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迷走続きの東京オリンピック、見習いたい「知恵伊豆」の危機管理能力

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調査研究本部 丸山淳一

5月に無観客で行われた東京五輪陸上競技のテスト大会。本番も同じ光景になる
5月に無観客で行われた東京五輪陸上競技のテスト大会。本番も同じ光景になる

 新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、東京五輪はほとんどの競技が無観客で行われることになった。東京には4回目の緊急事態宣言が出されたが、その前から感染症対策の専門家や世論調査の多数意見は「開催するなら無観客」だった。土壇場の方針転換はあちこちで混乱を招いている。安全安心な五輪を実現するなら、もっと早く決断すべきだった。

 行動経済学では、ある事業を中止・縮小しても戻って来ない資金や労力のことを「埋没費用」といい、埋没費用を考えるあまり、誤った判断を下すことを「コンコルド錯誤」と呼ぶ。採算が取れないことが明らかになっても開発を止める決断ができず、商業的に失敗したフランスの超音速旅客機が名前の由来だ。売却済みのチケット収入を惜しんだのか、観客を入れて「見栄え」を整えたかったのかはわからないが、感染が拡大すれば、コロナ対策の支出はさらに膨らむ。コンコルド錯誤に陥らないためには、これまでの経緯にこだわらず、迅速果敢に状況の変化に対応することが肝要だ。

 同様の失敗はいつの時代にもあったが、一方で為政者がコンコルド錯誤に陥らず、危機管理能力を存分に発揮した例もある。その一例として、読売新聞夕刊に連載中の門井慶喜さんの小説『知恵出づ 江戸再建の人』が描く明暦3年(1657年)の江戸の大火を取り上げたい。

家光と家綱を支え、内政外交に幕閣一の切れ者ぶり発揮

何事か思案する松平信綱(『知恵出づ 江戸再建の人』挿絵から 絵・おおさわゆう)
何事か思案する松平信綱(『知恵出づ 江戸再建の人』挿絵から 絵・おおさわゆう)

 『知恵出づ 江戸再建の人』の主人公は、江戸幕府の老中として3代将軍・徳川家光(1604~51)と4代将軍・徳川家綱(1641~80)を支え、「知恵伊豆」と呼ばれた幕閣一の切れ者、松平 伊豆守(いずのかみ) 信綱(1596~1662)だ。幕府軍の総大将として島原の乱を鎮め、 牢人(ろうにん)由比正雪(ゆいしょうせつ) (1605~51)の乱(慶安事件)を鎮圧し、玉川上水の開削を手がけ、参勤交代や軍役を制度化し、武家諸法度を改定した。以前にこのコラムでも取り上げた朝鮮との外交問題「 柳川一件 」の解決にも関わっている。当時の幕政は老中による合議制で運営されていたから、すべてが信綱ひとりの功績ではないが、まさに 八面六臂(はちめんろっぴ) の大活躍だ。

徳川家光(堺市博物館蔵、部分)
徳川家光(堺市博物館蔵、部分)
徳川家綱(『新撰徳川十五代記』国立国会図書館蔵)
徳川家綱(『新撰徳川十五代記』国立国会図書館蔵)

 家光は「いにしへよりあまたの将軍ありといへども、我ほど果報の者はあるまじ。右の手は 讃岐(さぬき) (酒井忠勝)、左の手は伊豆(信綱)」と、酒井忠勝(1587~1662)とともに信綱の功績を褒め上げている(『空印言行録』)。家光に褒められた忠勝もまた、「信綱とは決して知恵比べをしてはいけない。あれは人間と申すものではない」と言っていたというから、相当頭が切れる人物だったことは間違いない。家光は自分の死後も信綱の殉死を禁じて家綱の補佐を命じ、家綱は信綱の隠居を許さなかった。明暦の大火は、還暦を過ぎた信綱が、さすがにそろそろ隠居しようか、という時に起きた。

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2203566 0 今につながる日本史 2021/07/14 10:00:00 2021/07/14 10:23:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210712-OYT8I50090-T.jpg?type=thumbnail

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