「政治家は運が大半」、占いと政治家の心理

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編集委員 吉田清久

 「挙兵は17日――」

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で引きつけられたのは、平家打倒の挙兵日を源頼朝が占い( 卜筮(ぼくぜい) )で決めるシーンだ。

 歴史の授業で習わなかった話である。脚本を担当する三谷幸喜さんの創作ではない。その史実は吾妻鏡(鎌倉時代の歴史書)に記されている。

宏池会に出入りした「仙人」、佐藤栄作氏は黙々とトランプ占い

木村貢氏
木村貢氏

 永田町でも「占い」や「お告げ」「予言」の話が、漏れ聞こえてくることがある。

 自民党派閥・宏池会(岸田派)の事務局長を長く務めた木村貢氏(2017年死去)は、池田勇人氏、大平正芳氏ら4人の歴代首相に仕えた。戦後政治の裏側を知る人物だった。

 木村氏の著書「総理の品格」(徳間書店)によると、同派にはかつて「宏池会の仙人」と呼ばれる人が出入りした。

 池田勇人氏が自民党総裁選(1960年)に出馬した際、仙人はこう予言した。

 「この選挙では投票が2回ある。1回目の投票では決まらず、決選投票になり、そこで池田さんに決まる。得票差は110票前後になると思う」

 果たして結果は的中し、池田氏は自民党総裁、首相の座に就いた。

自民党総裁に選出され、祝賀会で祝福される池田勇人氏(中央)、左隣は岸信介・前総裁(1960年)
自民党総裁に選出され、祝賀会で祝福される池田勇人氏(中央)、左隣は岸信介・前総裁(1960年)
池田勇人首相(右)と大平正芳外相(1963年)
池田勇人首相(右)と大平正芳外相(1963年)

 後に首相となる大平正芳氏についても仙人は「あの大平というのは間違いなく総理になるよ」と、大平氏が若い頃から語っていた。

 政治家自身も占うことがあったらしい。

 佐藤栄作氏は首相公邸で、風呂上がりにタオルを背中にかけて黙々とトランプ占いをしていたという。

 こんな逸話もある。

 党内第4派閥の 領袖(りょうしゅう) に過ぎなかった中曽根康弘氏がある日、旧内務省の先輩である後藤田正晴氏にこう切り出した。

 「私は昔から 八卦(はっけ) を見るんですよ」「近く政局に大動乱がある、その時に後藤田さん、官邸の中に一緒に入って助けてくれんか」

 その「予言」から間を置かず、鈴木善幸首相が突然退陣を表明。中曽根内閣が誕生し(1982年)、中曽根首相は官房長官に後藤田氏を起用した。

首相就任後、初の記者会見に臨む中曽根康弘首相(左)と後藤田正晴官房長官(1982年)
首相就任後、初の記者会見に臨む中曽根康弘首相(左)と後藤田正晴官房長官(1982年)

 実際は鈴木首相が中曽根氏に「自分は次の自民党総裁選に出ない。あとは君に頼むよ」と内々に伝えていた。ただ、中曽根氏が「八卦」という「小道具」を持ち出したことが興味深い。それだけ、八卦を見る政治家が少なくなかったということか。

 自民党だけではない。

 2008年6月、都内のホテルの一室。旧民主党の中堅・若手議員が、来日中のブラジル人予知能力者、ジュセリーノ・ノーブレガ・ダ・ルース氏を囲んだ。同党が政権交代をうかがっていたころの話だ。

 同席者によると、議員の一人が「日本で政権交代はありますか」と尋ねると、ジュセリーノ氏は、「2、3年後にあるだろう」と明言した。

衆院本会議で首相指名を受け、一礼する鳩山由紀夫氏(2009年)
衆院本会議で首相指名を受け、一礼する鳩山由紀夫氏(2009年)

 その時間、私は同じホテルで同党の幹部政治家と会合していた。政治家がポツリと漏らした。

 「今、うちの議員がこのホテルで、有名なブラジルの予言者に面会している。私は信じていませんがね」 

 その政治家は1年3か月後、民主党政権で首相に就いた。鳩山由紀夫氏である。

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2940786 0 編集委員の目 2022/04/22 10:00:00 2022/04/22 14:31:45 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/04/20220420-OYT8I50002-T.jpg?type=thumbnail

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