生も多かった。学習が深められなかったためか、試験の答案には、一部の学生は例年に比べて理解の定着が不足している傾向がみられたという。

 初年次教育学会には、大学の新入生の教育や、高校と大学の円滑な接続に力を入れている教職員らが参加する。大会では、ほかの大学の教員からも「理解不足の学生が目立つ」といった声が上がっていた。

1

2

スクラップは会員限定です

使い方
2751003 0 編集委員の目 2022/02/11 10:00:00 2022/02/21 16:03:43 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/02/20220209-OYT8I50026-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)