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日本の電力業界は自由化が進んだことで利用者の選択肢は広がったが、安定供給の面で様々な課題が生じている。経済産業省は、電力需給が
地震で発電所が停止…「電力使用率100%超」に

3月の逼迫に際して、政府は、東京電力管内と東北電力管内の東北6県と新潟県に「電力需給逼迫警報」を発令した。確保できる供給力の見込みに対する電気使用量の割合である電力使用率が100%を超える事態となったためだ。
直接の原因は、3月16日の福島県沖の地震の影響で、東北、東京電力管内に電力を供給する火力発電所が停止し、さらに別の東電管内の火力発電所でも不具合が起きたことだ。それに加えて、予期せぬ事態がいくつか重なったことが需給を悪化させた。まず、3月22日の気温が急速に低下した。電力会社は天候を予測したうえで、当日の電力の需給計画を決定する。3月18日時点での22日の平均気温予想は7.78度だったが、前日の予測では3.63度まで低下、さらに当日朝の想定では2.54度まで下がった。
東電によると、気温が1度下がると、電力需要は原発1基分の100万キロ・ワット増える。当日は地域間で電力を融通し合う送電線の容量に余裕がなく、18日時点の予想から当日朝までに計5度低下したため、需要が跳ね上がり、必要な電力を集めることができなかった。また、当日は、天候が悪く、昼間の太陽光による発電量は快晴時に比べて大幅に少なかった。通常、東電管内が快晴であれば、太陽光は1億キロ・ワット時規模を発電するが、22日の発電量は約1200万キロ・ワット時に過ぎず、供給力不足を補うことはできなかった。
供給不安、来年以降も続くかも
通常、冬場の電力不足に備えて、大手電力は発電所の定期点検の時期をずらすなどして、供給力を確保する。だが、3月下旬で、日中の気温が5度以下に下がったのは過去10年間で3日しかなかったことも事前の需要予測がずれた要因と言える。

こうした供給不安は来年以降も続くかもしれない。全国の電力需給を調整する役割を担う電力広域的運営推進機関は、23年1、2月には、東京から九州まで冬場の厳寒期に安定供給に必要な電力量を確保できなくなる恐れがあると予測している。今年4月時点の予想ではあるが、来年1月に東電管内で254万キロ・ワット、中部、関西電力管内でも20万キロ・ワット程度の供給力が不足する可能性がある。3月の地震で大型の火力発電所が停止した影響が残っており、今後、供給力を確保するための施策を講じるので、不足分は解消に向かうことが期待される。だが、構造的な要因もある。