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パラリンピックの礎を築いた一人の日本人医師の情熱

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調査研究本部 丸山淳一

 160を超える国と地域から4400人が参加して、東京パラリンピックが開幕した。コロナ禍が広がる中で、オリンピックに続いて無観客開催となり、大雨の影響も加わって事前の行事も縮小されたが、8月20日には東京で集火式が行われた。パラリンピックの聖火は「みんなのものであり、パラリンピックを応援する全ての人の熱意が集まることで聖火を生み出す」というIPC(国際パラリンピック委員会)の理念に基づいて、聖火は47都道府県で起こした炎と、パラリンピック発祥の地であるイギリスのストーク・マンデビルで起こした炎を合わせて東京で生まれた。

2021年8月24日のパラリンピック東京大会開会式で、旗手の岩渕幸洋、谷真海を先頭に入場する日本選手団
2021年8月24日のパラリンピック東京大会開会式で、旗手の岩渕幸洋、谷真海を先頭に入場する日本選手団

1964年11月8日のパラリンピック東京大会で日の丸を先頭に入場する日本選手団
1964年11月8日のパラリンピック東京大会で日の丸を先頭に入場する日本選手団

 最近は「オリ・パラ」という言葉が定着したが、オリンピックとパラリンピックは別々に生まれ、発展してきた。IPCが発足したのは平成元年(1989年)で、IOC(国際オリンピック委員会)とIPCが「パラリンピックはオリンピック終了後に開催国が引き続いて開催する」ことで合意したのは2000年になってからだ。8日の東京オリンピックの閉会式では、聖火が消えた後にパラリンピックの予告映像がビジョンに流れたが、これはオリンピックの閉会式で史上初めてのことだった。

オリ・パラの源流をつくった日本

 実は日本は、現在の「オリ・パラ」の源流づくりに大きな役割を果たしている。昭和39年(1964年)の東京オリンピックの後に開かれた第2回大会は、「パラリンピック」の名を冠した初めての国際スポーツ大会だった。まだまだ障害者スポーツの先進国とはいえなかった日本で、IPC発足の25年も前にパラリンピックが開催された裏には、医師、 中村裕(なかむらゆたか) (1927~84)の献身的な努力があった。

 大分県別府市の温泉町の医師の家に生まれた中村は、子どものころから機械いじりが好きで、戦時中は自ら動員を志願して海軍の飛行機修理工場で働いたこともある。整形外科の医師になったのも、金づちをつかったり、骨をねじでつないだりするのが性に合うと思ったからだという。国立別府病院の整形外科科長だった中村の人生を変えたのは、昭和35年(1960年)にリハビリテーション研究のため欧米に派遣され、イギリスのストーク・マンデビル病院で出会ったルードビッヒ・グットマン(1899~1980)だった。

始まりは研修先でのひと言

 ストーク・マンデビル病院に 脊髄(せきずい) 損傷科が設立されたのは第2次世界大戦中の1944年2月。ノルマンディー上陸作戦を前に、兵士に多くの負傷者が出ることを想定して開設された。ユダヤ人医師のグットマンは長年、ドイツで負傷兵の治療にあたってきたが、39年にナチスの迫害から逃れるためにイギリスに亡命し、治療の腕を買われて脊髄損傷科の責任者を務めていた。

ストーク・マンデビル病院で研修する中村(右)とグットマン(1960年。社会福祉法人「太陽の家」提供)
ストーク・マンデビル病院で研修する中村(右)とグットマン(1960年。社会福祉法人「太陽の家」提供)

 グットマンは負傷兵などに独自の治療を施して、脊髄損傷患者の85%を半年で社会復帰させるという驚くべき成果をあげていた。何か秘術があるに違いない。病院での研修を申し出て秘術を探ろうとした中村に対し、グットマンは最初、冷たい言葉を返している。

 「君は日本人か。これまで日本から幾人も、私のやり方を学びたいと言ってやってきた。帰る時も、ぜひ実行すると言って去ったが、一人としてその言葉を守っていない」

 この言葉が、「ならば自分がやってやろう」と中村の心に火をつけたのではないか。中村は他の医者が嫌がる当直勤務をすべて引き受け、立ち入り禁止の倉庫に入り込み、不眠不休で2000人の患者のカルテやレントゲン写真を覚え込もうとしたという。

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2313154 0 今につながる日本史 2021/08/25 15:00:00 2021/08/27 16:25:38 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210825-OYT8I50000-T.jpg?type=thumbnail

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