歴史から現代を読み解く~「今につながる日本史」筆者インタビュー

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 読売新聞オンラインで好評連載中の「今につながる日本史」。歴史を通して今を知り、時事問題を読み解くコラムです。筆者の丸山淳一編集委員が、執筆の裏話や、歴史を学ぶ意義を語ります。

歴史を学べば、今に応用できる

 人間の脳の作りは昔から変わっていないから、昔のことを学べば、今に応用できると考えています。歴史上で何が起きて、当事者がその時どう考え、どう対応したのかを知れば、今何をすべきかを読み解くヒントになる。そのヒントが何千年もの間、蓄積されているのであれば、活用しない手はありません。

 昨年9月まで、深層NEWSという番組のキャスターをしていました。番組では色々な話題についてコメントを求められます。僕は経済部出身ですが、例えばコロナウイルスや桜を見る会、日韓関係といった、経済のこととは関連の薄い内容であることについてコメントする機会も多くありました。その時一番いいのは「昔、どうだったんだろう」という切り口です。

 例えば、今コロナウイルスが世界的に流行しています。流行し始めたのが1月下旬ごろ、春節に当たりますよね。だからSNSを見ていると、「中国人が春節に休んで、海外旅行に行くから世界中に広まったんだ。どうして春節なんかに休むんだ」「日本のように、1月1日に休めばよいのに」などのコメントがあります。しかし歴史を見ると、アジアで旧正月に休まないのは日本くらいです。新暦に正月を無理やり合わせているのは、アジアでは珍しいです。では、なぜアジアでは旧正月に休むのか……、というのは、またの機会にしましょうか。

 要するに、ある物事について、「歴史」という軸を知っておくと、物事に奥行きが生まれるのかなと考えています。歴史は大切な軸だと思いますが、現代の人は歴史を軽視しているように見えます。「昔の話をしても仕方がない」「今と昔は、状況や考え方が違う」「今は民主主義の時代。昔のような封建主義や、将軍様や貴族が偉いという時代ではない」という意見がありますが、最初に言った通り、人間の脳のつくりは変わっていないんですよ。だから歴史から学ぶのです。

 この考え方は以前、立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さんに取材した時に教わりました。非常に感銘を受けましたよ。

ウナギで知った大久保今助

 これまで、さまざまなテーマで記事を書きました。最近の原稿では、統合型リゾート(IR)と大久保今助(いますけ)を結び付けて紹介しました。IRと聞いて「大久保今助」とひらめいたのは、以前、深層NEWSで「ウナギが絶滅の危機にある」というテーマを取り扱った時に、うな丼を発明した人だと知っていたからです。

満員の観客でにぎわう中村座(歌川豊国『三芝居之図』国立国会図書館所蔵)
満員の観客でにぎわう中村座(歌川豊国『三芝居之図』国立国会図書館所蔵)

 今助は、今でいうIR投資で大(もう)けし、政治とも癒着しました。カジノやショッピングモールなどを次々に手がけて成り上がり、「今太閤」と呼ばれましたが、その中で「人が集まるところにはカネが落ちる」と考え、「中村座」という劇場を運営しました。彼は劇場の経営に忙しくなり、中村座から離れられなくなったため、大好物のウナギを食べる時間すら取れなくなったんです。その時「ウナギを飯に載せて持ってこい」と命じて作らせたのが、うな丼の始まりだそうです。

 そういうことも知っていたから、「うな丼を発明したのは大久保今助という人で、中村座の金主で、IR投資で儲けた今太閤か」という知識が頭に残っていたんですよ。で、IRの一連の報道を見て、「ああ!」とひらめきました。大久保今助っていたなと。で、今度はIRという軸から、大久保今助という人を調べたところ、エピソードが出る出る。宝くじへの投資、カジノ、ショッピングモール……。詳しくは、ぜひこちらの記事をお読みください。

インターネットで史料が揃う

 書くテーマを決めたら、まずはインターネットで調べます。「この資料に載っている」「この本が詳しい」などのヒントがたくさん見つかりますので、そこから一次史料を探していきます。例えば論文であれば、「CiNii」というサイトで探せば、その論文が掲載されている書籍がどこにあるかが見つかりますから、そこに問い合わせてコピーを送ってもらうわけです。一番簡単なのが国立国会図書館のデジタルコレクション。ほとんどの史料がありますし、図版もデジタル化されているので、記事にも使っています。論文に載っている参考文献もインターネットで買っています。中古であれば1円のものもあるので、どんどん買っていますよ。あとは図書館に行ったり、史料がある寺や博物館に問い合わせたりして、記事に使います。便利な時代になりました。

 ゆかりのある史跡や城跡にも行きたいのですが、テーマを決めてから訪れるのは難しいです。なので、「できるだけ事前にたくさん行っておこう」と心掛けています。先日、仕事で大阪に行った時は、彦根城、近江神宮、安土城などを、1泊2日で回りました。坂本城や長浜城にも足を運んで、バシバシ写真を撮って。大忙しでした。弾丸ツアーですね。

 博物館も欠かせません。博物館が出版している本や図録には、意外なエピソードや図表が載っていることもあります。メジャーな歴史書には載っていない資料がたくさんありますし、学芸員の方からも、色々なことを教わっています。

まずは大河ドラマから

外出しようとする信長を問い詰める濃姫(『絵本太閤記』国立国会図書館蔵)

 日本史の入門で、一番手っ取り早いのは大河ドラマでしょうか。ただ、全てを鵜呑(うの)みにせず、「ここは史実、ここは創作」と分かるようになれば、より楽しめます。「これ本当?」という目で見て、史実を調べてみると面白いです。現在放送されている「麒麟(きりん)がくる」の第2話では「加納口の戦い」が取り上げられましたが、合戦が起こった時期について、天文13年説と16年説があります。大河では16年説を取っていますが、なぜだと思いますか?

 僕の勝手な想像ですが、この時の帰蝶(きちょう)(濃姫)がまだ若すぎて、天文13年説であれば、子役を立てなければいけなくなるから……、かなと。沢尻エリカならともかく、川口春奈でも、当時の若すぎる帰蝶を演じるには違和感があったから、「予算的に厳しいから、16年にして子役を立てずに経費を削減しよう!」と、制作サイトが思ったのかなと推測してみたんです。実際はわかりませんが、「加納口の戦いには天文13年説と16年説がある」と知らなければ、「天文16年にあったんだなあ」と素通りしますよね。

 気になったら調べてみましょう。調べるといっても、Googleで検索するだけで十分です。今は興味があったら、すぐに調べられます。

歴史には色々な見方があっていい

 「ゴーン被告が海外に逃げた話を、義経と結びつけるのはいかがだろう」など、私とは異なる意見を持つ方はいらっしゃると思いますが、それをきっかけに時事問題に関心を持ち、自分の意見を持っていただければ、書き手としてとてもうれしいです。時事問題の中には、複雑でとっつきにくいものもありますが、歴史と結び付ければ、少しは考えやすくなるかと思いますから。

 4月には、これまでの連載をまとめた本が出版される予定です。YOMIURI ONLINE(読売新聞オンラインの前身)で連載したコラムに加筆修正をしたものです。そちらも合わせて、歴史に興味を持っていただければうれしいです。

 関連リンク
 ・「今につながる日本史」記事一覧
 ・「賢者は歴史に学ぶ」その理由・前編(出口治明さんへのインタビュー)

無断転載禁止
1053546 0 今につながる日本史 2020/02/14 19:00:00 2020/02/17 09:39:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200214-OYT8I50044-T.jpg?type=thumbnail

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